東海大学医学部の物理の傾向と対策
別記事「東海大学医学部の数学の傾向と対策」では、当大学の入学試験は高得点帯の勝負となるとお伝えしました。しかしながら物理については少々注意が必要です。
本日はその東海大学医学部の物理の、これまでの傾向と具体的な対策法を紹介します。
東海大学医学部の物理の試験形式・配点は?
はじめに東海大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
東海大学医学部の入試には、一般入試(60名)、神奈川県地域枠入試(5名)、静岡県地域枠入試(3名)、大学センター試験利用入試(10名)等の制度が存在します。(カッコ内は令和2年度の募集人員)。本記事では受験者数が最多となる、一般入試について扱うこととします。
一般入試では第一次選考と第二次選考が実施されますが、内容は第一次選考では学科試験、第二次選考では小論文及び面接といった、私立医学部入試では定番の形式です。学科試験で課される科目と配点は、
数学:100点 英語:100点 選択科目(物理・化学・生物から1科目):100点
となっており、第二次選考の結果は点数化されません。ちなみに第二次選考は第一次選考の合格者のみが対象となります。
特徴的なのが試験日は2月2日、あるいは2月3日に固定されており、受験者は受験日を自由に選択することができる点です。両日受験をすることも可能で、この場合は合計点が高得点となった日の結果が自動的に合否判定に採用されます。また、適正な選抜のために各科目の結果採点をもとに、標準偏差を用いて標準化することとなっています。したがって、試験形式や会場の雰囲気に慣れるためにも、可能な限り両日受験をするのが良いでしょう。
その中で物理に関しては平成28年度以降、大問4つで構成されています。制限時間は他の科目と同じく70分です。
出題形式は各大問で1つの設定が与えられ、5題前後の小問に解答していく形です。解答法は平成29年度以降、大問1、2は求めた数式や数値を答える記述式、大問3、4は正しい記号を選ぶ選択式となっています。いずれにしても考え方が合っていても答えが間違っていれば1点ももらえないので、つまらないミスは絶対に避けなければなりません。
冒頭で述べた注意点というのが難易度についてです。どういうことかというと、本大学の入学試験は他の科目では医学部入試としては標準的な問題が中心であるのに対して、物理では計算も複雑で難易度の高い問題が多々見られるのです。そのため物理が得意で他の受験生に大きく差をつけられる自信がない限り、積極的に物理を選択するメリットはないと言わざるを得ないでしょう。
東海大学医学部の物理の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、東海大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、数学では何点を取ればよいか考えてみます。
東海大学医学部の合格最低点は、点数化される第一次選考の300点満点中の得点率で、
平成30年度:82% 平成29年度:84% 平成28年度:83.7% 平成27年度:81%
となっています。つまり例年並みの難易度であれば、300点中255点(85%)得点することができれば合格圏内といえます。
これを踏まえて各科目の難易度も考慮してそれぞれの目標点を設定すると、
数学:85点 英語:85点 選択科目:85点
とするのが平均的な医学部受験生の戦略となります。
ここで読者の皆様の中には「物理は難しいのに数学や英語と同じ目標点というのはおかしいのではないか?」と疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれません。なぜこのような目標設定をしているかというと、物理はあくまでも“選択科目”であるからです。すなわち医学部受験生各人が自信のある科目を選べるため、必然的にその科目が得意な集団内での勝負になってしまうのです。裏を返せば、科目間の得点標準化があるとしても、そもそも物理で85点を取る自信のない方は素直に他の科目を選択することをおススメします。
また試験日程が2日あるため試験問題も2種類存在することになりますが、日によって出題される単元が異なるのも悩ましい点です。具体的な出題傾向等は次の項でまとめますが、不得意な単元からの出題が多い日程に当たる可能性もあるため、できる限り両日受験をするのが望ましいでしょう。
東海大学医学部の物理の出題傾向は?
それでは、東海大学医学部の物理では、どのような問題が出されるのでしょうか?
結論から申し上げると、力学、電磁気は必出であり、残りの2問が波動、熱力学、原子の単元から出題されています。ところが平成30年度の第1日目のように、複合問題のテーマの1つとして力学が出されたものの、メインテーマは波動であるといったように、ほとんどが力学以外の単元から問題が出題される年度もあることは覚えておかなければなりません。そして複合問題自体の出題頻度も高く、日程によっても問われる単元が異なるため、基本的にはどの単元についても対応できる総合力が不可欠になります。
以下では単元ごとの頻出分野をまとめていきますが、上記のことを念頭に置きながらお読みください。
【力学】
力学では力学的エネルギー保存則、運動量保存則といった医学部受験で定番のものに加えて、力のモーメントも重要事項となります。他にも多様なテーマの出題歴があるため、偏りなく難易度の高い問題にも対応できるようにしておきましょう。
【電磁気】
電磁気は毎年度必出であり、点電荷の運動やクーロン力を扱う問題が頻出です。併せて点電荷の作り出す磁場の理論や静電気力による位置エネルギーの理解も深めておかなければなりません。さらに多くの受験生が苦手とする交流回路もよく出されています。不安な場合は早急に対策をしておきましょう。
【波動】
波動で最も重要となるのがドップラー効果です。基本的な問題が出ることは少なく、応用問題として問われることがほとんどです。ドップラー効果の応用問題とは例えば、円運動する音源や斜めに運動する観測者・音源が登場するものです。波の干渉や屈折の法則についても難易度の高い問題の出題歴があるため、各テーマの応用問題を通してしっかりと練習を積んでおきましょう。
【熱力学】
熱力学は典型問題の種類は少ないため、出題された場合は手早く処理できるようにしておく必要があります。特に気体の状態変化に関して、気体の内部エネルギーの変化量や気体のした仕事といった物理量の導出法にはよく慣れておいてください。
【原子】
出題テーマに偏りは見られませんが、原子物理の範囲は現役生にとっては他の単元と比べると学習するタイミングが遅いため、対策が手薄になりがちです。しかし東海大学医学部の物理では決して頻出度は低くありません。力学・電磁気・波動・熱力学については早めに完成させて、直前期に原子物理を強化するというのが、現役生のオーソドックスな勉強法となるでしょう。
お勧めの東海大学医学部の物理の対策方法
最後にこれまでの内容から、東海大学医学部の物理の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。
通常、第一次選考は2月2日と3日に実施されます。そのため、9月までは基礎的な力を養成することに重点を置き、12月中旬までに応用力を付け、それ以降の直前期は個別試験に対応した勉強を行うとメリハリをつけることができます。
9月までの基礎固めの時期には、全単元の標準問題の解法をマスターしてください。もちろん現役生で学校や予備校で全単元の学習が済んでいなければ、授業が終わっている単元までで構いません。基礎ができていない状態で応用問題を解いても全く効果はないので、焦らず土台作りを進めていきましょう。
10月に入ったら基礎が固まった単元の応用力を磨いてください。同時に学習の終了した単元の基礎固め・応用問題演習も行うため、この時期には問題をひたすら解き続けるようになるはずです。また東海大学医学部の物理は複雑な数式を扱わなければならず、計算力も欠かせない能力です。問題集に取り組む際には、必ず自分の手を動かして計算を最後までやり切ることを意識しましょう。
ちなみに基礎固めに最適な問題集は、『良問の風』(河合塾シリーズ)です。医学部入試の標準的な問題であれば、この1冊を完成させれば網羅できます。とはいえ難易度の高い応用問題への対策にはやや不安が残るため、早めに『良問の風』は卒業して次のステップに移れるように計画を立ててください。
応用力の強化には、『名問の森』(河合塾シリーズ)がおススメです。こちらは『良問の風』と出版元が同じで、より難易度の高い応用的な内容の学習を行うことができます。分からない問題がなくなるまで、繰り返し何度も解き直してください。
なおこれらの問題集の特徴は「「良問の風」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいのでご参照ください。さらに、より詳細な問題集の使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、ご一読ください。
12月中旬以降の直前期には、個別試験に向けたより実戦的な取り組みをしてください。具体的に行っていただきたいのが、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による苦手分野の強化
の3つです。
過去問分析はこれまでの傾向をもとに、その後の勉強内容を決めるための大事な作業です。問題の出題形式やテーマについて、ざっと5か年度分程度に目を通しましょう。
過去問分析ができたら、実際に過去問にチャレンジしてみてください。このとき時間を計って問題を解くことを徹底しましょう。東海大学医学部の物理は計算に手間がかかり、難易度も高いため、時間内にすべての問題を解ききるのは至難の業です。本番さながらの環境で入試問題を解くことで正確に自身の力を把握し、加えて時間配分といった実戦力の向上も過去問演習の目的です。
これらに並行して、克服できていない苦手分野の対策も進めてください。ただし全単元の復習をしようとすると時間がかかり、かえって非効率的です。過去問分析の結果や本記事などを参考に、自分自身の得意・不得意とを照らし合わせて、優先順位を付けて費用対効果の高い単元から手を付けていきましょう。
まとめ
東海大学医学部の物理の傾向と対策法のポイントは、
①大問4つに対して、制限時間は70分
②出題形式は各大問で1つの設定が与えられ、5題前後の小問に解答していく形
③解答方法は大問1、2は求めた記述式、大問3、4は選択式
④難易度は他の科目と比較して高い
⑤物理は“選択科目”であるため、目標点は他の科目と同じく100点満点中85点
⑥日程によって出題される単元が異なるため、両日受験が望ましい
⑦頻出テーマは、
【力学】力学的エネルギー保存則、運動量保存則、剛体のつり合い
【電磁気】点電荷に関する問題、交流
【波動】ドップラー効果、波の干渉、屈折の法則の応用問題
【熱力学】気体の状態変化
【原子】偏りはない、現役生は直前期に強化する
⑧9月までは基礎的な力の養成、12月中旬までは応用力の養成を行う
⑨12月中旬以降は、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による苦手分野の強化
を行う
の9つです。
東海大学医学部の物理は際立って他の科目よりも難易度が高くなっています。選択科目の1つなので苦手であれば避けることもできる一方、得意であれば他の医学部受験生からリードを奪うチャンスとして選択する価値があります。あなたがどうするかは慎重に見極めつつ、選択するのであれば同じ物理選択者だけでなく別の科目の選択者にも負けないよう、計画的に勉強を進めていきましょう!!
本記事内で登場した過去のオススメ記事
「東海大学医学部の数学の傾向と対策」
「「良問の風」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
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また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
東海大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『良問の風』(河合塾シリーズ)
『名問の森』(河合塾シリーズ)
コメント..
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コメントありがとうございます。
京都府立医科大学の記事について承知致しました。
順次、執筆およびアップさせて頂きます。
アップまで少々お待ち頂ければ幸いです。
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京都府立医科大学の傾向と対策を教えて欲しいです