関西医科大学の前期一般入試の英語の傾向と対策
先日の関西医科大学の一般入試の物理や化学の記事で、問題のテーマとして医療や生体を扱うものが多くみられるとお伝えしました。同様のことが英語においても見られます。
本日は関西医科大学の一般入試の英語について、出題傾向を分析し、それを踏まえた具体的な勉強法について紹介いたします。
関西医科大学の英語の試験形式・配点は?
関西医科大学の入学試験には、一般入学試験(前期・後期)(約86名・6名)に加えて、様々な得意分野を持つ受験生向けの特色入学試験(若干名)やセンター試験利用入学試験(10名)等の、複数の制度が存在します。(カッコ内は各入試制度の定員)
今回はその中でも、最も受験者数や合格者数の多い、前期一般入試について取り上げます。
前期一般入試では、第一次試験と第二次試験の二段階で合格者が選抜されます。
第一次試験では、数学、理科2科目、英語および小論文が課されます。
そして、第一次試験を突破すると面接試験があり、最終合格者が決定されます。
各試験の詳細な点数配分は、
【一次】数学:100点 理科:100点×2 英語:100点 小論文:段階評価
【二次】面接:段階評価
とされており、点数化されるのは筆記試験の400点分です。
また、小論文の評価は第一次試験では考慮されず、第二次試験の合否判定に使用されます。
そのうち英語の問題は、例年、大問4つで構成されます。2017年度は大問5つが出題されましたが、例外と考えて差し支えないでしょう。制限時間は80分です。
大問ごとの内容を見てみると、大問1、2が文法・語彙に関するもの、大問3、4が長文読解となっています。大問が5つであった2017年度は、文法・語彙の問題がさらに1題追加されていました。
文法・語彙や長文読解に関わらず、全体として多いのが、空所補充の問題です。文法・語彙の大問中の空所補充は、主に単語力が試されており、長文読解における空所補充では、単語力のみならず文脈の前後関係を読み解く力も求められているといえます。また、頭文字があらかじめ与えられている設問も中にはあります。
問われる内容には医療に関する専門用語や慣用的な表現等も含まれるため、要求されている単語力は高いといえます。
その他にも、長文読解では下線部が引かれた単語・熟語の日本語訳、語句整序、内容真偽といった問題が、毎年のように出題されています。一方で、文法・語彙の大問では、空所補充以外の問題が出題される場合は、多彩なバリエーションがあるため、その場で柔軟に対応せざるを得ない点には注意しましょう。
反対に、和文英訳や自由英作文の出題歴はありません。
上記内容から、関西医科大学の英語において必要となる能力をまとめると、以下の3つになります。
① 専門用語や慣用的表現にも対応できる単語力
② 長文の概要を素早く理解する文意把握能力
③ 正確な文法的知識に基づいた文章構成力
これら3拍子が揃えば、関西医科大学の合格をぐっと近くに手繰り寄せられるでしょう。
関西医科大学の英語の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、合格最低点のデータや問題の難易度から、関西医科大学の英語で何点を目指せばよいか考えてみましょう。
関西医科大学の前期一般入試の合格最低点は、400点中で、
2018年度:234点 2017年度:203点 2016年度:230点 2015年度:251点
となっています。
したがって、260点(65%)得点できれば、合格安全圏といえます。
このことから、各科目で何点ずつ取ればよいか考えると、
数学:60点 理科:135点 英語:65点
とすれば、合計260点に達することができます。
関西医科大学の英語は、英作文等の設問がないため、部分点はほとんど見込めません。空所補充をはじめとして、いわゆる0か100かの問題が並んでいます。一定以上の単語力が身についていないと、試験本番でいくら頑張っても合格点に達することは難しいため、基本単語に加えて専門用語や慣用的表現もしっかりと覚えて臨みましょう。
関西医科大学の英語の出題傾向は?
大まかな大問構成や設問の内容については、既にお伝えしたとおりです。ここではさらに詳細に、文法・語彙および長文読解の出題傾向をまとめていきます。
【文法・語彙】
大問1、2で出題されています。基本となるのが単文や短い文章中の空所に当てはまる英単語を解答する形式ですが、場合によっては頭文字が与えられていることもあります。これは一見するとヒントのようにも思えますが、複数の正答が考えられるときの縛りともなり得るため、一概に受験生にとってプラスとなるとも言い切れません。
さらに文法・語彙の大問で注意すべきなのが、空所補充以外の内容が出題されるときには、バリエーションが豊富である点です。これまでに語の定義、英語で指示された数式の記述、会話文に続く適切な応答の選択、といった問題が出されています。特に語の定義の問題では医療に関連する単語が扱われており、基本単語だけの知識ではやや対応が困難でした。また、数式を書かせる問題は多くの受験生が戸惑ったと考えられます。関西医科大学を目指す受験生は、医療・福祉に関連する専門用語や数学的思考で用いられる単語や表現をあらかじめ覚えておきましょう。
【長文読解】
大問3、4では、長文読解が出題されます。長文のテーマは、医療・福祉に関する研究や社会問題についてのテーマが定番です。そのため専門的な用語が出てくる可能性が高く、また背景知識もあった方が読解をするにあたっては、理解の助けになる場面も多々見られます。普段の勉強に加えて、現在の医療・福祉の現場が抱えている問題点や最新の研究といったことに、広くアンテナを張り巡らせて情報収集をしておくことをお勧めします。
設問については、内容真偽、語句整序、下線の引かれた単語の和訳、文章の内容に一致するものの選択そして空所補充が出題されます。ここから分かるように、長文読解では文章の一部を精読し、文構造を明らかにし…、といった作業はほぼ求められていません。重要なのは、文章の概要を素早くつかめるかどうかです。実際に関西医科大学の読解の文章は長く、修飾関係等に沿って英文を前後しながら意味を取っていっては時間が足りません。英語の文章を「左から右に」読んで、そのおおよその意味を取れるよう、練習を積みましょう。
お勧めの関西医科大学の英語の対策方法
最後に、上記内容を踏まえた具体的な勉強法について紹介します。
まずおさらいですが、関西医科大学の英語では、以下の能力が求められます。
①専門用語や慣用的表現にも対応できる単語力
②長文の概要を素早く理解する文意把握能力
③正確な文法的知識に基づいた文章構成力
12月まではこれら3つの能力の向上させる、12月以降から試験本番までは身に付けた能力を実践的に使いこなす練習をする、といったイメージで勉強を進めましょう。
第一に単語力の養成には、お伝えしているとおり、関西医科大学では一般的な基本単語だけではなく、医療の専門用語も欠かせません。
そこでお勧めなのが、『速読英単語 必修編』、『速読英熟語』(Z会出版)及び『医歯薬系の英単語』(赤本メディカルシリーズ)の併用です。
3冊をこなす負担は大きいようにも思えますが、関西医科大学では問題を解く上で単語力が欠かせないため、繰り返しこれらの単語帳に取り組んでください。
また、中にはそもそも専門用語が何を指しているかさえ分からないものもあるはずです。そのような時にはまず、その専門用語が何を意味しているかということから調べることも大切です。そうすれば長文読解において専門的内容が出てきても、理解できる場面が増えていくでしょう。
続いて、長文の文意把握能力については、読解用の問題集を使って練習をしましょう。様々な問題集が出版されており、一長一短あるため、適切な語数の問題であれば、自身に合った問題集を購入していただいて差し支えありません。特にこだわりがなければ、『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)がお勧めです。
読解問題の練習においては、英文を読み進める速さの向上に努めてください。とにかく関西医科大学の英文は長いため、「左から右に」読んで文意を取れるか否かで、問題にかけられる時間が大きく変わってきます。
3つ目の文章構成力は、英作文や語句整序の問題に触れることで、養われていきます。関西医科大学では英作文自体は出題されないものの、文法知識を活用して文章を作り上げていく過程は、語句整序の問題への対応力の向上にもつながります。幅広い英語の基礎力をつけるためにも、12月までは英作文と語句整序それぞれの問題集に取り組みましょう。
語句整序は日本語の意味に引っ張られると、文構造を無視した英文を作りがちです。あくまでも英語の文法知識を基に文章を構成するという原則を押さえてください。
より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
12月から試験本番までの約2か月間は、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による語句整序問題の練習
の3つに取り組んでください。
はじめに、過去問の分析は欠かせません。どのような問題が出されるか、難易度はどの程度か、長文の量は多いか少ないか、といったことは実際に見ることで感覚がつかめます。
結果として自身に何が足りないか、どこで得点が稼げそうか、がおのずと見えてくるでしょう。
過去問分析ができたら、次は過去問に実際に解いてみましょう。これまでに培ってきた3つの能力がどこまで通用するかの最終確認です。
このとき、本番と同じ制限時間を計って取り組むことをルールとしてください。80分の中ですべての問題が解ききれるか、もしできない場合はどこで時間がかかっているか、合格点に達するためにはどの順番で手を付けていくべきか、等を考察する上で、演習は最も参考になります。
さらに関西医科大学の過去問だけではなく、できるだけ他の私立医科大学の過去問にも挑戦してみましょう。なるべく関西医科大学と同程度の難易度、似た出題形式の大学を選んでください。このとき、長文で医療系の内容を扱う大問が含まれていると、より効果的に実戦演習を行えます。
これらと同時並行で、語句整序問題の練習をしていきましょう。12月までの勉強でも十分に練習しているはずですが、関西医科大学の出題形式を考慮すると、最終調整として語句整序の問題のレベルアップを図るのが合格へ近づくカギになります。
ここで一つ注意ですが、この時期の勉強ではこれまでに使用してきた問題集を使うのではなく、できれば新たに別の問題集を準備してください。英語の問題は、2回目以降に取り組むと答えを覚えていて、本質的な文法的知識抜きに解答が導けたりします。そのため、いかに初見の問題で文法的知識を活用して、正確に文を構成できるかを確認してもらいたいと思います。
まとめ
関西医科大学の英語の傾向と対策法のポイントは、
①大問4つで構成され、制限時間は80分(2017年度は大問5つ)
②大問1、2が文法・語彙、大問3、4が長文読解
③全体として文中の空所補充の問題が多い
④医療系の専門用語や数学で用いられる用語のような、高い単語力が求められる
⑤重要視される能力は、
・専門用語や慣用的表現にも対応できる単語力
・長文の概要を素早く理解する文意把握能力
・正確な文法的知識に基づいた文章構成力
⑥英語の目標点は100点中65点
⑦各大問の出題傾向は、
【文法・語彙】空所補充がメインだが、医療用語の定義、英語で指示された数式の記述、会話文に続く適切な応答の選択等の出題歴があり、バリエーションは豊富
【長文読解】医療・福祉系の長めの文章が頻出で、内容真偽、語句整序、下線の引かれた単語の和訳、内容一致、空所補充が出題される
⑧12月までは、単語力、文意把握能力、文章構成力を養成する
⑨12月から試験本番までは、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による語句整序問題の練習
の3つを行う
の9つです。
関西医科大学の英語は、他の国公立医学部とは異なり、差が付きやすい出題内容であるといえます。単語力をつけ、あとはどこまで専門的あるいは見慣れない内容に食い下がれるかで合否が分かれるでしょう。コツコツを積み重ねて合格点を掴み取ってください。
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関西医科大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策
こちらのページで過去問を無料で閲覧できます
また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
関西医科大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『速読英単語 必修編』
『速読英熟語』(Z会出版)
『医歯薬系の英単語』(赤本メディカルシリーズ)
『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)
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