京都府立医科大学の化学の傾向と対策
他記事、「京都府立医科大学の物理の傾向と対策」において、時間との勝負となることをお伝えしましたが、同大学の化学についても同様のことがいえます。
本日はその京都府立医科大学の化学について、これまでの傾向と具体的な対策法を紹介します。
京都府立医科大学の化学の試験形式・配点は?
はじめに京都府立医科大学の入試制度について見ていきましょう。
京都府立医科大学医学部の入試は一般選抜(100名)および特別選抜(学校推薦型選抜)(7名)に大別されます(カッコ内は募集人員)。本記事では最も受験者の多い、一般選抜について取り扱います。
一般選抜では大学入学共通テストと大学が課す第二学力試験の合計得点で合否が決まり、国公立の医学部受験における典型的な制度が採用されています。各試験の科目と配点は、
【共通】国語:100点 社会:50点 数学:50点×2 理科:50点×2 英語:100点
【二次】数学:200点 理科:100点×2 英語:200点 面接・小論文:得点化なし
となっています。共通テスト450点、第二学力試験600点の計1050点満点です。
特に2021度の医学部受験生が抱える不安として、これまでのセンター試験に変わり、共通テストが導入されることが挙げられるでしょう。どの大学を受けるかに関わらず昨年度からの変更点は必ず事前に調べておくべきですが、京都府立医科大学に関しては英語の筆記試験とリスニング試験の配点比率が1:1(これまでは4:1)となった点は押さえておかなければなりません。
さらに、第二学力試験においても2021年度に変更があり、筆記試験に小論文が追加されています。小論文は得点化されませんが、面接試験で用いられるため、苦手意識のある方は看護学科の小論文の問題等を参考に、予め対策をしておくことをおススメします。
ちなみに入学志願者が募集人員の3倍を超えた場合、共通テストの成績により第一段階選抜を行うとされていますが、ほとんど実施されていません。また、面接試験で医師および研究者となるにふさわしい資質、適性を欠くと判断されれば、学科試験の成績にかかわらず不合格とすると明記されているので、注意が必要です。
その中で化学に関しては毎年、大問3つで構成されています。一部の問題では、答案に導出過程を求められる点も押さえておきましょう。試験時間は2科目で150分とやや長めですが、問題の出題形式や設問量を考慮すると時間的に余裕はありません。
他の科目と同じように難易度が高い問題が並びますが、それに加えて各大問で長い説明文が与えられ、様々な角度から化学の知識が試されることも医学部受験生を苦しめます。
例えば、金属元素の性質といった無機化学をベースとする大問に絡めて、電気分解といった理論化学の範囲の計算問題が出されたりします。つまり、いずれの大問も融合問題であり、総合力がなければ答えを導くことができないのです。また教科書に載っていない事項について、説明を読んでその場で理解をしなければならないため、確かな化学的知識に基づいた読解力も不可欠です。
京都府立医科大学の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、京都府立医科大学の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、化学では何点を取ればよいか考えてみます。
京都府立医科大学の合格最低点は、現行の1050点満点になった2017年度以降は、
令和2年度:657.3点 平成31年度:669.6点 平成30年度:690.0点 平成29年度:713.9点
となっています。したがって、年度にもよりますが700点(約67%)取ることを目標とするのが良いでしょう。
ここで共通テストの得点帯に大幅な変動がなく、さらに共通テストの得点が450点中380点(約84%)であったと仮定すると、第二学力試験では600点中320点(約53%)得点できれば合格点に達します。これを踏まえて各科目の難易度も考慮して、第二学力試験の各科目の目標点を設定すると、
数学:110点 理科:100点 英語:110点
とするのが良いでしょう。
理科では2科目合計で100点なので、選択科目間に得意・不得意の差がなければ、化学では50点(50%)が目標となります。50点と聞くとそれほどハードルは高くないように聞こえますが、実際に過去問を目にしたことがあれば目標達成が容易ではないということはお分かりいただけると思います。
先ほどお伝えしたとおり、京都府立医科大学の化学では総合力・読解力が要求され、さらに計算問題にも複雑なものが多々あります。まず解けそうな問題は迅速に処理し、残った時間でどれだけ難問で得点を稼げるかがカギになります。
京都府立医科大学の化学の出題傾向は?
それでは、京都府立医科大学の化学では、どのような問題が出されるのでしょうか?
各大問で大まかな傾向が決まっているため、以下で大問ごとにまとめていきます。なお、ベースとなるテーマはあるものの全体としては融合問題となっており、総合力が問われることを改めて心に留めてお読みいただければ幸いです。
【第1問】
周期表と元素の性質に関する問題が出されます。特徴的なのが化学物質の工業的製法が頻出である点です。工業的製法といっても教科書に載っているような、銅の電解精錬やアルミニウムの融解塩電解といったものばかりでなく、純度の高い亜鉛の精製法のようなものの出題歴もあります。このような場合は必ず説明があるため、落ち着いて他の化学反応の知識をフル活用して対応しましょう。
【第2問】
化学反応や実験に関連して、主に理論化学の範囲の計算問題が出題されます。無機物質だけでなく、核酸などの有機物質を扱う場合もあります。電離平衡、特に二段階電離を扱う頻度が高いため、過去問でよく対策しておきましょう。なお、医学に関わる問題が見られる点も特徴的ですが、事前にこうした知識を身に付けることはナンセンスです。説明文に対する読解力と、知識を応用する力を養うことに専念すれば十分です。
【第3問】
有機化合物の構造決定が必出です。ただし難易度は高く、アルケンの付加反応やベンゼンの誘導体の反応といった基礎知識を応用して、複雑な構造の化学物質の構造を特定しなければなりません。加えて、有機化合物の検出反応や異性体の数について問われることもあるため、理解を深めておきましょう。こちらでも医薬品と絡めた説明文が見られることもありましたが、第2問と同じく気にする必要はありません。
お勧めの京都府立医科大学の化学の対策方法
最後にこれまでの内容から、京都府立医科大学の化学の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。
高難度の試験に立ち向かうためには、念入りに準備をしなければなりません。とはいえ最初から難しい問題でトレーニングをすればよいというわけではなく、計画的にステップアップしていくことを意識してください。そこで10月までの基礎を固める時期、センター試験までの実践力を高める時期、第二学力試験までのラストスパートの時期の3つに分けて考えてみましょう。
まず10月までの基礎固めでは、化学のパターン問題の解法の修得を目指してください。もちろん化学の基本知識の暗記もこの時期にできる限り終えます。試験本番の融合問題は医学部受験生に教科書を超えた知識を知っていることを求めているのではなく、説明文を読んで理解する読解力やそれを応用する総合力を試すものです。そして、読解力・総合力を支えるのが基本知識であるということを忘れないようにしましょう。
この時期の勉強におススメの問題集は、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。単元ごとにパターン問題が収載されており、典型的な解法を身に付けるのに最適な一冊です。分からない問題がなくなるまで、何度も繰り返し取り組みましょう。
また、本書の特徴は、「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいので、是非参考にしてください。
ただし注意しなければならないのが、優れた問題集であるがゆえに問題のテーマが明確であり、読解力や総合力まで養成することはできないという点です。そこで大切なのが次のステップで、入試に対応できる実戦的な力を付けることです。
こうした力を付けるための期間が、10月以降センター試験までとなります。読解力や総合力の向上のためには、難関大学等の過去問を通して練習するのが最も効率的です。まだ京都府立医科大学の過去問をバリバリこなす必要はありませんが、大学入試の過去問を載せている問題集を活用して実力アップを図ってください。
実戦力を磨くのには、『化学の新演習』(卜部吉*庸)が役に立ちます。この問題集は前述の重要問題集に比べ、より読解力や総合力を問われるものが中心にまとめられています。理解できない問題があれば、教科書や重要問題集に立ち戻って苦手を作らない勉強を心掛けましょう。
なお一般的な問題集の効率的な使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、ご一読いただければ幸いです。
最後にセンター試験が終わったら、ラストスパートです。具体的に行っていただきたいのが、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集を用いた苦手分野の克服
の3つです。
過去問分析は残り約1カ月半で何を勉強するかを決定するうえで、非常に重要な役割を果たします。過去5年分程度でよいので、ざっと目を通してください。これによって出題形式や頻出単元が見えてきます。
過去問分析が済んだら、実際に問題を解いてみてください。この時、徹底していただきたいのが、時間を計って本番と同じ条件下で実施することです。冒頭でもお伝えしましたが、京都府立医科大学の化学は時間との勝負です。時間配分や問題の解き進め方を練習できるのは、時間に制限を加える以外には不可能です。各年度とも貴重な練習材料となるため、無駄にならないように意識してチャレンジしていきましょう。
同時に苦手分野の克服にも取り組んでください。化学はどうしても暗記事項が多く、手薄になっている分野もあるはずです。過去問分析で出題傾向が掴めているはずなので、自身が苦手でかつ出題頻度の高い分野から優先的に手を付けていきましょう。
まとめ
京都府立医科大学の化学の傾向と対策法のポイントは、
①共通テストの英語の配点比率の変更および小論文の追加に注意
②大問3つで構成され、答案には導出過程も求められるものもある
③制限時間は2科目で150分だが、時間的余裕はない
④長い説明文を理解する読解力や融合問題に対応する総合力が必要
⑤目標は200点中100点
⑥大問ごとの出題傾向は
【第1問】周期表と元素の性質、工業的製法
【第2問】理論化学の計算問題、二段階電離
【第3問】有機化合物の構造決定
⑦10月までは基礎固めとして、パターン問題の解法を修得する
⑧センター試験までは、読解力や総合力を向上させる
⑨センター試験以降は、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集を用いた苦手分野の克服
を行う
の9つです。
京都府立医科大学の入試では、これまで見たことのない実験や公式を目にする可能性があります。たとえすぐに理解できなくても、学んできた知識を応用すれば答えにたどり着けるはずです。努力を続けてきた自分を信じて、落ち着いて問題と向き合いましょう!!
本記事内で登場した過去のオススメ記事
「京都府立医科大学の物理の傾向と対策」
「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
京都府立医科大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策
こちらのページで過去問を無料で閲覧できます
また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
京都府立医科大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)
『化学の新演習』(卜部吉*庸)
*土に口
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