兵庫医科大学の一般入試の英語の傾向と対策
私立医学部受験では、高い学力水準が求められるイメージがあることと思います。実際その通りであり、先日の兵庫医科大学の化学の記事でも紹介したように、兵庫医科大学の入試問題は全般的にかなりの処理スピードを求められる内容です。
高い水準が求められることは、英語の試験でも言えることであり、総合的な一定以上の英語力が求められています。本日はその英語について、傾向と具体的な対策法をお伝えします。
兵庫医科大学の英語の試験形式・配点は?
はじめに兵庫医科大学の入試制度について、確認しておきましょう。
実は兵庫医科大学の入試制度は、2019年度に大きな変更があります。具体的には、従来の数学、英語、理科2科目で第1次試験判定を行う一般入試である「一般入試A(4科目型)」に加えて、英語の技能を評価する資格・検定試験の成績を利用する「一般入試B(高大接続型)」が新たに導入されます。また、これに伴って従来のセンター利用入試(前期)及びセンター利用入試(後期)が廃止されます。
結果として兵庫医科大学の入試制度は、一般入試A(4科目型)(約85名)、一般入試B(高大接続型)(約10名)、一般公募制推薦入試(約12名)、地域指定制推薦入試(5名以内)の4種類が存在することになります(カッコ内の人数は募集人数)。
本記事では最も受験者数の多い、一般入試Aの試験内容について扱います。他の試験制度との併願等の可否については、大学HPで確認してください。
一般入試Aでは、第1次試験と第2次試験の二段階で合格者が選抜されます。
第1次試験では数学、英語、理科2科目、小論文が課されますが、小論文は2次試験合否判定時に使用されます。そして第1次試験に合格した受験生は、およそ1週間後に第2次試験として面接が行われ、最終的に第1次試験、第2次試験の成績及び、調査書などを多面的・総合的に判定して合格者が決定されます。
各試験の詳細な点数配分は、
【一次】数学:150点 英語:150点 理科:100点×2 小論文:50点
【二次】面接:点数化なし
であり、点数化されるのは第1次試験の550点分です。
その中で英語は、大問5つで構成され、制限時間は90分です。
大問の構成については、大問5で和文英訳が出題されること以外は、近年では2、3年に一度、少しずつ変化が見られます。
具体的に変化を見ていきましょう。
2013年度までは、大問1~4は文法・語彙に関する大問と長文読解が2つずつでしたが、2014年度からは文法・語彙に関する問題が1題となり、長文読解が3題に増えました。さらに、2016年度以降は単文による文法・語彙に関する大問はなくなり、4つとも長文読解になりました。
加えて2018年度には、大問セットが大きく変化し、大問1で初めて英文和訳が問われ、大問2~4が長文読解、大問5が例年通り和文英訳でした。
以上の変遷は文章による説明だけでは分かりにくいと思うので、兵庫医科大学の受験を考えている方は、実際に過去問を確認して表などにまとめてみましょう。
長文読解については、空所補充、語句整序や論述式の下線部和訳、内容説明が問われ、特に空所補充の重要度が高いです。制限時間に対して長文読解の割合が大きいため、一つ一つの文章はそれほど長くはなく、扱われるテーマは医療・福祉や社会問題に関わるものがよく見られます。
長文読解では設問自体の難易度はあまり高くないため、英文和訳や和文英訳といった記述量の多い問題に時間を残せるかどうかが勝負の分かれ目です。
兵庫医科大学の英語の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
それでは兵庫医科大学の一般入試において、英語では何点を目指せばよいでしょうか?
これまでの合格最低点や問題難易度から、考えてみましょう。
兵庫医科大学の合格最低点を見てみると、550点中で、
2018年度:351.8 2017年度:371.5 2016年度:337.3
となっています。
これらの平均を取ると353.5点となり、2017年度は特に合格最低点が高かったことも鑑みれば、合計で360点取れれば合格圏内といえます。
そこで難易度も考慮して、各科目で何点ずつ取るべきかを算出すると、
数学:95点 英語:90点 理科:140点 小論文:35点
とすれば、合格点に達することが可能です。
英語は150点中90点、すなわち6割が目安となります。多くの受験生にとって得点源となるのが、長文読解で問われる空所補充の問題であると予想されます。空所補充は文章の内容把握も大切ですが、文法・語彙知識があれば得点に直結する場合も多々あるからです。医学部受験を志す受験生であれば、難易度も平易といえます。
一方で、和文英訳で扱う文章は日本の新聞や書籍が出典元であり、こなれた日本語を英語に直さなければならないため、他の大問に比べるとやや難易度が高いです。2018年度に新たに出題された英文和訳も、複数の文章からなるやや長めの和訳を要求されており、一筋縄ではいかないでしょう。
以上のことから、
①空所補充や語句整序に対応できる文法・語彙力を身に付ける
②英語の長文の概要を素早く把握し、設問に関する部分のみ精読する
③こなれた日本語を確実に英語に変換できる簡易な表現に「言い換える」
といったことが、目標点に達することができるかどうかのカギになります。
兵庫医科大学の英語の出題傾向は?
続いて兵庫医科大学の英語の出題傾向について見ていきましょう。
既にお伝えしたように、ここ数年で少しずつ大問構成が変化しているため、確信をもって次年度以降の大問セットを予測することは困難です。
そこで以下では、近年出題のあった大問を取り上げ、特徴をまとめていきます。
【英文和訳】
2018年度入試で近年初めて出題された形式です。複数の文章からなり、各文もカンマでつながれた長い文章なので、和訳するにはしっかりとした構文の理解が欠かせません。カンマがたくさん出てくる長い文章は、接続詞で文同士がつながれているのか、句が並列されているのか、分詞構文が使われていないか、などを丁寧に読み解く必要があります。カンマの使い方のみならず、様々な文法・語彙能力を高めておくことが求められています。
【文法・語彙】
これまでに出題歴のある文法・語彙に関する問題は、単文中の空所補充です。動詞の語形変化や語彙力を問うものが定番です。ここ3年で文法・語彙に関する大問は出題されなくなりましたが、英文和訳や長文読解で見られる空所補充、語句整序に対応するのに、文法・語彙の知識は必須です。引き続き兵庫医科大学の重要分野として、文法・語彙には力を入れて取り組んでください。
【長文読解】
全5題中、3~4題は必ず出題され、最も大きなウェイトを占める大問です。問われる内容は毎年ほぼ共通しており、単語あるいは句の空所補充、下線部和訳、内容説明、語句整序です。特に単科の私立医学部受験では、長文で医療・福祉系のテーマを扱う傾向がありますが、兵庫医科大学でも同様です。医学的知識を特別に勉強するのは非効率的ですが、最低限の医療・福祉系の単語を押さえ、他の私立医科大学の過去問等でこういったテーマの長文に多く触れることで慣れておいた方がよいでしょう。また、下線部和訳では指示代名詞の指す内容を具体的に示しながら解答するように指示されることも多いのが特徴として挙げられます。下線部訳や語句整序であっても文法・語彙の知識だけで対応できるわけではなく、実際には文章の概要を踏まえなければならないことに注意しましょう。
【和文英訳】
大問5では和文英訳が必出です。与えられる日本語は、新聞や書籍等のやや格式が高かったりこなれた言い回しをしたりと、逐語的に英訳するには荷が重いものがほとんどです。いかに原文の意義を損なわずに、自身が確実に使える英単語や構文で訳せる別の日本語に「言い換え」られるかどうかで差がつく大問です。多様な英語表現の知識を身に付けるのみならず、「言い換え」の許される範疇なども模範解答をよく読んで知っておくといった対策も行いましょう。
お勧めの兵庫医科大学の英語の対策方法
最後に上記内容を踏まえて、兵庫医科大学の英語の具体的な対策法をまとめます。
まず12月までは英語の基礎力の養成に努めてください。基礎力とは具体的には、文法・語彙力、英作文力、長文読解力です。
語彙力は単語帳でつけていきますが、お勧めの単語帳は『速読英単語 必修編』、『速読英熟語』(Z会出版)です。ただし、これらは一般的な英文を読むうえでは申し分ないですが、兵庫医科大学では他の私立医学部受験のような医療・福祉系の単語力も必要です。そこで、速単・速熟に加えて『医歯薬系の英単語』(赤本メディカルシリーズ)にも取り組むと単語力の底上げが図れるでしょう。
英文法に関しても問題集を使い、演習を繰り返します。英文法の知識は英語の中でもすべての根幹をなすものであり、空所補充、語句整序、英文和訳といった際にも文法知識があるかないかで出来が大きく変わります。
英作文では『竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本』(KADOKAWA)を使い、毎回手を動かして英文を書く練習をしましょう。英語表現は例文で覚えるのが効果的です。この点、本問題集は解答例が複数紹介されており、英語表現の幅を広げることに最適です。
可能であれば、自身の解答を学校や予備校の先生に添削してもらってください。こなれた日本語を英訳するときには、「言い換え」により訳しやすい文章に直さなければなりませんが、その「言い換え」がどこまで許容されるかといった判断は独学では難しいからです。
長文読解については、『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)等の問題集で勉強を進めましょう。兵庫医科大学では長文の数が多いため、素早く全体の概要を掴み、下線部訳や内容説明に関連する部分については精読をする、といったメリハリをつけた英文の読み方を意識してください。
ここまで基礎力アップのために様々な問題集を紹介しましたが、より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
次に1月末の個別試験まで、12月以降にすべきことは、
・過去問の分析
・過去問を使った実戦演習
・これまでの勉強で苦手な部分の強化
の3つです。
過去問の分析は、どのような問題構成や出題内容か、長文で扱われるテーマにはどんなものが多いか、問題の難易度はどうか、について確認してください。
確認が終わったらいよいよ、過去問にチャレンジです。この時期に最も重要なのが、これまで勉強した英語の単元ごとの基礎力を統合していくイメージを持つことです。
12月までの勉強は各単元でどうしても別個の知識になりがちです。しかし兵庫医科大学に限らず医学部受験では、英語の総合力が求められることがほとんどです。総合力とはすなわち、色々な単元で学んだ内容を統合的に応用していき、ひとつの問題に対処できる力です。
例えば、文法的知識をもとに語句整序問題の正答を導いたり、単語帳で覚えた語句を英作文で使ったりといったことが総合力といえます。各単元の横のつながりを意識して、ここから先は今までの内容を統合していきましょう。
兵庫医科大学の過去問にある程度取り組んだら、是非他大学の出題傾向や難易度の似通った過去問でも演習を積んでください。
とはいえ、ここまでの勉強でどうしても苦手な分野もあるはずです。過去問演習と並行して、問題集や参考書で知識の穴を埋めていく作業も忘れないでください。
まとめ
兵庫医科大学の英語の傾向と対策法のポイントは、
①大問5つに対して、制限時間は90分
②出題内容は英文和訳、文法・語彙、長文読解、和文英訳だが、近年少しずつ変化している
③大問5の和文英訳は毎年出題されている
④目標点は150点中90点(6割)
⑤目標点に到達するのに重要な点は、
・空所補充や語句整序に対応できる文法・語彙力を身に付ける
・英語の長文の概要を素早く把握し、設問に関する部分のみ精読する
・こなれた日本語を確実に英語に変換できる簡易な表現に「言い換える」
⑥長文読解では医療・福祉系や社会問題に関するテーマがよく扱われ、空所補充、下線部和訳、内容説明、語句整序が設問として出される
⑦12月までは単元ごとに英語の基礎力を付ける
⑧12月以降は各単元で別個になっている英語力を統合した総合力を養うために、
・過去問の分析
・過去問を使った実戦演習
・これまでの勉強で苦手な部分の強化
に取り組む
の8つです。
英語の成績は勉強時間と比例しづらく、苦手意識を持っている方もいるかもしれません。しかし単元ごとにしっかり勉強を進め、最終的にそれらを統合できるようになると一気に成果が表れます。「医学部受験は総合力勝負」を忘れず、地道に階段を上って行ってください!!
本記事内で登場した過去のオススメ記事
「兵庫医科大学の前期一般入試の化学の傾向と対策」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
兵庫医科大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策
こちらのページで過去問を無料で閲覧できます
また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
兵庫医科大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『速読英単語 必修編』
『速読英熟語』(Z会出版)
『医歯薬系の英単語』(赤本メディカルシリーズ)
『竹岡広信の英作文が面白いほど書ける本』(KADOKAWA)
『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)
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