広島大学医学部の物理の傾向と対策

広島大学物理

先日、広島大学医学部の化学についての記事でお伝えしたように、広島大学医学部は他の国公立医学部に比べて理科の配点が極めて高くなっています。つまり、理科で得点を伸ばせるか否かが勝負を分けます。

本日は、化学に次いで選択者の多い物理について、傾向をまとめ、高得点を取るための具体的な対策法を紹介します。

広島大学医学部の物理の試験形式・配点は?

まず初めに、広島大学医学部の入試の概要を押さえておきましょう。広島大学医学部の入試は、他の医学部と違う大きな特徴があります。

 

 広島大学医学部の配点は、センター試験900点満点、個別学力試験1800点満点の計2700点満点です。

 ただし、個別学力試験に関しては、A配点・B配点の2種類があり、A配点により合格者の1/2を決定後、残りの1/2の合格者をB配点により決定します。

 実はこの非常に独特な選抜方法に、広島大学医学部が求める受験生像が見て取ることができます。

 

 それぞれの科目と具体的な配点を見てみると、センター試験は、

国語:100 社会:100 数学:200 理科:200 外国語:200

であり、A配点・B配点に共通です。

 一方で、個別学力試験については、

【A配点】数学:300 理科:1200 英語:300

【B配点】数学:600 理科:600 英語:600

であり、大きく異なっています。

 

 A配点を見るとお分かりいただけるように、全体における個別学力試験の理科の比重が圧倒的に大きくなっています。通常、他の国公立大学では、二次試験の理科の配点割合は33.3%ですが、広島大学は、倍の66.6%となっています。

 すなわち、広島大学医学部としては、理科に秀でた人材を入学させたいというメッセージを、受験生に送っていると言えるのです。

 もちろん、B配点での合格を狙ってバランスよく得点すれば合格することは可能ですが、理科重視の試験制度であることは間違いありません。

 

 また、筆記試験に加えて面接試験も課されます。

 こちらは段階評価であり、A(入学させてもよい)・B(入学させたくない)で評価が下されます。

 そして、面接官全員がB判定を下すと、筆記試験の得点の出来不出来に関わらず不合格とされます。

 

それでは、広島大学医学部の物理はどのような試験形式でしょうか?

 

そもそも広島大学医学部の理科は、物理・生物・化学の3科目から2科目を選択して解答します。

 制限時間は理科2科目に対して120分が与えられるため、1科目にかけられる時間はおよそ60分です。

 

 その中で物理は、新教育課程が導入された2015年度入試以降、大問3つで構成されています。ただし、大問3つといっても大問3がそれぞれ全く異なるテーマを扱う問1、2に分かれている年度も多いため、実質大問4つ分を解答するような感覚です。

 各大問は4~6つの小問に分かれている形式と文章中の空欄の穴埋め形式があります。

 

 解答形式は結果のみを書くものが中心ですが、導出過程を書かせる設問も毎年出題されます。また、論述問題やグラフを選択させる問題、正しいものを選ぶ選択問題も一部見られることにも留意してください。

広島大学医学部の物理の問題の難易度と合格に必要な得点率は?

それでは広島大学医学部の合格のためには、物理では何点を目指せばよいでしょうか?過去の合格最低点や難易度をもとに考えてみましょう。

 

 合格最低点は、A配点・B配点それぞれ公表されており、年度別では、

【A配点】2017年度:2208 2016年度:2238 2015年度:2243 2014年度:2272

【B配点】2017年度:2060 2016年度:2130 2015年度:2190 2014年度:2233

となっています。

 

 ここで、センター試験で765点(85%)取ったと仮定しましょう。(通常、医学部では、780点以上を取ることが望ましいですが、広島大学は二次試験の配点が高いので、逆転できるラインも考慮して85%で設定しています)

すると、この点数を取れたと仮定したとき、個別学力試験ではA配点では1500点以上、B配点では1450点以上取れれば、合格圏内となります。

 

A配点・B配点から考えて、2200点をとることを目標に考えたとき、個別学力試験(二次試験)において1435点、つまり79.7%の得点率が求められます。つまり、全科目で合わせて二次試験の得点が8割となるように目標を設定して対策を立てていきましょう。記述試験で8割というとハードルが高い印象を受けるかもしれませんが、どの科目についても十分到達可能です。

ただし、広島大学の試験制度が、理科重視であることを鑑みれば、数学:80%、英語:70%、理科:90%を目標とするのが、広島大学医学部合格には適しています。

上記点数を取れれば、A配点では1530点、B配点では1440点となり、いずれの配点でも合格最低点を超えることができるからです。

 

 広島大学医学部の物理は他学部と同一の入試問題ということもあり、難易度は基本~標準のものがほとんどです。この点、60分という制限時間は適当といえます。

 しかしながら気を付けなければならないのが、すべての問題がパターンに当てはめて解き進められるわけではなく、融合問題や見慣れない題材を扱った問題もまれに出題される点です。加えて交流回路といった現役生が手薄になりがちな分野も出題されるため、油断は禁物です。

 

 以上のことから物理で9割を取るためには、出題される可能性のある単元の標準的な問題には素早く解答し、そうでない問題にはじっくりと取り組めるような時間運びをしなければなりません。

 そのためには「選球眼」ならぬ「選問眼」、すなわち時間をかけるべき問題はどれかを素早く見抜く能力を養うことが肝要です。「選問眼」を駆使して問題を解いていく順番を考えることも一つの戦略となります。

広島大学医学部の物理の頻出分野は?

続いて広島大学医学部の物理の詳細な出題傾向を分析していきます。

大問は全部で3つであることは上述のとおりですが、その内訳は力学、電磁気からは各1問が必出で、残りの大問1つが熱力学、波動からあるいは問1、2に分かれるパターンでいずれも出題されます。

反対に、原子の単元からの出題歴はありません。

 

 各単元の頻出分野は以下のとおりです。

 

【力学】

 力学的エネルギー保存則や2物体の衝突をテーマとする運動量保存則に関連する問題が頻出です。力学は基本レベルの問題が多いため、完答を目指したい単元ではありますが、設定が複雑な問題も過去には出題されています。特に単振動を扱う問題では難易度が上がり、苦手な受験生も多く差がつきやすいのでよく練習をしておきましょう。

 

【電磁気】

電磁誘導に関する問題がよくみられます。ただし、典型的な平行なレール上の導体棒の運動だけではなく、円運動する導体棒の電磁誘導やばねのついた導体棒の電磁誘導といったように、バリエーションは豊富です。公式の暗記だけでなく、物理現象の原理の理解や融合問題への対応力の向上に努めましょう。回路を扱う問題ではコイルが含まれていることが多いことも特徴です。いずれにしても、他の大問と比較すると少々難易度が高い印象です。

 

【熱力学】

 容器内に封入された気体を扱う問題では、ほぼ間違いなく熱力学第一法則を問われます。気体の仕事と内部エネルギーとの関係の理解は欠かせません。状態変化や法則の名称を答えさせる問題の出題歴もあるため、計算問題だけでなく暗記事項もないがしろにせずきちんと押さえておきましょう。

 

【波動】

 回折格子や見かけの深さといった光波をテーマとした問題や、ドップラー効果といった音波をテーマとした問題の出題歴があります。新課程導入後の2015年以降を見てみると、同一の分野からの出題はありません。今後も幅広いテーマからの出題が予想されるため、波動に関しては前年度に出た分野を除いて、濃淡なく対策をしておくのが無難といえます。

お勧めの広島大学医学部の物理の対策方法

最後に、これまでの内容を踏まえて、どのように勉強をすればよいかお伝えします。

 

第一にセンター試験までは、標準的なレベルの問題集を使って、原子の単元を除くすべての単元の典型問題については確実にかつスピーディーに解けるようにしましょう。

その際、ただ問題を解けるようになるだけでなく、

・選問眼を養う

・導出過程を簡潔にまとめる

という2つのポイントを意識してください。

 

 選問眼は「広島大学医学部の物理の問題の難易度と合格に必要な得点率は?」の項で紹介したように9割得点するために欠かせない能力ですが、どのようにすれば身につくか疑問に思う読者も多いかと思います。実は選問眼は具体的に〇〇をすればよい!というものではなく、多くの問題に触れることで自然と修得できる能力なのです。

というのも、初見の問題に対峙したときに「どこかで見たことがある」とピンとくれば、それは真っ先に手を付けるべき問題であり、言うなれば解けなければならない問題でもあります。反対に問題を読んですぐに解法が思い浮かばなければ後回しにするのも一つの手です。これが選問眼です。

簡潔に言ってしまえば、典型問題についてはどんな単元であってもすべてマスターしましょう、ということです。ここで注意していただきたいのが、多くの問題に触れると言ってもたくさんの問題集に手を出すことは避けてほしいということです。複数の問題集に取り組んで広く浅く理解するよりは、全単元の基本~標準レベルの典型問題を網羅した問題集を100%理解する方が、広島大学医学部を受験する場合には効果的です。ベースとなる取り組むべき問題集を決めて、理解が不足していると思われる分野だけ、問題集の問題を選んで取り組むことをおすすめ致します。

この網羅的な勉強に最適な問題集は、『良問の風』(河合塾シリーズ)です。問題の質や分量ともに申し分ありません。センター試験が終わるまでは『良問の風』に何度も取り組み、問題を見たら解法が即座に頭に浮かぶ程度にまで身に染み込ませましょう。物理が得意な方で、『良問の風』が8割以上解けるという方であれば、『名問の森』(河合塾シリーズ)に取り組まれると良いでしょう。

ちなみに、問題集を何周やればいいかについては、過去の記事「問題集・参考書は何周すればいい?医学部受験のプロがRPGから答えを導いた」を参考にしてください。

 

 導出過程を簡潔にまとめる能力も選問眼とともに効率的に入試問題を解き進めるのに不可欠です。広島大学医学部の物理では、導出過程を書かせる設問が必出です。そのため、難しい問題に時間を残しておくためには、簡潔にかつ要点を押さえた解答を書けるようにする必要があります。

 普段の勉強の中でも結果を求めることだけではなく、導出過程を求められたときにどのようにまとめるかにもこだわりましょう。

 

より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。

 

次にセンター試験が終わって二次試験を迎えるまでの約1カ月についてです。この期間にすべきことは、

・過去問の分析

・過去問を使った実戦演習

・問題集を使った実力アップ

の3つです。

 

 広島大学医学部の物理の頻出分野については本記事でもまとめましたが、自身の目でもそれを確認して問題の雰囲気を感じ取ってください。

 そのうえで、実際に問題にチャレンジしてみます。このとき必ず時間を計り、導出過程も問われる設問にはしっかり記述をする等、本番さながらの状況で取り組みましょう。特に問題の難易度に対して時間がどの程度かかるかといった相場観や、どのように問題を解いていけば効率が良いかといった時間配分については、最初で最後の練習のチャンスです。

 

そして同時並行でこれまで使っていた問題集で、最後の総復習をしましょう。総復習といっても、全範囲を1カ月でこなすのは不可能です。やみくもに勉強をするのではなく、必ず過去問で分析した頻出分野や自身の苦手な分野を洗い出し、テーマを絞り優先順位をつけてください。

各単元、3~4つのテーマを目安とするとちょうどよい分量となるでしょう。

まとめ

広島大学医学部の物理の傾向と対策法のポイントは、

①広島大学医学部では理科重視の配点が採用されている

②理科2科目に対して制限時間は120分

③物理は大問3つで構成され、小問4~6つが与えられるものと空所補充のものがある

④基本~標準レベルの問題が中心で目標点は9割

⑤力学、電磁気は必出で、その他は波動、熱力学のいずれかあるいは両方が出題される

⑥センター試験までは、

・選問眼を養う

・導出過程を簡潔にまとめる

ことを意識して、標準レベルの問題集の内容を網羅する

⑦センター試験後は、

・過去問の分析

・過去問を使った実戦演習

・問題集を使った実力アップ

をする

の7点が重要なポイントです。

 

 広島大学医学部の物理は一部では難しい問題や初見では、ギョッとするような融合問題も出されることがあります。しかし決して特殊な発想や複雑な計算が求められるようなものではなく、基礎的な理解を組み合わせて丁寧に考察をしていけば必ず答えにたどり着くことができるよく練られた良問です。もちろんそのためには、典型問題のパターンはマスターしておく必要があることは言うまでもありません。

 とにもかくにも物理の基本を押さえ、常日頃から選問眼、導出過程を簡潔にまとめる能力を養っていけば9割目標といえども恐るるに足りません。

 

 地道な作業が続きますが、努力は必ず報われます!「基本に忠実に」の精神で邁進してください!

 

 

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