福井大学医学部の化学の傾向と対策
先日の福井大学医学部の数学についての記事で、いかに標準的な問題が解けるかどうかが合格のためのポイントであるとお伝えしました。これは化学でも同様のことが言えます。
本日は、その福井大学医学部の化学について、傾向と対策法を紹介します。
福井大学医学部の化学の試験形式・配点は?
最初に、福井大学医学部の試験形式をまとめます。
医学部受験は大学によって特色が様々なので、福井大学医学部の受験を考えている方は、是非参考にしてください。
福井大学医学部の入試形式には、前期一般入試(55名)、後期一般入試(25名)および推薦入試(30名)に分かれています(カッコ内は募集人員)。本記事では最も受験人数の多い前期一般入試について扱います。
他の国立医学部と同様に、福井大学医学部においても前期一般入試はセンター試験と二次試験を受けて、その総合点で合否が決まります。各試験の科目ごとの点数配分は、
【センター】国語:200点 社会:100点 数学:100点×2 理科:100点×2 英語:200点
【二次試験】数学:200点 理科:100点×2 英語:200点 面接:100点
であり、センター試験の点数の圧縮等の調整はありません。
つまり、センター試験が900点、二次試験が700点の合計1600点満点で計算が行われます。このセンター試験と二次試験の配点は大学ごとに異なっており、医学部受験の志望校選びにおいて非常に大きな意味を持つものです。
他の大学と比較すると、全体に占めるセンター試験の比率がやや高いため、センター試験の苦手な受験生には不利に働きますが、二次試験の配点からすると逆転も十分な可能な配点です。センター試験で高得点を取り、そのまま逃げ切るのが基本的な戦略ですが、仮にセンター試験で多少失敗しても二次試験で高得点が狙える場合は、一発逆転にかけて出願するのもよいでしょう。
その中で理科については、物理基礎・物理、化学基礎・化学、生物基礎・生物の3科目から2科目を選択することになります。制限時間は理科2科目に対して120分なので、1科目当たりおよそ60分かけられることになります。
さらに化学について見ていきましょう。
化学ではここ数年、大問数の変動があり、2018年度、2017年度、2014年度は2題、2016年度、2015年度は3題で構成されていました。今後どのような形で落ち着くか、あるいは年度によって変動が続くのか、といった予想は難しいところです。
問題内容は、理論化学、無機化学、あるいはこれらの融合問題、そして有機化学からそれなりにバランスよく出題されています。しかし、近年は無機化学が必ず1題は出されており、重要度が上がってきているといえます。
解答形式については、用語や化学式を答えるものや、導出過程を示しながら計算をするもの等があります。福井大学医学部で特徴的なのが、論述やグラフの描図の出題頻度が高い点です。とりわけ論述問題は毎年のように出題されており、2018年度には100字以内の長めの論述問題が出されました。
全体として難易度は標準的で、理論化学の誘導も非常に丁寧です。ただし、まれに難問も紛れており、論述問題や描図問題があったり、計算問題もほとんど導出過程を求められるようになったりしているため、解答作成に時間が取られる点には要注意です。
目標点をあらかじめ明確にし、問題を解く順番等に気を付けながら問題を解き進めることが重要です。
福井大学医学部の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
それでは福井大学医学部の化学の目標点は、何点にするのがよいでしょうか?
過去の合格最低点および難易度から考えてみましょう。
福井大学医学部の合格最低点は、センター試験と二次試験の合計の1600点満点で、
2018年度:1162点 2017年度:1197点 2016年度:1177点 2015:1182点
となっています。このことから、1200点以上得点できていれば、合格圏といえます。
ここでセンター試験において780点(約87%)取れたと仮定すると、二次試験では700点中420点(60%)が必要です。
科目ごとの難易度も踏まえて計算すると、
数学:130点 理科2科目:120点 英語:110点 面接:60点
を目標とするのが良いでしょう。
理科は2科目で120点、すなわちそれぞれで得意不得意に大きな差がなければ、100点中60点が目標点となります。難易度から考えるとそれほど困難な目標ではありませんが、医学部受験生であれば高得点帯の勝負になるため、1つのミスが命取りになるということは忘れないでください。
福井大学医学部の化学の出題傾向は?
続いて、福井大学医学部の化学の出題傾向を見ていきましょう。
理論化学、無機化学、有機化学それぞれについて、詳細を以下でまとめます。
【理論化学】
理論化学あるいは無機化学との融合問題は、ほぼ毎年出されています。頻出のテーマは電離平衡や化学平衡ですが、問題自体は標準的な問題集で見られるような典型的な内容が多いです。また、一般的に理論化学では計算問題がメインの問題になりますが、福井大学医学部では現象の理解や定性的な考察ができるかどうかに重きが置かれているといえます。例えば、2018年度には稀薄溶液のモル凝固点降下に関する論述や、2017年度にはハーバー・ボッシュ法において様々な条件下で平衡が移動した際のアンモニア生成率の時間変化をグラフ化させる問題が出されています。とはいえ、言うまでもありませんが、計算問題も必ず出題されるため、標準的な問題については対応できるように準備することは欠かせません。
【無機化学】
無機化学のみならず有機化学にも言えることですが、化学物質の合成を題材とした問題が頻出です。無機化学では主に各種工業的製法が重要になります。アンモニアソーダ法やオストワルト法のような工業的製法については、合成手順をすべて書けることはもとより、関連知識も細かいところまで押さえておきましょう。2017年度にはアンモニアソーダ法において、原料である石灰石の使用量を最小限にする工夫を答えさせるといった、あまりなじみのない問題も見られました。併せて金属イオンの性質に関する知識もよく問われます。沈殿のペア、錯イオンの生成反応、陽イオン系統分離などは、要対策分野です。
【有機化学】
上述のとおり、有機化合物の合成に関する問題が頻出です。実験によるアセチレンの合成や、ベンゼンからのアセチルサリチル酸の誘導といった実験手順は押さえておくべきです。有機化学でも幅広い知識が求められており、各物質の合成手順を化学式として書けるだけでなく、それぞれの作業の注意点や反応に用いられる触媒についても、正確に暗記しておく必要があります。加えて、アミノ酸の性質に関する問題もよく見られます。タンパク質の検出反応やアミノ酸の等電点といった典型問題は必ず解けるようにしておきましょう。2014年度にはソフトレーザーイオン化法によるアミノ酸配列の決定について、説明を読みながらその場での思考を要する問題も出されています。誰もが初めて見るような問題の出題可能性があるということも、頭の片隅に入れておいてください。ちなみに、医学部受験で定番の有機化合物の構造決定の問題は、福井大学では出題頻度は高くありません。
お勧めの福井大学医学部の化学の対策方法
最後に以上を踏まえて、具体的にどのように対策を進めればよいかをお伝えします。
まずセンター試験までは、網羅的に化学の全ての範囲の標準問題を解けるようになることを目的として勉強しましょう。福井大学医学部の化学は、典型的な問題がほとんどなので、難問を解けるようになることは重要ではありません。パターン問題が出たら即座に反応できるようになってください。
お勧めの問題集は、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。こちらは高校でも傍用問題集として使用されるような問題集ですが、内容は充実しており典型問題をかなり網羅しています。福井大学医学部の化学への対策としては、重要問題集で分からない問題がなくなるまで繰り返し取り組むのが効果的です。
より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
このとき同時に特に意識していただきたいのが、正確な内容の暗記です。
福井医科大学では無機化学や有機化学では、知識が得点に直結する設問が多いです。裏を返せばここで点を落としていては、医学部受験の高いハードルを越えるのには心もとないと言わざるを得ません。学校・予備校の授業や問題演習を通して、重要と感じた暗記事項に関しては、自身でまとめて何度も見直せるようにしておくのも良いでしょう。
例えばベンゼンの誘導体はたくさんあり、また複数の合成経路のあるものもありますが、触媒も含めてその流れを図に表しておくと暗記しやすいです。その他の工業的製法や化学物質の合成の実験手順も、検定教科書に載っているものについてはこの時期に整理して、直前期にまとめて見直せるようにしておくと便利です。
次にセンター試験終了後からは、二次試験に向けた勉強を始めましょう。
実際にすべきことは、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・暗記事項の復習
・問題集による苦手分野の強化
の4つです。
過去問の分析では、どのような問題が出るか、難易度はどの程度か、といったことを確認してください。そうすれば、残り約2カ月で自分に何が足りないか明確になるはずです。
そのあとは実際に過去問にチャレンジしましょう。その際、必ず時間を計り本番を意識して取り組んでください。福井大学医学部の化学は、論述や描図、導出過程の記述等もあり、時間的に余裕があるとは言えません。どうすれば効率よく目標点を取れるかを考えながら、問題を解く順番などに気を配りながら問題を解く練習も大切です。
同時並行で、暗記事項の復習及び問題集による苦手分野の強化をしてください。
暗記事項については、本記事でも重要ポイントをお伝えしているので、それらを参考になるべく早い時期にまとめておきましょう。そうすれば改めてポイントを教科書から探す手間が省け、落ち着いて復習できます。ただし、福井大学医学部では細かい知識も求められるため、不安なテーマは再度検定教科書を見直すといった作業も丁寧に行ってください。
問題集による苦手分野の強化は、これまで勉強してきた中で苦手でかつ二次試験で出題される可能性のあるものを中心に復習すれば、高い効果が見込めます。
まとめ
福井大学医学部の化学の傾向と対策法のポイントは、
①理科2科目に対して制限時間は120分
②化学は大問2題あるいは3題で構成される
③理論化学、無機化学、融合問題、有機化学からバランスよく出題されている
④論述や描図問題が頻出
⑤目標点は100点中60点
⑥出題傾向は、
【理論化学】電離平衡、化学平衡、定性的な理解が重要
【無機化学】工業的製法、金属イオンの性質、細かい知識が求められる
【有機化学】有機化合物の合成法、アミノ酸、幅広い知識が必要
⑦センター試験までは、パターン問題が解けるようになることを目的として勉強する
⑧センター試験終了後は、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・暗記事項の復習
・問題集による苦手分野の強化
を行う
の8つです。
福井大学医学部の化学では、確実な知識を持ち合わせていることで、得点できる設問の比重が多いです。しかしながら、かなり細かい知識が問われる場合もあるため、計算問題、論述問題でもきちんと得点できるよう、基礎力を固めて本番に臨みましょう!!
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「福井大学医学部数学の傾向と対策」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
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また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
福井大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)
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