近畿大学医学部の英語の傾向と対策
これまでに近畿大学医学部の数学・理科の傾向についての記事の中で、問題の難易度が高く高得点が取りづらいと紹介してきました。入試問題が難しいのは英語についてもいえることで、医学部受験生としても苦戦が強いられることが予想されます。
とはいえ、合格最低点以上の得点ができれば、誰でも合格が与えられるのも大学入試です。本日は近畿大学医学部の英語について、傾向を分析し目標達成に必要となる具体的な対策法を紹介します。
近畿大学医学部の英語の試験形式・配点は?
はじめに近畿大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
近畿大学はいくつかの入試制度を採用していますが、医学部では推薦入試(30名)、前期一般入試(65名)、後期一般入試(5名)、センター試験利用入試(15名)により合格者を選抜します(カッコ内は平成31年度の募集人員)。
本記事では、最も受験者数の多い前期一般入試について取り上げます。
前期一般入試は、私立の医学部受験としては典型的な形式である、二段階選抜制となっています。すなわち、一次試験では数学、理科2科目、英語による学力検査が、二次試験では小論文および面接が課されることになります。
一次試験の各科目の配点は、
数学:100点 理科:100点×2 英語:100点
であり、合計400点満点です。
なお、一次試験の合否は学力検査の成績によって判定し、一次試験の合格者からさらに二次試験の成績および調査書等を総合的に判定して最終合格者が決定されます。小論文は段階評価で点数化されず、面接に関しても募集要項への記載は見られません。
そのうち英語は大問5つで構成され、平成28年度までは90分だったものが、設問数の減少とともに平成29年度以降は制限時間が60分になりました。出題内容のセットは近年、変化は見られず、大問1は単文中の空所補充、大問2は和文英訳、大問3は語句整序、大問4は長文中の空所補充、そして大問5は長文読解です。
解答はすべて選択肢で答えるようになっており、解答用紙はマークシート形式です。マークシートはマークミスが起こりやすく、さらに一か所にミスがあるとその後の解答にも影響を及ぼします。当たり前のことですが、答えをマークシートに記入する際には細心の注意を払いましょう。
平成29年度以降の設問数は42題で、出される長文はさほど長くはありません。論述式の問題もないため、制限時間が短くなったとはいえ、とても時間内に解ききるのは厳しいということはないでしょう。しかしながら、近畿大学医学部の英語で特筆すべきなのが、単語レベルと扱う文章の抽象度の高さです。和文英訳でも日本語の格調の高い文章が扱われるため、どの大問も一筋縄ではいきません。選択式の問題ではありますが、自信をもって答えを選ぶことができる場面は想像以上に少なく、難易度の高い試験といえます。
近畿大学医学部の英語の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、近畿大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、英語では何点を取ればよいか考えてみます。
近畿大学医学部の合格最低点は、配点比率の変わった平成29年度以降は、
平成30年度:227点/400点 平成29年度:217点/400点
となっており、約55%以上あれば合格といえます。
ちなみに、それ以前の合格最低点は、
平成28年度:374点/600点 平成27年度:360点/600点 平成26年度:394点/600点
であり、合格には65%以上が必要となる年度もありました。
平成29年度以降は形式だけでなく、難易度についても線引きをする必要がありそうです。
上記のことから、近畿大学医学部に合格するためには、400点中240点(60%)を目標とするのが良いでしょう。
他の科目の難易度を考慮すると、それぞれ、
数学:60点 理科:125点 英語:55点
を目指すのがオーソドックスな戦略となります。
英語はご覧いただいた通り、受験科目の中でも最も目標点を低く設定しています。これは英語の問題の難易度が高いことに加えて、理系の医学部受験生であれば数学や理科の方が得意であることが多いからです。もちろん英語が得意な方は、60点、70点と目標点を上げて、他の科目に余裕を持たせて戦略を立てるのも良いでしょう。
反対に勉強時間を掛けても英語の成績がなかなか伸びないこともあるかと思います。そのような状況で個別試験が近づき限界を感じた場合は、思い切って理系科目の成績を上げるのに全力を注ぐことをお勧めします。近畿大学医学部の英語は求められるレベルが高く、科目の性質上、直前期に時間を割いたとしても急激に得点がアップする見込みはほぼありません。
端的に申し上げると、他の科目で無理なく目標を立てられるようにするには、英語では最低でも55点は欲しいということです。この点数であれば英語が苦手な方でも、勉強のやり方次第で超えることができるはずです。本記事の内容をもとに、どうすれば得点を伸ばすことができるかを考えてみてください。
近畿大学医学部の英語の出題傾向は?
それでは近畿大学医学部の英語では、どのような問題が出題されるのでしょうか?
大問ごとに、出題内容や設問の様子をまとめていきましょう。
【大問1:単文の空所補充】
大問1では、単文中の1つの空所に当てはまる単語や表現を答える形式の問題が出されます。医学部受験で単文の空所補充と聞くと、文法事項を問われるイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、近畿大学医学部の英語では主に単語力を問われています。すなわち、語形変化や助動詞の使い方等はあまり重要ではなく、単語そのものの意味を知っているかどうかに重きが置かれています。裏を返せば、その単語を知らなければいくら考えても仕方がありません。後程紹介する単語帳をマスターしたうえで、それでも分からない設問については、あまりこだわらずマークだけして他の問題に時間を割くのが賢明でしょう。
【大問2:和文英訳】
和文英訳といっても、自分で論述するのではなく、こちらも正しい選択肢を選ぶ問題です。和文英訳の選択問題は珍しいですが、要求される単語や表現のレベルが高いことに加えて、扱われる日本語も英語に訳すには格調高い言葉遣いがなされています。例えば、「多岐亡羊」といった四字熟語や、「基調講演」といった日本語のネイティブが聞いても意味が即座に思い浮かびづらい単語が見られます。こういった日本語の英訳には、日本語の原義をよくかみ砕いて言い換え、それに最も近い英訳を選ぶようにしてください。
【大問3:語句整序】
単文中に5か所の空所があり、与えられた単語を並べ替えて埋めて、意味の通る英文を完成させる問題です。大問1や大問2と比較すると、単語力よりも文法の知識が試される問題です。ただし、元の英文の日本語訳は与えられていないため、虫食いだらけの英語の羅列からおおよその意味を掴まなければならいことが、問題の難易度を上げています。なお、5つの空欄のうち、どれを答えとするかは設問によって異なるので、つまらないミスで失点をしないようにしましょう。
【大問4:長文中の空所補充】
長文中の空所補充では単文とは違って、単語そのものの意味を知っているだけではなく、文脈を把握する能力が欠かせません。文章全体の流れや前後の文のつながりから、当てはまる単語がポジティブなものか、強調するような表現か、といった視点を意識しましょう。単語の正確な意味は分からなくても、手掛かりがつかめることもあります。
【大問5:長文読解】
英語の長文を読み、空所補充、同意表現、内容説明、内容正誤等の設問を解いていきます。年度により語句整序や脱文挿入、タイトル設定の問題も出されますが、どれも長文読解では定番の問題です。長文の内容は自然科学に関するものが頻出ですが、社会や文化に関わる内容等、比較的幅広いテーマが扱われます。大問4までは知識が得点に直結する問題がメインですが、大問5は考えれば得点できる可能性が高まるので、できる限り長文読解に時間を残せるように時間配分を行いましょう。
お勧めの近畿大学医学部の英語の対策方法
最後に以上を踏まえた、近畿大学医学部の英語の具体的な対策法をお伝えします。
例年通りであれば、個別試験は1月末に行われるので、それに向けてスケジュールを立ててください。基本的には、11月までは問題集等を使って幅広く英語の基礎力を高めていき、12月以降は個別試験に向けた実戦演習に移ると良いでしょう。
まず11月までに向上させるべき英語の基礎力とは、具体的には単語力、英文法の知識、読解力の3つです。特に近畿大学医学部では、圧倒的に単語の難易度が高く、並大抵の単語力では太刀打ちできません。一方で、単語はいくらやってもきりがなく、現実的にネイティブでない医学部受験生が対応できる範囲には限界もあります。そこで大事になるのが読解力をつけ、大問5で得点を稼ぐことです。
上記のことを意識して、この時期の勉強を進めてください。
単語力の養成には、単語帳の内容を暗記するに尽きますが、おススメなのが『速読英単語 必修編』、『速読英熟語』(Z会出版)です。これらは英単語・熟語を例文を通して学べるだけではなく、派生語や類義語・対義語も併せて掲載されているため、効率よく暗記ができます。
同時に『医師薬系の英単語』(赤本メディカルシリーズ)にも取り組んでください。近畿大学医学部の英語は医学部専門の問題であり、長文で扱われるのも自然科学に偏りがあります。ある程度、専門的な用語を知っていることで、文意を取るのが楽になります。
読解力の実力アップには、『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)を活用すると良いでしょう。毎年、大問5では内容正誤の問題が出されていますが、この手の問題が選択式の問題では最も受験者間で差がつきます。問題集に取り組むときも、内容正誤の答えを選ぶには、必ず文中の根拠となる部分を探し当てることを意識してください。
より詳細な問題集の使い方については、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
英語の総合力を付けて12月に入ったら、実戦演習にチャレンジです。実際に行っていただきたいのが、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・単語や文法知識といった暗記事項の総復習
の3つです。
過去問の分析については、平成29年度以降の変更や問題中で使われている単語のレベル、長文の分量、そして各大問の問題の形式を確認してください。
過去問分析が終わったら、いよいよ近畿大学医学部の英語の過去問にチャレンジです。時間的に追い込まれることはあまりないはずですが、本番をイメージするためにも時間を計って臨んでください。また、手に入ればマークシートを使って、解答の形式にも慣れておくと良いでしょう。
一つ注意していただきたいのが、長文読解についてです。長文読解の問題は語彙・文法の知識問題と異なり、同じ問題に何度も取り組んでも効果は上がりません。むしろ初見の問題にどんどん挑戦し、その後解答・解説と照らし合わせることで読解力がついていきます。そのため、近畿大学医学部の英語の過去問をある程度こなせたら、他の問題形式の似た大学の過去問を用いてできる限り実戦演習を積んでください。
反対に、語彙・文法知識に関しては、反復練習が有効です。これまでに単語帳や文法の問題集で練習してきたことを、再度見直して穴がないか確認していきましょう。
まとめ
近畿大学医学部の英語の傾向と対策法のポイントは、
①大問5つで構成され、制限時間は60分
②解答はすべてマークシート形式
③単語レベルや文章の抽象度が高く、問題の難易度は非常に高い
④目標点は100点中55点
⑤出題内容は、
【大問1】単文中の空所補充
【大問2】和文英訳
【大問3】語句整序
【大問4】長文中の空所補充
【大問5】長文読解
⑥11月までは、単語力、英文法の知識、読解力からなる英語の基礎力を付ける
⑦12月以降は、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・単語や文法知識といった暗記事項の総復習
を行う
の7つです。
繰り返しになりますが、近畿大学医学部の英語はかなり難しく、語彙・文法知識が求められる問題で高得点を狙うのは限界があります。しかし、長文読解では内容正誤問題で必出であり、文章中に必ず根拠があることから、練習次第でコンスタントに得点できるようになるのは想像に難くありません。
あなたにとって近畿大学医学部の英語の弱点はどこかを見極め、そこをとことん攻めていく姿勢で対策をしていきましょう。最後にはこの難敵を退け、是非とも合格を掴み取ってください!!
他の私立医学部受験と同じく、近畿大学医学部の化学では、処理スピードや知識での要求が非常に高いです。とはいえ、一つ一つ苦手をなくしていけば、必ず合格点に到達することは可能です。相手のことをよく知り、自分のことを深く理解すれば、おのずと今すべきことが見えてくるはずです。この記事を参考に、是非合格への道を邁進してください!!
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また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
近畿大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『速読英単語 必修編』
『速読英熟語』(Z会出版)
『医歯薬系の英単語』(赤本メディカルシリーズ)
『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)
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