神戸大学医学部の化学の傾向と対策
先日、神戸大学医学部の物理の記事の中で、物理では標準的な問題が中心であるとお伝えしました。一方で、化学は物理と比べるとやや難易度が上がります。
とはいえ、医学部受験では化学でも一定以上の点数が必要です。本日は、その神戸大学医学部の化学について、傾向と具体的な対策法を紹介します。
神戸大学医学部の化学の試験形式・配点は?
はじめに神戸大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
神戸大学医学部は最近まで、センター試験における文系科目の配点が理系学部としては圧倒的に高く、医学部受験の業界でも異色を放つ存在として有名でした。そのため、理系科目が苦手でも医学部に合格したい受験生に非常に人気の大学でした。
ところが、平成29年度から大きく配点が変わっており、求める生徒像も変化したといってもよいでしょう。もし少し古い情報をもとに神戸大学医学部の受験を考えていた方がいらっしゃれば、以下をお読みいただき情報のアップデートをしてください。
神戸大学医学部の入試制度には前期日程のみの一般入試(92名)、AO入試(10名)、推薦入試(10名)等が存在します(カッコ内は2019年度の募集人員)。本記事では最も受験人数の多い一般入試について扱います。
センター試験と二次試験の各科目の配点は、
【センター】国語:80点 社会:40点 数学:40点×2 理科:40点×2 英語:80点
【二次試験】数学:150点 理科:75点×2 英語:150点
であり、センター試験が360点、二次試験が450点の計810点満点の中で合否が決まります。面接についても2016年度までは点数化されていましたが、2017年度以降は点数化されず、「医師及び医学研究者になる適正に大きく欠けると判断された場合は、筆記試験の得点にかかわらず不合格と」するとされています。
ご覧いただいたとおり、文系重視からバランス型の点数配分に変わっている点は、必ず押さえておいてください。
理科に関しては、物理・化学・生物の中から2科目を選択します。それら2科目に対して制限時間は120分とされており、1科目当たりおよそ60分かけられることになります。
そのうち化学は、大問4つで構成され、それぞれに5問前後の小問が与えられます。基本的に大問1つで1テーマを扱いますが、まれに中問に分かれて同単元の2つのテーマが出される場合もあります。
解答の形式は、空所に当てはまる単語や数字、化学反応式や構造式を答えるもの等、記述式が中心です。ただし、計算問題は導出過程を求められることもある点に注意しましょう。また、論述問題もよく見られます。2018年度は出題がなかったものの、それ以前は毎年のように出されています。
他にも神戸大学医学部の化学で特徴的なのが、設問の答え方に関する指示が細かいことが挙げられます。有効数字は何桁か、構造式と分子式のいずれで解答するのか、といったことを、きちんと答え方が指示に従っているかを確認してください。このような部分でミスして失点してしまっては、悔やんでも悔やみきれません。
特に有効数字については、概念や処理方法が身についていない方は、教科書等で理解を深めておいてください。
難易度については、標準的なものがメインですが、問題によってはやや難しいものも散見されます。見慣れない状況設定の大問がある場合は、その他の問題では確実に得点を伸ばし、残った時間で誘導に沿って少しずつ解き進めるといった戦略も必要になるでしょう。
神戸大学医学部の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、神戸大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、化学では何点を取ればよいか考えてみます。
神戸大学医学部の合格最低点は、配点比率の変わった2017年度以降は、
2018年度:634.080点 2017年度:616.640点
となっています。そこで、810点満点で650点(約80%)取れれば合格圏内といえます。
ちなみに2017年度以前の合格最低点は、850点満点で、
2016年度:678.308点 2015年度:678.358点
となっており、こちらでも8割得点(680点)できていれば合格することができます。
このとき、センター試験で360点中315点(87.5%)取れたと仮定すると、二次試験では450点中335点(約74%)得点しなければなりません。
他の科目の難易度も考慮すると、それぞれ、
数学:120点 理科2科目:120点 英語:115点
とするのがオーソドックスな戦略となるでしょう。
理科は2科目で120点ですが、得意不得意の差が大きくなければ、60点ずつと考えていただいて構いません。冒頭で物理と比較すると化学は難易度が上がるとお伝えしましたが、やはり医学部受験生としては8割は欲しいところです。
問題の特性を詳細に分析し、適切な戦略を立てていけば、目標に到達することはできます。ぜひ以下を参考に勉強を進めてください。
神戸大学医学部の化学の出題傾向は?
さて、神戸大学医学部の化学では、どのような問題が出されるのでしょうか?出題傾向を見ていきましょう。
大問4つ中、2つは理論化学、無機化学あるいはその融合問題から、残りの2つは有機化学からの出題となります。4題あるうち半分の2題が有機化学をテーマとする問題であることから、有機化学の重要度が高いといえます。
単元ごとの頻出テーマは次のとおりです。
【理論化学】
理論化学は幅広いテーマからの出題があります。裏を返せば、ここ1、2年で出されたテーマからの出題可能性は低いため、二次試験直前期はそれ以外を中心に勉強するといったメリハリはつけやすいでしょう。あえて挙げるとすると、気体の圧力に注目する大問が多いです。気体の状態方程式、浸透圧、ルシャトリエの原理等は、気体の圧力との相性のよい論点であるため、考え方や典型問題の解法はマスターして本番に臨んでください。
【無機化学】
沈殿を作るイオンの組み合わせについての問題が頻出です。沈殿を生成するペアはもちろんのこと、そこから進んで錯イオンの知識も関連付けて暗記しましょう。錯イオンは、構造式だけではなく、どのような形を持つかといった問いの出題歴もあります。加えて、化学物質の工業的製法や気体の製法とその性質に関する問題も要対策です。神戸大学医学部の化学全般として、化学反応式を書いたうえで量的関係を計算する設問の比重が大きいです。この点、無機化学では登場する化学反応式の数が多いため、しっかりと検定教科書に載っているものは一通り暗記しておきましょう。
【有機化学】
有機化学は上述のとおり2題出題されますが、毎年、1つは構造決定、もう1つは高分子化合物に関する大問です。構造決定については、元素分析を用いて分子量を求める→構造式を求める、という流れの問題が頻出です。そして構造式を答える際には、不斉炭素も明らかにしなければならない設問もよく見られます。環状構造を持つ化合物に含まれる不斉炭素や、反応により新たに発生する不斉炭素といった、見落としやすい場面に注意しましょう。高分子はテーマとしては、天然高分子化合物と合成高分子化合物に分かれますが、圧倒的に天然高分子化合物の頻出度が高いです。アミノ酸やタンパク質を重点的に勉強すると良いでしょう。
お勧めの神戸大学医学部の化学の対策方法
最後に以上を踏まえた具体的な対策法をお伝えします。
まずセンター試験までは、化学の基礎知識を固めること、及び典型問題の解法を身に付けることを目標としてください。
化学の基礎知識といっても中身はたくさんありますが、神戸大学医学部の化学では、化学法則や工業的製法の名前が直接的に聞かれることがあります。暗記事項が得点に直結するのは良いことですが、もし覚えていないと絶対に点が取れない部分でもあります。二次試験直前期に改めて検定教科書で一つ一つ復習する余裕はないので、早い時期に暗記事項は完成に近づけておきましょう。
典型問題の解法を身に付けるには、標準的な問題集で練習を繰り返すことが効率的です。この目的達成のためにおススメの問題集は、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。問題を見たら解法が思い浮かぶまで、間違えた問題は何度も取り組みましょう。
『化学重要問題集-化学基礎・化学』の詳細は、『化学重要問題集』の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方に記載しておりますので、合わせて参考にしてください。
より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
センター試験が終わったら、今度は二次試験の問題への対応力の強化に努めましょう。
具体的には、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による苦手分野の強化
の3つを行ってください。
過去問の分析により、自分のウィークポイントは何か、出題が予想されるテーマは何か、といったことが明確になってきます。残り2カ月を有意義に過ごすためにも、勉強を始める前にしっかりと分析の時間を取りましょう。
分析が済んだら、いよいよ過去問に実際に挑戦してみてください。
このとき意識していただきたいのが、
・制限時間内に問題を目標点に到達できているか
・設問の指示に対して適切な答え方ができているか
の2点です。
神戸大学医学部の化学は、やや難易度の高い問題も紛れているため、そのような大問に時間をかけすぎると制限時間内にすべての問題を解ききることはできません。8割を超えるために、どの問題から解くべきか、難しい問題はどこまで解ければよいかをよく考えながら、戦略的に問題と対峙する姿勢を忘れないでください。
さらに既にお伝えしたように、設問で細かい指示が与えられる場合が多々あります。有効数字の桁数や構造式か分子式かといったポイントを見落とさないようにしてください。こういった感覚は、一度、身をもって失敗した方が印象に残る場合もあるかもしれません。いずれにせよ、本番ではミスをしないように、意識的に過去問に取り組みましょう。医学部受験では、小さな失点が結果に大きな影響を及ぼします。
同時並行で、問題集を使って最後の総復習をしましょう。残りの期間で全範囲をこなすのは不可能なので、自身の苦手分野や出題の予想されるテーマから優先的に手を付けてください。もし疑問が浮かんだり、暗記が不十分な論点があったりする場合は、再び検定教科書に立ち戻ることも大切です。穴を埋める最後のチャンスなので、地道に弱点を克服していってください。
まとめ
神戸大学医学部の化学の傾向と対策法のポイントは、
①理科2科目に対して、制限時間は120分
②物理は大問4つで構成され、5問前後の小問が与えられる
③設問の指示に適切に答えられているか注意する
④標準的な問題がメインであるが、一部にやや難しい問題も含まれる
⑤目標点は75点中60点
⑥理論化学、無機化学あるいはその融合問題から2題、有機化学から2題出題される
⑦センター試験までは、化学の基礎知識固め、及び典型問題の解法の修得を目的に勉強する
⑧センター試験終了後は、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による苦手分野の強化
を行う
の8つです。
神戸大学医学部の化学は、ミスを誘発するような設問が数多く見られます。合格のためには、本番でいかに焦らず正確に解答できるかがカギです。そして焦りを打ち消すのに必要なのが、それまでに培ってきた確かな努力を根拠とする自信です。自分を信じて日々進歩していきましょう!!
本記事内で登場した過去のオススメ記事
「神戸大学医学部の物理の傾向と対策」
「『化学重要問題集』の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
神戸大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策
こちらのページで過去問を無料で閲覧できます
また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
神戸大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)
コメント..
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いつも当サイトをご覧くださり、誠にありがとうございます。
医学部受験の教科書の石戸です。記事を参考にして頂ているとの事。お役に立てて大変嬉しく思っております。
また、三重大学の入試の特徴の記事をご希望とのこと承知致しました。
次回の大学別対策は、予定を変更して、三重大学医学部を優先的に執筆の上、
掲載させて頂きます。
12月末までには全て掲載させて頂けると思います。掲載記事がぶどう様の志望校選びに役立ち、
効果的な学習に結びつくこと心より祈っております。
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こんにちは。各大学の傾向の記事、参考にさせていだだいています。現在志望校選びに迷っているのですが、三重大学の入試の特徴も記事にしていただけませんでしょうか。よろしくお願いします。