信州大学医学部の物理の傾向と対策

信州大学物理

信州大学医学部の数学の記事で紹介したように、2013年以前の信州大学医学部は二次試験で数学のみを課すという独特な入試制度を採用していました。理科に関しても2016年以降に2科目化され、現行の入試制度に変更されてからはまだ日が浅いという状況です。  本日はそのような信州大学医学部の物理について、過去3年分のデータを分析し、その傾向と具体的な対策法を紹介します。

信州大学医学部の物理の試験形式・配点は?

信州大学医学部の入学試験の点数配分は、センター試験:450点、個別試験:600点の合計1050点満点です。センター試験と個別試験の比重では、個別試験の点数が高くなっています。とはいえ、個別試験で挽回できるほど、センター試験と個別試験の点数差があるわけではないため、センター試験で失敗した場合に個別試験で挽回できるほどではありません。また、後述しますが、個別試験の中で学科(英数理)が占める割合は450点であるため、実質センター試験:個別試験の割合は1:1と考えると良さそうです。このことからも、センター試験で高得点が取れれば個別試験に大きなアドバンテージを持って臨むことができるといえます。

 

 詳細な各試験の科目とその配点は、

【センター試験】

国語:100 社会:50 数学2科目:100 理科2科目:100 外国語:100

【個別試験】

数学:150 理科2科目:150 外国語:150 面接:150

となっています。

面接も点数化され、著しく低い場合は総合点に関わらず不合格となる場合もあります。

 

 次に二次試験の理科では、物理・化学・生物から2科目を選択するようになります。制限時間は2科目に対して150分なので、1科目にはおよそ75分で解答するのが目安です。

 

 その中で物理については大問4つで構成され、大問1つで1つの実験や単元を扱います。

 それぞれの大問は、小問に分かれているパターンと文章中の空欄補充のパターンに分かれます。そしていずれのパターンにおいても特徴的なのが、その問題文の長さです。おそらくほとんどの受験生は、初めて信州大学医学部の物理の過去問を目にしたときには、ぎっしりと文字で埋め尽くされた問題用紙に驚くことでしょう。小問も大問一つにつき10題程度に分かれていることもあり、問題文が長くなる要因の一つになっています。

 

 解答はほぼ全て結果のみを書く形式で、グラフ等の描図問題も出題される年度もあります。どちらにせよ、途中経過は採点対象外となるため、部分点はありません。

 

 信州大学医学部の物理では、長い問題文に根気強く取り組む体力と、計算ミス等をしない確実性が必要不可欠な試験となります。

信州大学医学部の物理の問題の難易度と合格に必要な得点率は?

それでは過去の合格最低点や難易度をもとに、信州大学医学部に合格するために必要な物理の点数を考えてみましょう。

まず合格最低点についてですが、平成30年度:818.2点、平成29年度:861.4点、平成28年度:807.2点より、平均を求めると828.9点となります。したがって、850点を超えると合格安全圏といってよいでしょう。

ここでセンター試験で450点中390点(約87%)を取れたと仮定すると、個別試験では600点中460点以上取ることが必要となります。

これを踏まえて各教科の難易度から、それぞれ何点ずつを目標点とすべきかを考えると、

数学:120点 理科:130点 外国語:110点 面接:100点

とすれば、460点となり合格点に到達できます。

 理科は2科目で150点満点であるため、2科目間で得意不得意に大きな差がなければ、物理では75点中65点(約87%)を目指してください。

 

 試験形式の紹介の中で問題文が非常に長いとお伝えしましたが、他学部と共通の試験問題ということもあり、それぞれの小問の難易度自体は決して高くはありません。基本~標準レベルの問題が並んでいます。

小問の数が多いということも、裏を返せば誘導がしっかりとしているということになります。長い問題文を見てしり込みするのではなく、テンポよく一つずつこなしていければ目標点に無理なく到達できるはずです。

 

一方で、87%というのはやはり高い得点率です。一つのミスが命取りになりかねません。部分点ももらえない解答形式なので、見直しの方法等も含めて確実に点数を取っていくことを心掛けてください。

信州大学医学部の物理の頻出分野は?

続いて信州大学医学部の物理の頻出分野について、単元ごとに分析していきます。

 

【力学】

 どの年度でも出題されており、力学的エネルギー保存則に関連する問題が頻出です。斜面上の小物体の運動やばねの弾性エネルギーと運動エネルギーの関係など、力学的エネルギー保存則を用いる典型問題は一通り身に付けておきましょう。

 また物体の運動を扱う問題が多いといえるため、力と運動方程式の理解も欠かせません。

 

【電気】

 コンデンサーを含む直流回路の問題が頻出です。さらにコンデンサーの極板間隔を変えるのに必要な仕事といった、コンデンサーの性質についての問題も見られます。いずれのパターンについても、典型問題は確実に解けるように準備してください。

 

【磁気】

 過去3年中、コイルの自己誘導・相互誘導に関する問題が1度出されました。データが少ないため磁気の頻出分野を分析することはできませんが、やはりコイルの問題も典型的な問題であり、誘導に乗って解き進めれば完答できる難易度でした。

 電気の分野からの出題がない年度に磁気が出題されているので、電磁気で1分野という扱いにしている可能性もあります。

 

【波動】

 波の式や回折格子といったように、特定の分野への偏りはありません。今後は音波も出題されることも考えられるので、波動の対策は全範囲を網羅しておく必要があります。出題された年度では、屈折や定常波といった現象の原理を問う問題であったため、その他の現象の原理についても検定教科書で確認しておきましょう。

 

【熱力学】

 力学同様、毎年度出題されているのが熱力学です。容器内の理想気体の状態変化を扱い、ばね付き容器であることが多い点が特徴的です。熱力学第一法則を単純に当てはめるだけでなく、気体の仕事とばねの弾性エネルギーとの関連を理解しておきましょう。

 

【原子】

 過去3年のうち1度だけ、原子崩壊および核融合に関する問題が出されました。こちらもデータの蓄積がなく、今後も引き続き出題されるかどうかの判断は不可能です。難問に取り組む必要はないので、典型問題については一通りできるように準備してください。

 

 単元ごとの特徴をまとめましたが、入試制度の変更があったばかりで、いずれの単元も今後の出題傾向を予想することは困難です。

 4つの大問のセットも、「力学・熱力学+電磁気・波動・原子の中から2単元」になっているようでもありますが、来年度も同様のセットになるかどうか確証は持てません。

 

 信州大学医学部の物理の対策では、難易度の高い問題は解けるようになる必要はありませんが、典型的な問題については全範囲を網羅しておくことが求められます。

お勧めの信州大学医学部の物理の対策方法

ここからは上記内容を踏まえた具体的な対策法を紹介します。

 

まず、センター試験が終わるまでは、物理の全範囲について標準レベルの問題集を使って典型問題をマスターしてください。この時期に大切なのは、複数の問題集に手を出すのではなく、一つの問題集を完璧にすることです。

信州大学医学部の物理は問題数は多いものの、設問の一つ一つはパターン問題といえるようなものがほとんどで、解法を知っていれば一問一答のような形で解き進めることができます。

 

お勧めの問題集は、『良問の風』(河合塾シリーズ)です。全単元の典型問題が網羅されており、難易度も標準的です。分量も適度なので、センター試験前までに一通りの問題が解けるようになっておけば心強いです。『良問の風』に掲載されている内容を完璧にしておけば、二次試験も十分に対応可能です。

 

より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。

 

センター試験終了後は、引き続いて、

・過去問の分析

・過去問を使った実戦演習

・標準問題集を用いた苦手分野の強化

を行ってください。

 

 過去問に関しては、分量が多くないため、他の大学のものも活用してください。信州大学医学部のように、長い文章題が与えられ設問に従って問題を解いていくようなものがよいです。岐阜大学は難易度・問題内容とも類似しているため、よい練習になるでしょう。

 大学の過去問に取り組むときは、必ず時間を計りスピード感も意識することを忘れないでください。

 

 直前期の復習については、これまで使ってきた問題集を継続して繰り返せばよいです。新たに問題集を購入して取り組もうとするよりは、既に一通り解いた問題の中から自身の苦手なものをピックアップして総復習していく方が効率的です。

まとめ

信州大学医学部の物理の傾向と対策法のポイントは、

①物理は2016年度に入試科目として導入された

②理科2科目に対して制限時間は150分

③物理は大問4つで構成され、小問に分かれているものと空所補充のパターンがある

④解答はすべて結果のみを書く形式で、グラフの描図も一部ある

⑤目標点は65/75

⑥過去のデータが少ないため、明確な出題傾向は不明

⑦センター試験までは全範囲の典型問題を網羅する

⑧センター試験後は、

・過去問の分析

・過去問を使った実戦演習(信州大学、岐阜大学)

・標準問題集を用いた苦手分野の強化

をする

の8点が重要なポイントです。

 

信州大学医学部の物理は、小問の誘導にしっかり乗れるかがカギです。一つ一つは一問一答レベルのものがほとんどなので、典型問題へ反射的に答えられるようになれば怖くありません。

入試制度の変更があったばかりで今後の傾向の予想ができない点は懸念材料ですが、それは他の受験生も同じ条件です。

幅広い対応力を身に付けて、物理を得点源にして本番に臨みましょう!!

 

 

本記事内で登場した過去のオススメ記事

「信州大学医学部の数学の傾向と対策」

 

「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」

 

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