医学部再受験生専用勉強マニュアル ~数学編~

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医学部受験では避けては通れない数学。

ブランクのある再受験生でも、1年で二次試験に対応できるレベルに達するためには、どのように勉強すればよいでしょうか?

ここでは、医学部再受験を成功させた私の経験や、再受験生の声をもとに作成した数学の勉強法マニュアルを紹介します。

成功パターンを抽象化し、再受験生のための数学の勉強の手順を4つに分けてまとめたので、ぜひ活用してください。

数学ってどんな科目?

最初に、数学と他の理系科目(理科)との違いを確認しましょう。

理科は基本的に一つの単元で完結しており、別の単元とのつながりはさほどありません。

一方の数学は、一つの単元の中にも他の分野で得た知識を活用しなければならないことが頻繁にあります。

加えて、複合問題も作成しやすく、各単元のつながりは強いといえます。

 

例えば、積分の計算を完璧に修得していても、図形と方程式の分野が弱いために問題が解けない、といったことが起こり得ます。

 

このつながりの多さが、数学の問題の多様性を生み出しています。

その結果、多くの受験生は「数学はひらめきが必要で自分にはそれがないから苦手だ。」と錯覚してしまうのです。

 

しかし、旧帝大程度の受験を一度でも突破した再受験生であれば、いかにブランクがあっても1年あれば十分に医学部合格に必要な数学力をつけることができます。

単元同士のつながりを念頭に置きながら、以下の手順で勉強を進めてください。

手順1.教育課程に変更がないかチェックする

まず、あなたが以前に受験をした年度から、学習指導要領に変更がないか調べましょう。

新課程では、かつてはカリキュラムに組み込まれていた内容が削除されていたり、新しい分野が追加されていたりします。

 

直近では2015年度から、新課程による入学試験が実施されています。

かく言うわたしも、直接的に影響を受けました。

おかげで、複素数平面やデータの分析の勉強を0からスタートしなければなりませんでした。(わたしが現役当時の課程では、複素数平面の代わりに行列が入っていました。)

 

特に、わたしと同じくらいの世代の再受験生は注意してください。

新課程の入試が施行されてから4年たちましたが、まだ過渡期といえます。

実際、今年度の入試で新課程になって初めて複素数平面の問題を出題した大学があります。

これまでの過去問で新課程の問題が出ていないからといって、来年度も同じである保証はありません。

 

未履修の単元を学習するのは負担が大きいですが、上記の理由から新課程にもしっかり対応できるよう準備をしてください。

手順2.合格までの学習計画を立てる

次に、勉強を始めてから入試本番までの具体的な学習計画を立てましょう。

ここでは、ブランクがあったとしても過去に数Ⅲまで履修している再受験生が、1年間で合格を目指す場合のプランを紹介します。

 

スタートから半年程度は、網羅系の問題集を使って、全範囲に触れる勉強をしましょう。

 

ここで心掛けてほしい点は、なるべく一度で記憶に残すことです。

よく再受験生のブログで「同じ問題集を7周回しました!」というような記述を見ます。

しかし、1年でほぼゼロスタートから合格を掴み取るためには、そんな時間は取れません。

 

「一度で覚えられたら誰も苦労しないよ!」とあなたはおっしゃるでしょう。

 

その通りです。

そこで次のポイントです。

 

ほぼ同時並行で、予備校のテキストや単元ごとに入試問題をまとめている問題集を使って、一度学習した単元の実戦問題を解き進めてください。

もし解説を見てもピンとこない場合は、網羅系の問題集を再度見直すことも忘れないようにしましょう。

 

人間の記憶は一度覚えたものであれば、忘れてもすぐに覚え直すことができます。

「一度覚える→忘れる→覚え直す」の繰り返しこそが、記憶の定着のメカニズムです。

加えて、アウトプットすることによっても、記憶を定着させることができます。

 

網羅系のテキストでしっかりと一度パターンを覚える。

並行して実戦問題でアウトプットをし、理解できていなかった問題は網羅系に立ち戻って穴をつぶしていく。

こうすることで10月~11月頃には、数学の基礎はほぼ完成します。

 

12月からはセンター試験の対策に移りましょう。

こちらも気を付けなければならない点があるので、後ほど解説します。

 

センター試験終了後、二次試験まではひたすら過去問系の問題集を解きましょう。

この時期の目標は、「二次試験での時間配分の練習・出題傾向の把握」および「志望大学で頻出の分野への対応力の向上」です。

 

前者は、志望大学の過去問を時間を計って、本番さながらの状況で解いてください。

また、志望大学の過去問だけでは量に不安が残るため、出題傾向・問題数・レベルの似通った他大学の問題にも取り組んでください。

 

後者は、大学の二次試験の問題を集めた問題集を用いて、出題の予想される単元の問題をピックアップして取り組んでください。

事前に受験する大学の出題傾向を調べておく必要があることは、言うまでもありません。

試験本番まで残り一カ月程度の時期です。

再度すべての範囲を復習しようとするのは現実的ではありません。

 

もちろん、上の計画はすべての人に等しく適するわけではありません。

 

数学に自信がある再受験生は、網羅系のテキストはスキップして、実戦系の問題集からスタートしてもよいでしょう。

 

反対に1年で合格することが難しいと考える再受験生は、何とか1年で合格できるプランを立てることができないか専門家に相談することをおすすめします。

手順3.参考書を選ぶ

続いて、あなたの立てた勉強計画に従って参考書を選びましょう。

 

網羅系のテキストは、「概要説明→例題・解説→練習問題」の流れで構成されるものを使ってください。

ただし、多くの受験生が使っている数研出版のチャート式は、短期合格を目指す再受験生には向いていません。

分量が膨大であり、1周するだけでもかなりの時間がかかってしまいます。

同時並行で学習の終わった単元の実戦問題に取り組む勉強法にも悪影響を及ぼします。

 

わたしがおすすめするのは、東京出版の「1対1対応の演習」シリーズです。

この問題集のよいところは、典型問題を絞って掲載しており、それぞれに特徴的な解法を紹介している点です。

そして何より、ページ数が少ないことが魅力です。

 

このように書くと、本当に二次試験に必要な範囲を網羅できているか心配されるかもしれません。

しかし、東京大学や京都大学といった難問を出題する大学でなければ、十分に二次試験を突破するのに必要な問題は網羅されています。

 

目標はあくまでも医学部合格であり、数学の知識を隅から隅まで頭に入れることではないということを忘れないでください。

「1対1対応の数学」では、問題のパターンにそれぞれ題名が付されており、記憶に残りやすいです。

「1対1対応の数学」の解法を完璧にマスターすれば、複合問題であってもそれらを組み合わせて問題を紐解いていくことができます。

 

また、網羅系のテキストを読んで理解できない場合は、予備校に通うことをおすすめします。

 

実戦系の問題集は、単元がきちんと分けられていて、入試問題レベルの内容のものを使ってください。

 

ちなみに、もしどのような問題集が良いかわからなければ、予備校に行って見せてもらうのも手です。あなたのライバルがどのような問題集を使っているか知ることも大事です。

 

過去問系の問題集は赤本等の、年度・大学ごとに問題をセットで掲載しているもの。

数研出版の入試問題集等の、単元ごとに大学の過去問が掲載されているもの。

これらを準備して、使い分けて勉強をしてください。

手順4.勉強計画の実践と修正

ここまで来たら、あとは勉強を始めるだけです。

それでも実際に勉強を始めると、当初の予定通りには進まないことも多々あります。

このような場合は、計画の修正をしましょう。

 

試験までの日程から逆算して、今のままの勉強ペース・内容で問題にないか。

計画の実践だけにこだわって、中身がおろそかになっていないか。

このようなことを振り返ってください。

 

もし、網羅系を予定していた期間に終えることができなさそうな場合は、単元の優先順位をつけて取り組みましょう。

 

医学部合格が最大の目標です。

 

全ての範囲に触れることばかりに固執して、二次試験レベルまで達することができなければその努力も水泡に帰してしまいます。

センター試験の思わぬ落とし穴

さて、最後にセンター試験対策について一言お伝えします。

センター試験が視野に入る時期には、順調に進んでいれば、センターレベルの問題に対しては自信がついていると思います。

 

ここで思わぬ落とし穴にはまる受験生がいます。

 

どういうことかというと、レベルとしては解けないはずはないのに、時間内に終わらないのです。

なぜこのような落とし穴にはまってしまうのでしょうか?

 

それはひとえに「計算力」が不足しているからです。

センター試験で一番の壁となるのは時間です。

確かに基礎的なレベルの問題が並んでいますが、いざ解き始めると時間的余裕がないことが分かると思います。

 

さらにセンター試験では、二次試験では滅多に出会わない解法を使う問題も多いです。

例えば、図形問題では中学数学で習う方べきの定理等を使う必要がありますが、大学入試の勉強だけではほとんどお目にかからない代物です。

これも「計算力」の一環です。

 

「計算力」は一朝一夕では身に付きません。

網羅系のテキストを勉強するときからきちんと手で計算するようにし、普段からセンター試験を意識したトレーニングを積んでください。

 

以上のことから、ある程度数学に自信がついてきた再受験生でも、やはりセンター直前期には、専用の問題集に取り組むことをお勧めします。

センターならではの知識もここから吸収しましょう。

まとめ

数学はやりこもうとすればキリのない科目です。

時間の限られている再受験生にはやりこむ余裕なんてありません。

医学部再受験生に知っておいてほしいことは、次の2点です。

 

  • 数学の勉強法

手順1.最新の教育課程のチェック

手順2.学習計画の作成

(全範囲の網羅と並行した実戦練習、センター試験対策、二次試験対策)

手順3.参考書の選定

手順4.学習計画の実践と修正

  • センター試験数学についての注意事項

突破のカギは計算力

 

短期間で合格するためには、自分に何ができて何ができないかを分析しなければなりません。

是非、あなたに合った計画を立て、マニュアルに従って勉強を進めてみてください。

きっと目標の達成に役立つと思います。

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