信州大学医学部の化学の傾向と対策
信州大学医学部の物理の記事で紹介したように、信州大学医学部の入試制度は、ここ数年で大きく変貌しています。理科に関しては、平成27年度に数学・英語に加えて化学が必修科目となり、平成28年度以降は物理・化学・生物から2科目を選択する形式になりました。
本日は、化学が導入された平成27年度以降の過去問を分析し、傾向と具体的な対策法について紹介します。
信州大学医学部の化学の試験形式・配点は?
信州大学医学部の入学試験の点数配分は、センター試験:450点、個別試験:600点の合計1050点満点です。センター試験と個別試験の比重では、個別試験の点数が高くなっています。とはいえ、個別試験で挽回できるほど、センター試験と個別試験の点数差があるわけではないため、センター試験で失敗した場合に個別試験で挽回できるほどではありません。また、後述しますが、個別試験の中で学科(英数理)が占める割合は450点であるため、実質センター試験:個別試験の割合は1:1と考えると良さそうです。このことからも、センター試験で高得点が取れれば個別試験に大きなアドバンテージを持って臨むことができるといえます。
詳細な各試験の科目とその配点は、
【センター試験】
国語:100 社会:50 数学2科目:100 理科2科目:100 外国語:100
【個別試験】
数学:150 理科2科目:150 外国語:150 面接:150
となっています。
面接も点数化され、著しく低い場合は総合点に関わらず不合格となる場合もあります。
次に二次試験の理科では、物理・化学・生物から2科目を選択するようになります。制限時間は2科目に対して150分なので、1科目にはおよそ75分で解答するのが目安です。
化学については、大問4つで構成され、6つ前後の小問に分かれています。各大問では基本的に1つの実験やテーマを扱い、それに関する計算問題や知識問題等が出題されますが、場合によっては1つの大問中に全く異なるテーマが独立して並んでいるものも見られます。
解答形式は、文章中の穴埋めや化学物質名のように答えのみを書く形式や、計算の途中を書かせたり理由の考察の論述といった形式もあります。
化学が入試に導入された平成27年度は、大問1~4から3題、大問5、6から1題を選択するようになっていましたが、平成28年度以降は上記の形式で固定されています。
信州大学医学部の化学の大きな特徴は、偏りなくすべての分野について、基礎的な知識を習得できているかどうかが求められている点です。1つの大問では1つの実験やテーマを扱うのが基本ですが、小問でそのテーマに絡めて複数の分野にまたがる内容が問われることが多々あります。
例えば平成30年度にはアルカリ金属をテーマとする大問の中にNaClの格子エネルギーを求める問題が出されたり、周期表上の遷移元素の特徴をテーマとする大問で沈殿を生成するペアや酸化還元反応の式を書く問題が出されています。
決して難易度は高くありませんが、検定教科書に載っている内容であれば、細かい知識でも問われる可能性があります。また、化学現象の発生の機序や実験の手順の意味を知らなければ解答できないような問題もあるため、表層的な知識ではなくそれぞれの事項の意味を含め、基礎をしっかりと理解していくような勉強が必要となります。
信州大学医学部の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
それでは過去の合格最低点や難易度をもとに、信州大学医学部に合格するために必要な化学の点数を考えてみましょう。
まず合格最低点についてですが、平成30年度:818.2点、平成29年度:861.4点、平成28年度:807.2点より、平均を求めると828.9点となります。したがって、850点を超えると合格安全圏といってよいでしょう。
ここでセンター試験で450点中390点(約87%)を取れたと仮定すると、個別試験では600点中460点以上取ることが必要となります。
これを踏まえて各教科の難易度から、それぞれ何点ずつを目標点とすべきかを考えると、
数学:120点 理科:130点 外国語:110点 面接:100点
とすれば、460点となり合格点に到達できます。
理科は2科目で150点満点であるため、2科目間で得意不得意に大きな差がなければ、化学では75点中65点(約87%)が目標点となります。
信州大学医学部の化学の難易度からすると、基礎がきちんと固まっていれば、高得点を狙える問題構成です。問題も検定教科書や標準的な問題集に掲載されているような、典型的な問題がほとんどです。
失点が考えられるポイントは、主に計算問題あるいは初見の化合物を扱い小問の誘導に従って考察を深めていくような、基礎的理解の応用力を試される一部の問題です。特に高分子化合物の合成に必要な単体の量の計算は処理する数が汚くなりがちなので、計算ミスが多くなります。有効数字の考え方も併せて、計算力の向上にも努めましょう。
信州大学医学部の化学の頻出分野は?
続いて信州大学医学部の化学の頻出分野について、大問ごとに分析していきます。
まず大問の構成は、大問1:理論化学、大問2:無機化学、大問3:有機化学(構造決定)、大問4:有機化学(高分子化合物)のセットが定番です。ただし、平成27年度は大問1、2が理論化学、大問3が無機化学、大問4が様々な有機化合物の誘導体というセットとなっていました。
いずれにしても、構造決定の有無に変化があるだけで、その他の大きな出題傾向としては変わらないので、以下を参考に勉強をすれば問題ないでしょう。
【理論化学】
熱化学方程式や化学反応と量的関係を求めるような計算問題が必出です。加えて化学平衡や電離平衡に関する問題も頻出です。平衡定数の求め方やルシャトリエの原理は完ぺきに押さえておきましょう。これらは導出過程を書いたり、説明・論述といった形式が多いため、解答の書き方の練習も欠かせません。さらに論述問題は字数制限があるため、事前準備のときから字数を意識することができれば、本番でも効率的に解答を導くことができます。
【無機化学】
周期表と絡めて、アルカリ金属や遷移元素といった特徴的な物質の化学的性質を問う形式です。小問は様々な切り口から知識が試されるため、幅広い対応力が必要となります。特に電気分解で電極で発生する物質、イオン化傾向と金属の酸化・還元、沈殿を生成するペアはマスターしておくべきテーマです。また、錯イオンの化学式を問う設問が頻出なので、重要な錯イオンの化学式は全てかけるようにしておきましょう。
【有機化学】
構造決定では、元素分析を用いる問題が多く出されています。元素分析で組成式を求め、そこから分子式に結びつける流れは一通り身に付けておくべきです。加えて、有機化合を検出する試薬等の基礎知識は必ず押さえておきましょう。
大問4では天然高分子化合物・合成高分子化合物をテーマとする問題も出題されます。今までのところでは糖・セルロースの性質や重合反応を扱う問題が頻出です。ただし、平成26年度には合成高分子の問題も出されており、他の分野の幅広さを考慮すると、今後は合成高分子やアミノ酸のような他の天然高分子化合物に関する問題の出題も予想されます。
お勧めの信州大学医学部の化学の対策方法
それでは、上記内容を踏まえ、信州大学医学部に合格するための具体的な対策法を紹介します。勉強内容は、センター試験前までとそれ以降に大きく二つに分かれます。
第一にセンター試験前までは、どの範囲の典型問題についても、反射的に解法が頭に浮かぶように訓練してください。信州大学医学部の化学は難易度はかなり基礎的なものである一方で、問われる内容は幅広くなっています。
合格点を取るために必要なのは、得意な分野で他の受験生と差をつけるような勉強法ではなく、典型問題であればどのようなテーマにも対応できるような基礎力です。1月に入るまでは、標準レベルの問題集を何周も繰り返し取り組み、基礎力の底上げを図ってください。
最適な問題集は、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。一通り身についた後は、苦手な分野を洗い出して改めて取り組む等、工夫して効率的に勉強しましょう。
より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。また、「化学の重要問題集」がどんな問題集でどんな方におすすめかは、医シュランにて紹介しているので、合わせてご覧ください。
センター試験終了後から二次試験までの約1カ月は、
・過去問の分析
・過去問を使った実戦演習
・問題集を使った苦手分野の克服
の3本柱で対策を進めてください。
過去問の分析は本記事でもお伝えしていますが、今一度自身の目で確認をしてください。
そのうえで実際に過去問を時間を計って取り組み、レベル感を肌で感じ、時間配分の練習をしましょう。ただし、過去問はお伝えした通り4年分しかないため、信州大学医学部の化学と同等の難易度・問題構成の他大学の問題にもチャレンジしましょう。2015年度以前の岡山大学医学部の過去問等がお勧めです。
問題集を使った苦手分野の克服は、苦手分野の洗い出しから始めます。残り1カ月で全範囲の復習は難しいため、なるべく効率の良い勉強法を考えてください。
特に信州大学医学部の化学は検定教科書に載っている細かい知識を問われる場合も多いため、この直前期に知識関連をざっと総復習をしましょう。そのためにも、予備校等の暗記物をまとめたプリントをまとめておいたり、検定教科書のどの部分を復習するかを決めておくといったように、あらかじめ勉強すべき内容を準備しておきましょう。
まとめ
信州大学医学部の化学の傾向と対策法のポイントは、
①化学は2015年度に入試科目として導入された
②理科2科目に対して制限時間は150分
③物理は大問4つで構成され、6つ前後の小問に分かれる
④解答は結果のみを書く形式、導出過程を書く形式、論述問題等がある
⑤目標点は65/75
⑥大問の構成は、大問1:理論化学、大問2:無機化学、大問3:有機化学(構造決定)、大問4:有機化学(高分子化合物)のセットが定番
⑦頻出分野は、
【理論化学】化学反応式と量的関係、化学平衡
【無機化学】周期表と元素の性質、金属の酸化・還元、沈殿、錯イオン
【有機化学】構造決定、天然高分子化合物、合成高分子化合物
⑧センター試験までは全範囲の化学的基礎を固める
⑨センター試験後は、
・過去問の分析
・過去問を使った実戦演習
・問題集を使った苦手分野の克服
をする
の9点が重要なポイントです。
信州大学医学部の化学は、難易度としては医学部志望の受験生であれば、9割以上を目指すべき内容です。そのためにも、検定教科書に載っているような基本も疎かにせず、細かな知識も身に付けましょう。そのうえで過去問での演習で、化学的基礎力の応用を求められるような問題への対応力を身に付ければ、鬼に金棒です。
非常なハイレベルな戦いになりますが、ミスは絶対にしないことだけは必ず心掛けてください!!
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また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
信州大学の過去問ページ
岡山大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)
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