高知大学医学部の数学の傾向と対策
以前、別記事「香川大学医学部の数学」において、四国の国立医学部の一つである香川大学の数学について紹介しましたが、他にも3つの医学部が存在し、しのぎを削っています。
本日はその中でも高知大学医学部の数学について、傾向と具体的な対策法をお伝えします。
高知大学医学部の数学の試験形式・配点は?
はじめに高知大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
高知大学医学部の入試制度には前期一般入試(60名(地域枠5名))、AO入試(30名以内)、推薦入試(20名以内)の3つがあります(カッコ内は募集人数)。
本記事では最も受験者数の多い、前期一般入試について扱うこととします。
前期一般入試では他の国立医学部受験と同様に、センター試験と二次試験、及び面接試験の総合得点で合否が決まります。調査書については総合判定に加味するとされています。
各試験の科目ごとの配点は、
【センター試験】国語:200点 社会:100点 数学:100点×2 理科:100点×2 英語:200点
【二次試験】数学:300点 理科:150点×2 英語:300点 面接:100点
となっており、センター試験が900点、二次試験が1000点の合計1900点満点です。センター試験は特に得点の傾斜や圧縮はありません。センター試験と二次試験の得点はほぼ1:1であるため、どちらか一方で高得点を取るというよりは、いずれの試験でもバランスよく点数を取れる力が求められます。
ちなみに医学部入試としては珍しく、平成28年度までは二次試験で英語が課されていませんでした。平成29年度以降新たに追加されているため、過去問の情報が少ない点に注意してください。
さて、高知大学医学部の数学は大問4つで構成され、制限時間は120分与えられます。基本的に大問ごとに1つのテーマから出題があり、3、4個の小問に従って解き進めていく形式です。近年では平成27年度に大問1で小問集合が出されましたが、こちらは例外と考えて良いでしょう。
解答は全て論述形式で、計算過程や考え方も採点の対象となります。高知大学医学部の数学では証明が毎年出題されており、論述の分量は必然的に多くなります。1題に30分かけることができ、時間的に厳しいということはありませんが、普段の勉強から論述形式で解答を作成することを意識することが肝要です。
難易度に関しては医学部受験としては標準的なものが中心ですが、年度によっては難問が含まれている場合もあります。上述のように証明問題といった論証能力が重要視されており、短時間で処理するというよりは時間をかけてしっかりと考察を加えていく問題のセットなので、最初に全体の様子を見渡して解けそうな問題から手を付けていくといった工夫が大切です。
高知大学医学部の数学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、高知大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、数学では何点を取ればよいか考えてみます。
英語が加わった後の高知大学医学部の一次試験の合格最低点は、
平成30年度:1443.7点 平成29年度:1387.4点
となっています。すなわち、1900点中1450点(約76%)あれば合格安全圏といえます。
ここでセンター試験では900点中780点(約87%)取ることができたと仮定すると、二次試験では1000点中670点が必要となります。
そこで、各科目の難易度も鑑みてそれぞれの目標点を設定すると、
英語:195点 数学:195点 理科:210点 面接:70点
とすればバランスが良いでしょう。
数学では300点中195点(65%)が求められますが、問題のレベルからすると決して高いハードルではありません。目先の難問に足を取られることなく、広い視野を持って解けなければならない設問を確実に解いていけば、必ず目標点以上の点数を取ることができます。
また国立医学部受験では、センター試験と二次試験の点数配分も出願に際して欠かせない判断材料となりますが、高知大学医学部ではお伝えしたように二次試験と同じくらいセンター試験も重視されています。当たり前のことではありますが、センター試験でなるべく高い点数を取ることで、有利な状況で二次試験に臨むことができます。センター試験は比較的短期間で得点を伸ばすことが可能なので、二次試験の得点が伸び悩んでいる場合は、例えばセンター試験では9割の810点以上を取ることを目標として、先行逃げ切りを図るのも一つの選択肢です。
高知大学医学部の数学の出題傾向は?
それでは、高知大学医学部の数学では、どのような問題が出されるのでしょうか?
以下では出題傾向を、【超頻出単元】、【頻出単元】、【要対策単元】に分けてまとめていきます。
【超頻出単元】
・積分法(数学Ⅲ)
数学Ⅲの微分法・積分法を扱う問題は毎年1、2題出されますが、そのうち一つは定積分で表される数列に関する問題である場合が多いです。最終的に定積分で表される数列の極限を求めるものが定番ですが、極限計算に行き着くまでに不等式の証明をしたうえではさみうちの原理等を用いるものがほとんどです。この手の問題で欠かせないのが、定積分を計算する能力、不等式の証明での論証能力、そしてはさみうちの原理に持ち込む判断力です。すべての問題に当てはまる決まった解き方はなく、定積分で表される数列は与えられる式の形によってその都度対応が変わります。問題集を通して様々なパターンの問題に触れて、解法の引き出しを増やしておきましょう。
その他にも数学Ⅲの積分法では、直線や曲線で囲まれた部分の面積やその回転体の体積の求積問題も見られます。ただし面積や体積の求めるでは、問われている部分を適切に図示できれば、あとは定積分の計算さえできれば答えを導くことができます。求積問題については是非とも満点を狙ってください。
【頻出単元】
・数列
高知大学医学部の数列に関しては頻出度が高いものの、バリエーションが非常に豊富です。傍用問題集に載っているような典型問題は少なく、他の分野との融合問題となっているのが原因です。これまでに整数の性質や直線の方程式と絡めた問題の出題歴があります。典型的な解法が通用しない数列においては、数学的帰納法が効果的である点は押さえておきましょう。加えて数列に限りませんが、丁寧な場合分けを要する設問も多々あります。証明問題以外でも論証能力を問われていることを忘れず、特に数列であればやみくもに計算を進めるのではなく、初めの3項程度を実際に求めてみるなどの試行をしてください。そうすれば場合分けが必要かどうか見えてくるはずです。さらに積分法と同じように、数列の一般項の極限を計算する問題にも対応できるようにしておきましょう。
【要対策単元】
・複素数平面
複素数平面は新課程に対応した入試制度が導入された平成27年度以降に、数学Ⅲの出題範囲となりました。高知大学医学部では平成29年度までは複素数平面の問題は見られませんでしたが、平成30年度に新課程導入後初めて出題されました。今後の動向はまだ予測がつきませんが、複素数平面の標準的な問題であればどのような分野であっても解けるように準備して本番に臨んでください。
お勧めの高知大学医学部の数学の対策方法
最後にこれまでの内容から、高知大学医学部の数学の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。
まずセンター試験までは、数学の全範囲の標準問題の解法を修得することを目的として勉強してください。高知大学医学部の数学では、軌跡やベクトルがほとんど出ないように出題テーマに多少偏りがありますが、センター試験対策やこれまでにほとんど出題のないテーマの問題が急に出されたときへの保険、といった意味でどのような単元であっても標準レベルの問題は必ず解けるようにしておかなければなりません。
そして意識していただきたいのが、普段問題集を解く中でも、二次試験の論述形式の練習をすることです。繰り返しになりますが、証明問題や数列の問題では論証能力が求められる場面が多く、説明を簡潔かつ適切に論述できなければなりません。ただ答えを出せるようになるだけでなく、しっかりと手を動かしてノートに問題を解き、模範解答と照らし合わせて答案の完成度を高めていってください。
この時期におススメの問題集は、『入試数学理系の核心』(Z会出版)です。分からない問題がなくなるまで繰り返し取り組み、問題を見たら解法が浮かぶようにしておきましょう。
また全体に占める数学Ⅲのウェイトが大きいため、余裕があれば数学Ⅲについては『1対1対応の演習』(東京出版)も使ってステップアップしてください。テーマごとに1対1対応で解法がまとめられているため、問題の形式と解き方の流れを結び付けて整理するのに役立ちます。
なお、「1対1対応の演習」の特徴については、別記事「「1対1対応の演習」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」をご参照ください。
加えて、より詳細な問題集の使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、是非参考にしてください。
センター試験終了後は、二次試験を意識した対策にシフトします。具体的に行っていただきたいのが、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集を用いた苦手分野の克服
の3つです。
まず過去問分析は、残りの約2カ月の勉強内容を決定する大切な作業です。高知大学医学部の数学の出題形式や問題の分量、頻出度の高い単元などを本記事も参考にしながら自身で確認してください。
過去問分析が済んだら、実際に過去問にチャレンジしてみましょう。このとき必ず時間を計って取り組むことを忘れないでください。大問1つあたり30分かけることができるため、私立医学部受験のように時間との勝負にはあまりなりませんが、それでもやはり時間を区切らず漫然と説いていては効果が半減してしまいます。本番をイメージしながら実戦的な演習の場として活用してください。
これらと同時並行で、これまでの勉強で解決できなかった弱点を中心に、問題集を使って総復習をしてください。とはいえ、残り2カ月で全範囲に目を通すのは困難であり、効率的とは言えません。過去問分析で洗い出された重要テーマと、自身の得意不得意とを見比べてみて、優先順位を付けるとメリハリがつくでしょう。
まとめ
高知大学医学部の数学の傾向と対策法のポイントは、
①大問4つで構成され、制限時間は120分
②各大問には3、4個の小問が与えられる
③解答は全て論述形式で、論証能力が重要視される
④難易度は医学部としては標準的といえるが、一部に難問も見られる
⑤目標点は300点中195点
⑥頻出テーマは、
【超重要単元】積分法(数学Ⅲ)
【頻出単元】数列
【要対策単元】複素数平面
⑦センター試験までは、数学の全範囲の標準問題の解法を修得することを目的に勉強する
⑧センター試験終了後にすべきことは、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集を用いた苦手分野の克服
の8つです。
医学部受験では高得点を取らないと合格できないと考えがちですが、高知大学医学部の合格最低点は思いのほか高くはありません。もちろん問題が易しいということはありませんが、適切な勉強を積み重ねていけば十分に越えることのできる壁です。最初は論述量の多さに辟易するかもしれません。しかし、論述ができるようになることはそれだけ理解も深まっている証拠でもあるということを忘れないでください!!
本記事内で登場した過去のオススメ記事
「香川大学医学部の数学の傾向と対策」
「「1対1対応の演習」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
高知大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策
こちらのページで過去問を無料で閲覧できます
また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
高知大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『入試数学理系の核心』(Z会出版)
『1対1対応の演習』(東京出版)
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