国語(現代文)ができない理由はセンスがないから?センスについて考えてみた
あなたは、国語の現代文についてどう思っていますか?
できる、できないは何によって決まると思いますか?
このように質問をすると、だいたい次の答えが、かえってきます。
・現代文ができるかできないかはセンス(才能)による
・読書をしていない人は現代文ができない
・日本人なんだから雰囲気で何となくできるはず
果たして、どれが正解なのでしょうか?
本日は、医学部受験のプロ(私=例のごとく石戸)が、現代文について、どのように捉えれば現代文の点数が伸びるのかをズバッとお答えします。
注目!全員同じこと考えています!!
「私、現代文のセンスが全くないんです」
「オレ、今まで読書を全然してきていないから現代文は無理っす」
「現代文って日本語だから、まー、なんとかなるっしょ」
このような言葉を現代文ではよく耳にします。
現代文ができるできないは、センスだと思っている人。
現代文ができるできないは、読書量だと思っている人。
現代文は、なんとなくで、できるんじゃないかと思っている人。
この言葉は一見、主張が違うように思いますが、共通点が1つだけあります。それは、何かというと、、、
「現代文の勉強時間」を取っても意味がないと思っている
ということ。
そんな方に、現代文に代わって強く言いたい
現代文を舐めるな!
と(笑)
偉そうに、言っていますが、若かりし石戸少年も、「現代文はセンス」「日本人だったら何となくでいける♪」と思っていました。きっと、私のように、現代文ができるできないは持って生まれたものや読書量で決まると思っている人は多いと思います。
しかし、現実は違います。
国語の現代文といえど、勉強すれば点数が伸びるし、逆に言えば、勉強しなければ点数は伸びません。少なくとも、勉強しないで、センスで現代文を解いている人は点数が安定しません。勉強している人の方が強いのは間違いありません。
実際、私自身、勉強すれば、センター国語で安定して160点(8割)は取れるようになりましたし、塾から医学部に進学した人も国語の点数を勉強して伸ばした人は多々います。
また、岡山大学医学部の中で聞いてみても、元々理系の人が多いので国語が苦手な人は多かったです。したがって、センター試験の国語については、勉強して成績を伸ばした医学部生が圧倒的多数でした。
まずは、現代文は勉強すれば伸びるという考えを持ってください。センスや読書量なんて現代文ができるための必須スキルではありません。今から、身につけていけばいいのです。
センスの呪縛
「現代文ができない理由は、センスがないからだ。」と思う人は本当に多いです。私も、そのように思った一人でした。それは、きっと今まで受けてきた国語(現代文)の授業の影響を強く受けているからだと思います。
だいたい、多くの学校の国語の現代文の授業では、解くためのスキルとして、
「重要なところ」に線をひく
というスキルを与えられます。学校や塾・予備校の授業では、先生がおっしゃった「重要なところ」に線をひいていき、解説をしていくという授業スタイルがメジャーです。
このように、「重要なところ」は教えてくれますが、「重要なところを見つける方法」は教えてくれません。だから、若かりし石戸少年は、
重要なところに線をひけと言われても、どこが重要かわかんねぇよ
ってか、重要なところがわかるんだったら、線引く必要ねぇじゃん!
と思っていました。
重要なところがどこかの判断は、個人個人によって異なります。このことから国語の現代文のできるできないは「センス」によるんだ。と思ってしまう人が多いのではないか?と考えています。
現代文のセンスは3つに分かれる
そして、「センス」だと思っていたら、もう伸ばすことはできません。
例えば、料理の修行をしているときに、「石戸くん、来週までに料理のセンスを磨いておいて」と言われたら、為す術(すべ)がありません。せいぜい親方に怒られないために、扇子を磨くこと程度でしょう・・・。すいません、調子に乗りました。
話を戻しますが、このようにセンスというのは、かなり曖昧な言葉です。曖昧だからこそ対策して伸ばすことができないのです。しかし、「現代文のセンス」が何を表すのかを言語化できれば、それぞれについて時間をとって対策すればいいわけなので点数が上がっていきます。
あなたはどう思いますか?「現代文のセンス」とは何を表すと思いますか?
私は、「現代文のセンス」というのは、次の3つの要素からなると考えています。
(要素1)言葉の感度
(要素2)論理的な思考力
(要素3)知識の豊富さ
それぞれについて、具体例を上げながら考えていきましょう。
(要素1)西野カナから学ぶ言葉の感度
まず、1つ目の言葉の感度について。現代文ができる人は言葉の感度が高いです。
言葉の感度と言われてもピンとこないと思うので、まず、言葉の感度から説明させてください。
日本語では、同じような意味を表す単語って多いですよね?例えば、語彙・語句・用語・言葉・単語など、似たような意味を表す言葉って結構あります。しかし、よく考えたら、わざわざ言葉を作ったわけですから、微妙に異なる部分はあるはずです。この微妙に異なる部分まで捉えていることを「言葉の感度が高い」と表現しています。
ピンとこない人のために、具体例をあげましょう。西野カナさんの「Darling」という曲はご存知でしょうか?「Darling」という曲の歌詞ではこう書かれています。
ねぇ Darling 脱ぎっぱなし
靴下も 裏返しで
もー、誰が片付けるの?
Darlingというのは、「ダーリン」のことです。この「ダーリン」という言葉のチョイスを見て言葉の感度が高いと感じないでしょうか?
よく考えてみてください。現代日本において、恋人のことを、ダーリンと呼ぶ人ってどれだけいるでしょうか?かなり少ないはずです。実際、あなたのお母さんもお父さんのことを「ダーリン」とは呼ばれていないはずです。
その中で、この「ダーリン」を使う理由は、何なのでしょう?
ここには、相手に向けた呼び声が入るわけですから、「相手」を表すことができればいいわけです。言葉の感度が低い人は、このDarling部分を空欄にして、
(問) ねぇ( )脱ぎっぱなし 靴下も・・・
上の( )内に適語を補いなさい。
とすると、「先生、ここの空欄は、相手を表したらいいので、「てめぇ」や「お前」でもいいのではないでしょうか?」となるわけです(笑)
しかし、それはアウトです。まず、「お前」や「てめえ」だと相手に対して、マイナスイメージですよね?
そういうと、辞書を引いて、
ダーリン=愛しい人。最愛の人。
という意味を知り、「あぁ、なるほど。愛しいという部分が抜けていたのか」となるわけです。確かに、それでもいいのですが、、、それだと、まだ西野カナさんの領域には達していません。
(問) ねぇ( )脱ぎっぱなし 靴下も・・・
上の( )内に適語を補いなさい。
ここの空欄に、「愛しいあなた」を入れると、どうでしょう?
「ダーリン」と「愛しいあなた」は、ほぼ同じ意味ですが、ここでも微妙な違いが生まれています。
その違いは、その言葉を使うキャラクター。
「ダーリン」という言葉を使えば、発している人が、
・若い人
・甘えん坊
・少しわがままなところがある
だというイメージを持ちます。
一方、「愛しいあなた」という言葉を使えば、発している人が、
・比較的高齢
・結婚している夫婦
・マダム
だというイメージがないでしょうか?
だからこそ、ここでは、日常生活では使われていないけど、「Darling」という言葉がピッタリくるのだと思います。
ちなみに、、、
(問) ねぇ( )脱ぎっぱなし 靴下も裏返しで もー、誰が片付けるの?
上の( )内に適語を補いなさい。
だけだと、「ダーリン」は入るかどうかわかりません。マジでキレている可能性がありますから(笑)しかし、この歌詞では、後々、次のように続きます。
そうきっとこんな毎日が
幸せなのかな
嫌よ嫌よも好きのうちかな
今日もあなたの抜け殻を全部集めなきゃ
この脱ぎっぱなしの物を「抜け殻」という表現しているところも、言葉の感度が高いですよね。脱ぎっぱなしで片付けていない衣服を「抜け殻」と表現し、片付けることを幸せだと感じているので、空欄には、相手に対してプラスの呼称が入るとなります。
いかがでしょうか?「言葉の感度」について、わかっていただけたでしょうか?
「言葉の感度が高い」とは、
言葉の意味を知っていて、微妙なニュアンスの違いがわかる
ということです。
受験の現代文において、「言葉の感度を高く」するには、
・現代文で頻出の単語の意味を知っておくこと
・普段から言葉の意味を意識して調べること
の2つを行えばいいです。
評論文で、「イデオロギー」「ポストモダン」「パラドックス」「規定」など頻出の言葉があるので、その言葉の意味を単語帳を使って知っておきましょう。
また、普段から「あれ?これ、どういう意味?」と思った単語を調べるようにすれば、言葉の感度が高くなっていくのでおすすめです。現代文の小説の対策にもなって、一石二鳥ですぐにできるのでオススメです。
(要素2)宇多田ヒカルの曲から考える論理的な思考力
続いて、現代文のセンスの要素の2番目「論理的な思考力」です。
言葉の意味を考えながら論理的に考える力が現代文のセンスを構成する2つ目の要素です。こちらもすぐにはピンとこないと思うので、具体的に説明していきましょう。
またまた、歌の話ですが、宇多田ヒカルさんの「Flavor Of Life」という曲をご存知でしょうか?この曲は「花より男子2」というドラマで使用された曲です。
この曲の歌詞に、次のようなフレーズがあります。
ダイヤモンドよりもやわらかくて
あたたかな未来
手にしたいよ
限りある時間を 君と過ごしたい
この歌詞をご覧になって、違和感がありませんでしたか?
これをご覧になって、「ダイヤモンドよりもやわらかい??どういうこと?」
と思った方は、文字の意味を考えながら論理的に考えていっています。
ダイヤモンドは、世界一「硬い」宝石であることを知っている方は、「ダイヤモンドよりもやわらかいってどういうこと?」と疑問に思い、
あーなるほど!
「ダイヤモンドよりもやわらかくて、あたたかな未来」ではなく、
「ダイヤモンド」よりも「やわらかくてあたたかな未来」
だと解釈を訂正することができます。このように言葉をただ追うのではなく意味を考えてつなげながら読むこと、すなわち、論理的に考えて読む力が文章の解釈では必要になります。
意味を考えながら、論理的に考える力はどうすれば身につくかというと、理想を言えば、小論文を書くのが一番良い方法です。小論文を書けば、論理的に構成する力が養われるからです。しかし、そこまで時間をかけることができない場合は、数学の証明問題をやりましょう。数学の証明問題は、論理的に考える力を養うことになり、書きながら考えることもできるのでおすすめです。
(要素3)知識が豊富だと思考の幅が広がる
最後に、現代文のセンスを構成する要素3「知識の豊富さ」について。
「おいおい!てめぇ!!西野カナのくだりはめっちゃ長かったのに、宇多田ヒカルの話は短くね!?」と思ったアナタ。大丈夫です。要素3でも、宇多田ヒカルさんの曲のお話は続きます(笑)
知識をたくさん持っているほど、解釈が深くなっていきます。
例えば、先ほどの「Flavor Of Life」では、ダイヤモンドが硬い物質であることを知らないと、「ダイヤモンドよりもやわらかい?どういうこと??」と疑問に思わないわけです。
ダイヤモンドを単に「炭素原子が共有結合してできたもの」や「美しい宝石」だと捉えている人には、このような疑問は出てきません。
また、さらに、ダイヤモンドがすごく高価な宝石であることを知っている人は、
「ダイヤモンド」よりも「やわらかくてあたたかな未来」
の歌詞をみると、「高価な物」よりも「あなたと過ごすことで生じる楽しい思い出」が大切なんだと解釈が深まります。
このように、知識が豊富であれば、より深い解釈をすることや、書いてある内容について素早く解釈することができるようになります。
現代文の話でも同じです。受験の現代文でテーマになる話題は限られています。各テーマについて、背景となる知識を持っている方が、素早く内容を理解することができるようになります。例えば、「近代」という言葉を聞いて、あなたは、受験の現代文について、どんな背景知識を持っていますか?
すぐに「科学」というキーワードが出てくる人は、現代文の勉強をしっかりやられていると思います。それまで神を崇め、宗教が大きな力を持っていた中世を過ぎ、近代になると、神を絶対視していた時代に変化が訪れます。人間が力の中心にくるために、「科学」が生まれます。それまでは、「神様がつくった自然」が「理屈で解明できる対象」つまり「支配できる対象」となったわけです。
このように、「近代」になると、それまで持っていた「気持ち」「精神」部分を排除して、全て、対象物として捉え分析する「機械論」が主流になってきます。これが「近代」の特徴です。
上記のような、時代背景とその背景を説明する単語の意味を知っている人と知らない人では、理解に大きな違いが生まれると思わないでしょうか?
このように、知識が豊富にあることは、現代文を解く上で有利になります。
読書量は受験の現代文には必須ではない
以上のように、現代文のセンスについて説明していきました。センスを言語化できると、読書による効能がわかってきます。読書をすれば、現代文のセンスにあたる3つの要素
要素1)言葉の感度が高いこと
要素2)論理的な考えを行いながら読めること
要素3)背景知識を豊富に持つこと
が自然と身に付いていきます。ただ1つ問題があります。それは、受験の現代文で問われる語句や背景知識は、好きな題材を読んでも身につかないということです。
例えば、麻雀が好きで、麻雀に関連する物語を何十冊読んでも、受験の現代文で必要な知識は100%つきません。受験で麻雀がテーマになることはないからです。また、若い人たちが読書をするとしたとき、大抵は小説を読むことになると思います。評論文を読む人はほとんどいないでしょう。
間違えても、「聴衆のポスト・モダン?」というタイトルは手に取らないでしょう。しかし、実際のセンター現代文では、「聴衆のポスト・モダン?」という本から出題されています。ここからもわかるように、読書をしても、受験の現代文で登場する語句や背景知識は身につきません。せいぜい、小説を読んで、小説の語彙力が上がる程度でしょう。
だから、本を読むことが好きならともかく、嫌いなら、読書をする必要はありません。それよりも時間をとって、じっくり現代文対策を行いましょう。
現代文対策で意識するのは、次の3つです。
1)わからない言葉の意味は調べる
2)自分で考えたり、解説を読んだりして因果関係を把握する
3)出題された文に関して重要となる背景知識を整理しておく
上記の3つを行えば、現代文の「センス」が確実に身につきます。今から意識して対策して、現代文ができるようにしましょう。
まとめ
現代文のセンスとは何かについて考えました。
現代文のセンスを構成する要素は次の3つです。
(要素1)言葉の感度
(要素2)論理的な思考力
(要素3)知識の豊富さ
簡単に言えば、語彙力・論理力・知識量が現代文の出来不出来を左右します。
そして、この要素を鍛えるために、やるべきことは、次の3つです。
1)わからない言葉の意味は調べる
2)自分で考えたり、解説を読んだりして因果関係を把握する
3)出題された文に関して重要となる背景知識を整理しておく
センター国語対策として、現代文の勉強をする時間を確保していない人が多いと思います。医学部受験生の方は、余裕のある夏の時期にやっておきましょう。試験が近づくにつれ、現代文に時間をかける余裕がなくなるので。医学部志望の高校2年生以下の方は、本日の記事をきっかけにして、現代文との向き合い方を変えてみてください。それだけでも全然違った結果になります。
え?いつからやるかですか?
それは、当然、
「今でしょ!」
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