東京慈恵医科大学の化学の傾向と対策

東京慈恵会医科大学化学

 先日の「東京慈恵医科大学の物理の傾向と対策」に内で、東京慈恵医科大学の物理では教科書に載っていない教育課程外のテーマからの出題もあることをお伝えしました。同じく化学においても問題の説明を読み、その場で理解して設問を解いていく力が必要です。

 本日はその東京慈恵科大学の化学について、これまでの傾向と具体的な対策法を紹介します。

東京慈恵医科大学の化学の試験形式・配点は?

はじめに東京慈恵医科大学の入試制度について見ていきましょう。

 

 東京慈恵医科大学医学部医学科の入試は一般選抜のみであり、募集人員は一般枠が105名、東京都地域枠が5名の計110名となっています。いずれの枠も同一の試験により合格者が決まりますが、本記事内の合格最低点等の数値は一般枠のものである点にご留意ください。

 

 一般選抜は私立医学部受験でよく見られる二段階選抜により行われ、各試験で課される科目と配点は、

【一次試験】数学:100点 理科:100点×2 英語:100点

【二次試験】面接:段階評価 小論文:段階評価

となっています。二次試験に進めるのは一次の筆記試験の合格者のみで、二次試験の結果は点数化されません。

 

 東京慈恵医科大学医学部医学科の面接はMMI(multiple mini interview)という特徴的な形式を採用しており、5つの課題を通して5名の評価者から面接を受けることになります。本記事では細かくは触れませんが、受験を考えている方は情報を集めておきましょう。

 

 ちなみに冒頭で私立の医学部受験では倍率が跳ね上がるとお伝えしましたが、本大学の2019年度の入試結果を見てみると、

【受験者】1858名→【一次試験合格者】489名→【二次試験合格者】246名

となっています。募集人員110名に対する受験者数の倍率を考えると17倍程度になりますが、実際の合格者との比較をするとおよそ8倍と、私立医学部としては比較的落ち着いた倍率です。これは国公立や他の私立医学部との併願をする受験生への対応として合格者を多めに出していることや、入試問題の難易度が高いことが原因であると考えられます。

 

 その中で理科については、物理、化学、生物の中から2科目を選択して解答します。制限時間は理科2科目に対して120分が与えられるため、1科目あたりおよそ60分割くことができます。

 

 化学に関しては大問4つで構成され、小問の誘導に従って解き進めていく形になります。はじめにお伝えしたとおり、教育課程外の内容を扱う大問も多く、問題文中で説明が加えられるため素早くかつ確実に理解していかなければなりません。

 

 出題形式は単語や数値の空所補充、適切な記号を選ぶもの、化学反応式や構造式を記すもの、計算問題、論述問題等、バリエーションに富んでいます。気を付けなければならないのが、特に計算問題においては適切な桁数で答えなければならない点です。各設問では有効数字の指示がないことがほとんどで、大問が始まる前の注意書きに「特に指示がなければ、問題文にある条件をよく読んで適切な桁数で解答すること」と明記されています。数値を答える際は、必ず適切な桁数になっているかを確認するクセを付けましょう。

 

 難易度に関しては教育課程外のテーマも扱われることもあり、非常に高難度といえます。しかしながら教育課程外の内容を自主的に勉強していることを要求されているのではなく、医学部受験生として身に付けておくべき高校で学習する範囲内の知識をもとに、問題文の説明の意味を掴んだうえでそれらを使いこなせるか否かが問われている点は押さえておきましょう。確かにマニアックな知識を要する問題も見られますが、まずは基礎を深く理解した後に過去問やハイレベルな問題集で演習を積むのがオーソドックスな対策となります。

東京慈恵医科大学の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?

続いて、東京慈恵医科大学の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、化学では何点を取ればよいか考えてみます。

 

東京慈恵医科大学の合格最低点は、点数化される一次試験の400点満点中では、

平成31年度:207点 平成30年度:210点 平成29年度:179点 平成28年度:246点

となっています。これらの平均を取ると210.5点となるため、年度によってばらつきが大きいものの、ひとまずは過去問でコンスタントに220点(55%)を取れるように準備するようにしましょう。

 

 これを踏まえて各科目の難易度も考慮してそれぞれの目標点を設定すると、

数学:50点 理科:115点 英語:55点

とするのがオーソドックスな戦略となります。

 

 理科は2科目で200点満点中115点(57.5%)が必要となりますが、理科が苦手な受験生にとっては簡単なハードルではありません。選択する2科目のうち1つは安定して6割以上を取れるように準備しておき、苦手な科目であっても5割はキープしたいところです。

 

 もし化学で得点を稼ぎたいのであれば、有機化学の強化は欠かせません。後ほど詳しく紹介しますが、東京慈恵医科大学の化学では4題中2題が有機化学から出題されるからです。もう1つの選択科目との間に大きく得手不得手の差がないのであれば、有機化学を得意分野にすることが理科で得点を伸ばすための近道といえます。

東京慈恵医科大学の化学の出題傾向は?

それでは、東京慈恵医科大学の化学では、どのような問題が出されるのでしょうか?

 以下に理論化学、無機化学、有機化学の各単元について頻出テーマをまとめていきます。

 

【理論化学】

 以前は4題中2題が理論化学からの出題でしたが、近年は1題のみの場合が多くなっています。重点的に対策しておかなければならないのが、熱化学方程式、酸化還元反応、化学平衡の3つです。熱化学方程式ではエネルギー図を描いて考えるようにしてください。複数の式を活用して目的の熱量を算出しますが、頭の中だけで処理するのはミスのもとです。ただし与えられる熱化学方程式が増えるとエネルギー図も煩雑となってくるため、慣れてきたら必要となる式はどれかを見極める能力も養いましょう。

 

【無機化学】

 理論化学の出題が減った代わりに、平成29年度以降は無機化学を主題とする大問が出されるようになりました。医学部の試験ならではの生体内における金属イオンのはたらきや、薬剤に関する問題がよく見られます。もちろんこうした生体や薬剤の知識そのものを問うわけではなく、高校の教育課程内の知識を応用することで正答を導ける問題なので、見かけに騙されないようにしてください。無機化学では錯イオンに関連する設問の頻出度が高いので、代表的な錯イオンの構造はもちろん、その結合様式や原子の酸化数といった付随知識についても理解を深めておきましょう。

 

【有機化学】

 既にお伝えしているように、東京慈恵医科大学では有機化学が全体の半分を占めます。大問3では生体で合成される化学物質や薬剤の合成についての総合問題、あるいは有機化合物の構造決定が、大問4では高分子化合物が頻出です。無機化学の大問と同様に生体や薬剤をテーマとする問題は、一般的な教科書や問題集で身に付けた力を発展させて解くことになりますが、有機化学においては官能基のはたらきに着目するのがポイントです。他の反応で官能基がどのように結合しているかといったことを覚えていれば、初見の化合物であっても構造を予測することが可能です。

 

 さて、以上では便宜上、単元ごとに頻出テーマをまとめましたが、実際には一つの大問で多様な内容が問われるのが本大学の特徴でもあります。各分野の典型問題が解けるようになったら、こうした融合問題への対応力も高めていくことも大事であることを最後に付け加えて次の対策法の紹介に移らせていただきます。

お勧めの東京慈恵医科大学の化学の対策方法

最後にこれまでの内容から、東京慈恵医科大学の化学の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。

 

 通常、一次試験は2月上旬に実施されます。試験日から逆算して、物理の全単元を網羅的に勉強する11月中旬までと、実戦的演習に力を注ぐ直前期に分けると、勉強内容にメリハリをつけることができます。

 

 11月中旬までの網羅的な勉強では、頻出テーマ等に偏ることなく、全単元の問題を一通り解けるようになることを目的に勉強してください。さらに網羅的な勉強においてもステップを2つに分け、8月頃までに典型問題の解法を身に付け終わり、それ以降はより難しい問題集で実力の底上げを図るのが良いでしょう。

 

 典型問題の解法の修得におススメの問題集は、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。豊富な種類の問題が収載されており、この1冊を仕上げれば基礎は完璧です。分からない問題がなくなるまで繰り返し取り組んでください。また本書の特徴は、「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方に詳しいので、是非参考にしてください。

 

 基礎が固まった後のステップアップには、『化学の新演習』(卜部吉庸が役に立ちます。大学の過去問を出典元としており、「重要問題集」よりもさらに実戦的な問題で練習をすることができます。知識をインプットすることと、それらを応用する能力はまた別物なので、しっかりこの時期に問題を「解く」力を身に付けましょう。

 

なお一般的な問題集の効率的な使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、ご一読いただければ幸いです。

 

 網羅的な勉強が終了する11月中旬以降は、一次試験に向けた対策にシフトしてください。具体的に行っていただきたいのが、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集による苦手分野の強化

の3つです。

 

 過去問分析は問題の出題形式や、設問数に着目して、過去5年度程度にざっと目を通してください。他にもどういったテーマからの出題が多いかについて、自身の得意分野、不得意分野と照らし合わせながら確認することで、残りの1カ月半の方針を決める判断材料とすることもできます。大切な作業なのでやみくもに過去問を解くのではなく、時間を割いて分析を行いましょう。

 

 過去問分析が終わったら、実際に問題にチャレンジしてください。この時忘れないでいただきたいのが、時間を計って取り組むことです。化学に使うことができるのはおよそ60分ですが、問題の難易度を考慮すると時間内にすべての設問を解ききるというよりも、いかに素早く解けそうな問題を見抜けるかがカギとなります。制限時間をフル活用してどのように解いていけば、最も良い得点が取れるかを意識しながら演習をしましょう。

 

 同時並行で、これまでの勉強で克服できなかった苦手分野の強化に努めてください。とはいえ全ての不得意分野の対策をする必要性はありません。不安な単元の数にもよりますが、残り僅かの期間に広く浅く手を出すのはかえって非効率的といえます。過去問分析の結果をもとにして、得点に直結しやすいテーマから優先順位を付けて対策をしていきましょう。

まとめ

東京慈恵医科大学の化学の傾向と対策法のポイントは、

①理科2科目に対して制限時間は120分

②化学は大問4つで構成され、小問の誘導に従って解き進めていく

③出題形式はバリエーション豊富で、計算問題では適切な桁数で答えているか確認する

④難易度は非常に高く、問題の説明を理解し使いこなすことが求められる

⑤目標は化学が得意であれば100点中60点以上、苦手でも50点以上をキープする

⑥出題傾向は、

【理論化学】熱化学方程式(エネルギー図)、酸化還元反応、化学平衡

【無機化学】生体や薬剤をテーマとする問題、錯イオン

【有機化学】生体内の有機化合物や薬剤に関する総合問題、構造決定、高分子化合物

⑦11月中旬までは化学の網羅的な勉強をする

⑧11月中旬以降は、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集による苦手分野の強化

を行う

の8つです。

 

 東京慈恵医科大学の化学は確かに難しい試験ではありますが、目標は満点を取ることではなく目標点を取ることです。本大学では有機化学が重要視されているため、有機化学で点が稼げるようになれば他の医学部受験生をリードすることができます。その他にも何が必要かをいつも自問自答しながら、少しでも得点を伸ばせるように努力を重ねましょう!!

 

 

本記事内で登場した過去のオススメ記事

「東京慈恵医科大学の物理の傾向と対策」

 

「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」

 

「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」

 

東京慈恵医科大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策

 こちらのページで過去問を無料で閲覧できます

 また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、

 ご参考にしてください。

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本記事で登場したお勧めの問題集・参考書

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