愛媛大学医学部の物理の傾向と対策

愛媛大学物理

先日、「愛媛大学医学部の数学の傾向と対策」の記事の中で、同大学の数学における数学Ⅲの重要度の高さを強調しました。一方、物理では特定の単元に偏った対策は、残念ながら役に立ちません。

 本日はその愛媛大学医学部の物理について、偏りなく勉強すべき理由に触れながら、これまでの傾向と具体的な対策法を紹介します。

愛媛大学医学部の物理の試験形式・配点は?

はじめに愛媛大学医学部の入試制度について見ていきましょう。

 

 愛媛大学医学部の入試制度には、前期一般入試(40名)、後期一般入試(25名)、推薦入試(45名)の3つが存在します。推薦入試による合格者が多いのが本大学の特徴ですが、この記事では受験者数が一番多い前期一般入試について取り上げることとします。

 

 前期一般入試の選抜法は、センター試験及び二次試験の点数の合計で合格者が決まる、国公立医学部受験のオーソドックスな形となっています。各試験の詳細な配点は、

【センター】国語:200点 社会:50点 数学:50点×2 理科:50点×2 英語:100点

【二次試験】数学:200点 理科:100点×2 英語:200点 面接:100点

となっており、センター試験550点、二次試験700点の合計1250点満点です。

 注目すべきはセンター試験の国語の配点比率の高さです。一般的に医学部受験において文系科目は得点が圧縮される傾向がありますが、愛媛大学ではむしろ国語の割合が高めに設定されています。国語のできが最終的な結果にも影響を及ぼす可能性が大いにあるため、苦手な方は他の受験生に差を付けられないように早い時期から対策をしておいてください。

 

 さらに入学志願者の募集人員に対する倍率が約6倍を上回った場合、第一段階選抜、いわゆる足切りを行うとされています。実際に年度によっては第一段階選抜がなされています。もしセンター試験の得点に不安があるのであれば、出願する前にセンターリサーチ等で受験者の動向をチェックしておきましょう。

 

 そのうち二次試験の理科に関しては、医学部受験生は物理、化学の2科目が必須科目として課されます。国公立医学部では物理、化学、生物の3科目から2つを選択できることが一般的ですが、愛媛大学医学部では科目が予め決められているため気を付けましょう。ちなみにセンター試験では生物を選択することも可能です。

 

 例年、教育学部、理学部等の他学部と同じ問題冊子が配布され、物理では全4題中、指定された2題を解答する形式です。年度によって指定される問題番号は異なるため、必ず問題を解き始める前に確認をしてください。

 

 各大問は基本的に8つ前後の小問に分かれ、答えのみを解答欄に書く論述式が中心ですが、適切な記号を選ぶ択一式のものも見られます。また問題によっては空所補充形式になっており、空欄に当てはまる語や数式等を答えていくものも出される可能性があります。

 

 制限時間は理科2科目に対して100分が与えられるため、1科目当たり50分割くことができます。それに対して難易度は標準的な問題がほとんどですが、一部に難易度の高いものや計算が複雑なものも紛れています。問題数も決して少ないわけではなく、物理が得意でなければ時間内にすべての設問を解ききるのは困難と言わざるを得ません。典型問題をてきぱきと処理していき、いかに難しい設問に時間を残せるかがカギとなります。

愛媛大学医学部の物理の問題の難易度と合格に必要な得点率は?

続いて、愛媛大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、物理では何点を取ればよいか考えてみます。

 

愛媛大学医学部の合格最低点は、センター試験と二次試験の計1250点満点中、

平成31年度:947.30点 平成30年度:914.30点 平成29年度:975.60点 平成28年度:946.05点 平成27年度:900.30点

となっています。これらの平均を取ると約937点となるため、極端に受験者の得点が高い年度でなければ950点(76%)取ることができれば合格圏といえます。

 

 ここでセンター試験の得点が550点中480点(約87%)であったと仮定すると、二次試験では700点中470点(約67%)得点できれば合格点に達します。これを踏まえて各科目の難易度も考慮して、二次試験の各科目の目標点を設定すると、

数学:140点 理科:140点 英語:130点 面接:60点

とするのが良いでしょう。

 

 理科では2科目で140点(7割)以上を取らなければなりませんが、物理と化学の間に大きく得意不得意の差がなければ、いずれも70点以上を目指してください。医学部受験としては標準的な難易度の試験内容といえますが、大問数が少ないため苦手な単元から出題があった場合に致命的となる可能性が高くなります。愛媛大学医学部の受験を考えるのであれば、物理ではできる限り苦手な単元を作らないことも欠かせない対策の一つです。冒頭で本大学の物理では偏りのない勉強をしなければならないと申し上げましたが、これがその理由です。

愛媛大学医学部の物理の出題傾向は?

それでは、愛媛大学医学部の物理では、どのような問題が出されるのでしょうか?

前提として本医学部の物理は大問2つで構成され、1つ目の大問は力学から、2つ目の大問は電磁気、波動、熱力学のいずれからかの出題となることを押さえておきましょう。近年の傾向からするとやや電磁気から問題が出される頻度が高いようですが、他の単元も疎かにすることはできないのが悩ましい点です。

 

以下で単元ごとに頻出テーマをまとめていきますが、上述のポイントを踏まえたうえで勉強する際の参考にしてください。

 

【力学】

 力学は1つ目の大問で必出の重要単元です。非弾性衝突や斜方投射といった定番の物体の運動を扱う問題ももちろん頻出ですが、円運動の知識を問うものが比較的多いのが特徴です。平成30年度の万有引力と関連するものはもとより、平成27年度の磁場中の荷電粒子の運動を分析する問題においても、円運動に関連する設問が見られます。物体の速度と角速度の関係や等速円運動の運動方程式の立て方といった、円運動ならではの公式や考え方をしっかり身に付けて本番に臨むようにしましょう。

 

【電磁気】

 電磁気では磁場と電流の関係、特に電磁誘導を扱う問題の出題頻度が高いです。電磁誘導は公式のあてはめで解けてしまうものも存在しますが、愛媛大学医学部の物理では磁束密度の変化と誘導起電力の関係を丁寧に分析する問題の出題歴もあります。そもそも公式も磁束密度の変化と誘導起電力との関係をもとに導き出されたものなので、ただ暗記するのではなく意味を理解することを心掛けましょう。

 他にも多くの受験生にとって勉強が手薄になりがちな交流回路をテーマとする大問も見られます。苦手な方は直前期に再度復習するようにしてください。

 

【波動】

 波動は出題頻度がさほど高いわけではないので、明確な傾向を見て取ることはできません。ただし平成29年度の定常波の式を導く大問のように、難易度の高い問題が出されることもあります。ヤングの実験のような光波の干渉も出される等、幅広い範囲から出題の可能性があるため、穴を作らない勉強を意識しましょう。

 

【熱力学】

 近年、出題回数が少ないため明確な傾向に従って対策を進めていくのは困難ですが、熱力学は典型問題のパターンがもともと少ない単元です。大問が2つしかないため、勉強が十分でないにもかかわらず仮に本番出された場合、残りの問題でリカバリーするのはほぼ不可能といわざるを得ません。完成にさほど時間はかからないため、典型問題については全て対応できるように準備しておいてください。

お勧めの愛媛大学医学部の物理の対策方法

最後にこれまでの内容から、愛媛大学医学部の物理の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。

 

 まずセンター試験までの時期については、物理の全単元の典型問題の解法をマスターすることを目指してください。繰り返しになりますが、大問数が2つしかないうえに力学以外にどの単元から問題が出されるか予想することはできません。この時期にどれだけ標準問題を解けるようになるかが、不測の事態に陥った際に乗り切れるか否かを分けます。

 

 全単元を網羅的に勉強するのにおススメの問題集は、『良問の風』(河合塾シリーズ)す。標準レベルの問題が過不足なく掲載されているので、最も効率よく基礎固めができる問題集の1つです。解法が分からないものがなくなるまで、何度も取り組みましょう。

 また教科書レベルの勉強が済んでいるにもかかわらず、標準的な問題集に歯がたたないようであれば、頭に入れた知識を問題に活用するコツが掴めていないといえます。そうした場合には、『物理のエッセンス』(河合塾シリーズ)から演習をスタートすると良いでしょう。本書は問題集と参考書の中間のような内容で、図の書き方等の実践的な解法の定着をコンセプトとしているため、物理初学者にとっても手に取りやすい1冊です。

 

なおこれらの問題集の特徴は別記事「「良問の風」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」「「物理のエッセンス」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいのでご参照ください。

さらに、より詳細な問題集の使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、ご一読ください。

 

 センター試験終了後は、二次試験に向けた勉強に移ってください。具体的に行っていただきたいのが、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集を用いた苦手分野の克服

の3つです。

 

 過去問分析は残りのおよそ1カ月の勉強内容を決定するうえで重要な作業です。試験形式や出題内容、テーマについて、過去5年度分程度にざっと目を通しましょう。漫然と確認作業を行うのではなく、自身の得意不得意と照らし合わせていくのがポイントです。

 

 過去問分析が終わったら、実際に過去問を使って実戦演習を繰り返してください。このとき徹底していただきたいのが、時間を計って取り組むことです。制限時間を超えて問題が解けても、本番ではまったく意味を成しません。時間的に余裕のない試験なので、いかに時間内に目標点に到達できるかを意識しながら問題を解きましょう。

 

 同時並行で、これまでの取り組んできた問題集の中の克服できなかった苦手分野の強化をしてください。とはいえ残り僅か1カ月程度で、物理の全範囲の復習をするというのは非効率的です。過去問分析の結果をもとに、時間をかけた分だけ得点に結びつきやすい単元から優先的に手を付けていくというような費用対効果を考えた計画を立てましょう。

まとめ

愛媛大学医学部の物理の傾向と対策法のポイントは、

①医学部受験生は二次試験の理科で物理、化学が必須(生物は選択不可)

②他学部と共通の問題冊子が配布され、指定された4題中2題を解答する

③制限時間は理科2科目に対して100分が与えられる

④難易度は標準的なものが中心だが、問題数が多く難問も一部あるので、時間的余裕はない

⑤目標点は100点中70点

⑥出題傾向は、

【力学】毎年大問1で必出、円運動に関連する知識を押さえておく

【電磁気】やや出題頻度が高い、磁束密度の変化と誘導起電力の関係を理解しておく

【波動】難しい問題の出題歴あり、穴を作らないように対策を進める

【熱力学】出題頻度は低い、典型問題のパターンは少ないので完成させておく

⑦センター試験までは、物理の全単元の典型問題の解法をマスターすることを目指す

⑧センター試験終了後は、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集を用いた苦手分野の克服

を行う

の8つです。

 

 愛媛大学医学部の物理は、大問が2つしかないものの、設問数が多いためにてきぱきと標準問題を処理できる能力がなければ、目標点を取ることはできません。さらに裏を返せば1つの単元に対する配点が非常に高い試験内容なので、苦手な単元は極力なくすことが肝要です。暗記事項は少ない科目なので、インプットが終わり次第、アウトプットを繰り返して実戦力を磨いていきましょう!!

 

 

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「良問の風」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」


 

「「物理のエッセンス」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」


 

「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」


 

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本記事で登場したお勧めの問題集・参考書

『良問の風』(河合塾シリーズ)


 

『物理のエッセンス』力学・波動(河合塾シリーズ)


 

『物理のエッセンス』熱・電磁気・原子(河合塾シリーズ)

 

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