2019年度岡山大学医学部入学試験の講評と今後の対策法

2019岡山大学

去る2月25日、26日に日本全国で一斉に2019年度の国立医学部受験が行われました。手ごたえのあった人もそうでなかった人も、そわそわしながら結果を待っていることかと思います。

 本日はその中でも、2019年度の岡山大学医学部の入学試験の各科目について分析し、これまでの傾向を踏まえて次年度以降どのように対策をしていけばよいか紹介します。

2019年3月21日:生物を追記しました。

数学の出題内容および難易度

まず初めに数学について見ていきましょう。

 

2019年度の数学は、大問4つで構成されすべて論述形式でした。出題形式に関しては大きな変化はなく、例年通りといえます。

 

 出題された問題を見てみると、大問1が独立試行の確率、大問2が漸化式、大問3が複素数の図形への応用、大問4が座標平面内の図形の斜回転によりできる立体の体積をそれぞれテーマとするものでした。近年の出題傾向からすると漸化式が珍しい大問ですが、これも実質的には整数問題の論証が中心となっているため、岡山大学の過去問をしっかりと分析できている医学部受験生からすると、特に驚きのあるセットではなかったでしょう。

 

 難易度については、昨年と比べるとやや易化しました。昨年度の数学では計算が複雑になる大問がいくつかありましたが、今年度は計算量の多い問題はありません。一方で、大問2の数列の全ての項が自然数となる条件を求める問題では、状況を丁寧に整理し確実に論証を進めていく必要があります。時間を掛けてじっくりと思考する力と、論証の内容を過不足なく記述できる力が求められるため、完答できなかった医学部受験生も多かったのではないでしょうか。また大問4の斜回転によりできる立体の体積を求める問題は、対策が手薄になりがちな論点なので、受験生間で差がついたと予想されます。ただし斜回転の問題は過去(2003年度)に出題歴があり、古い年度の過去問までさかのぼって練習していた受験生は万全に対策ができていた可能性もあります。岡山大学医学部の数学では過去に出されたことのあるテーマが再び出題される場合も多々あるため、できる限り古い過去問にまでさかのぼって演習をしておきましょう。

 

 2019年度入試では難易度や出題内容に特別な変化はなかったので、来年度以降の対策法もこれまで通りで問題ありません。詳細な対策法については、「岡山大学医学部の数学の傾向と対策」を是非参考にしてください。

物理の出題内容及び難易度

次に2019年度の物理を確認してみます。

 

これまでと変わらず問4つが出題され、導出過程を求められる小問やグラフ・図の記号選択問題は昨年度に引き続き出題されました。過去に出題歴のある理由説明等の論述問題や描図問題は、2019年度には見られませんでした。全体としては設問の内容に目新しいものはありませんでした。

 

出題テーマは、大問1が力学、大問2が電磁気、大問3が熱力学、大問4が波動となっており、過去問を確認している医学部受験生にとっては定番ともいえる大問セットでした。この傾向はここ数年続いており、今後も同様の大問セットが続くと考えて良いでしょう。大問4の波動では今年度はドップラー効果について扱う問題が出されており、音波と光波が2年度続くことはないという規則性も保たれている点も要注目です。

 

 難易度については昨年よりも易化しました。2019年度の設問はいずれの小問も標準問題集に掲載されているような典型問題ばかりで、解法が分からなくて手がつかないといったものはなかったはずです。医学部では高得点を取る受験生が続出すると考えられるので、ケアレスミスによる失点が大きな痛手となるかもしれません。

 

 次年度に向けた対策法ですが、今年度易化した分、2020年度は難化する可能性が高いといえます。どの単元についても2019年度に出されたテーマは基本的に出題されないため、それ以外のテーマを重点的に対策していきましょう。波動に関しては光波を中心に問題演習を行い、定常波や合成波の作成といった波の基本的性質を問う問題を補完的に勉強するのが効率的です。加えて平成30年度と平成31年度には、文字式ではなく実際に数値を用いて値を計算する設問が見られました。根本的な考え方に変わりはありませんが、有効数字の考え方等、問題集を通して身に付けておきましょう。その他の細かい対策法については、「岡山大学医学部の物理の傾向と対策」をご参照ください。

化学の出題内容及び難易度

続いて化学についてです。

 

 例年通り大問5つが出題され、大問4以外は全て2つの中問に分かれていました。2018年度と比べると、中問の数は1つ増えたことになります。中問1つで1つのテーマを扱うため、幅広い分野への対応力が求められており、化学の総合問題のような試験内容となっています。さらに計算問題が多いことも岡山大学の化学の特徴であり、今年も時間的な余裕がなかった医学部受験生が多かったはずです。ちなみに過去に出題歴のある論述問題や描図問題は、2019年度には見られませんでした。

 

 設問の内容は、大問1が金属の結晶格子、イオン化傾向、大問2が熱化学方程式、溶解熱、大問3が二酸化炭素のアミン水溶液への溶解、リチウムイオン電池、大問4が有機化合物の構造決定、大問5が合成繊維、単糖の性質、となっていました。毎年1題は無機化学が中心となる大問が出されていましたが、2019年度は理論化学から3題、有機化学から2題というセットでした。

 

 難易度は昨年度よりも難化しました。今年度は条件反射的に解けるパターン問題が少なくなっており、代わりに大問3の問1のようにデータをもとに思考を要する設問が増えました。誘導は比較的丁寧であるため、基礎的知識を応用すれば十分に対応できるレベルですが、制限時間を考慮すると厳しいといえます。また有機化学では6ナイロンやフルクトースの鎖状構造といったやや細かい知識が問われたのも特徴的でした。

 

 今後の対策法としては、出題傾向自体に著変はないため理論化学と有機化学を中心に網羅的に穴を作らない勉強をしていけばよいでしょう。ただし岡山大学の化学は年度によって難しさにばらつきがあるため、できるだけ各テーマを深めていくことも大切です。具体的な対策法については、別記事「岡山大学医学部の化学の傾向と対策」をご確認ください。

英語の出題内容及び難易度

次に英語を見ていきましょう。

 

 岡山大学の英語は長年、大問構成に変更がなく、2019年度も大問1、2が長文読解、大問3が和文英訳、大問4が自由英作文というおなじみの形式でした。しかしながら長文読解の設問の指示が初めてすべて英語となった点は大きく変わりました。とはいえ、平成29年度までは設問が日本語であったところから、平成30年度には大問2で英語による指示と変わったことも踏まえると、今年度の変化で困った医学部受験生はあまり多くはないでしょう。

 

 大問ごとに内容を確認すると、大問1では10代の若者の発達に関して、大問2では人工知能と創造性に関しての、いずれも自然科学系の長文が与えられました。設問は大問1、2とも正しい記号を選ぶ選択問題と、日本語で内容を説明する論述問題を合わせて5問前後出題されました。今年も英語で論述する設問は出されていません。大問3は「旅育」に関する筆者の実体験をもとにした文章の和文英訳、大問4は空き家が引き起こす問題とその解決法について10行程度での自由英作文でした。

 

 難易度に関しては、長文読解で与えられた文章のレベルや和文英訳や自由英作文そのものは例年並みといえます。しかし、文章が昨年よりも長かったこと、長文読解の設問の指示が全て英語になったこと、大問1の設問が昨年は論述問題2つであったものが、選択問題が加わり設問数が大幅に増加したことなどを鑑みると、全体としては難化したといえます。

 

 これらのことから、岡山大学の英語では年々、英語を読む分量が増加していることが分かります。おそらくこの傾向は続くため、2020年度以降に岡山大学の医学部受験を目指す場合は、今までに増して英語を読むスピードを意識した勉強が肝要です。英語の長文を用いて、左から右に読み進めて概要が把握できるように訓練しておきましょう。和文英訳や自由英作文への対策が重要なのは、これまでと同様です。対策法について詳しくは、「岡山大学医学部の英語の傾向と対策」をご覧ください。

生物の出題内容及び難易度

次に2019年度の生物を見ていきましょう。

 

例年通り、大問4つが出題されました。

大問1は酵素についての問題で難易度は基本レベルでした。小問4でキモトリプシノーゲンとキモトリプシンの構造を図示せよという問題が出題されましたが、本文でそれぞれの構造の特徴と問題文でインスリンの場合の例が与えられているので落ち着いて考えたらすぐ答えにたどり着いたはずです。

大問2はミトコンドリアでの呼吸についての問題で、こちらも難易度は基本レベルでした。

大問3は遺伝についての問題でした。ZWの性染色体であるニワトリでの伴性遺伝についての問題で、あまり見たことのないタイプの問題だったため難しく感じた受験生も多かったと思いますが、落ち着いて考えるとXYの性染色体での伴性遺伝と同じように考えれば解けた問題でした。難易度は標準レベルです。

大問4は進化、生態、酸素運搬と血液凝固についての問題でした。難易度は基本レベルでした。

 

生物全体で考えると例年通り、基本から標準レベルの問題が多く、また論述問題の数、文字数も例年より減少したため例年以上に得点が取りやすい問題だったと思います。間違えるとすれば大問3の遺伝の問題かなと思いますが、そこを合わせられた受験生は9割を超える得点がとれたはずです。しかし物理も易化したため物理選択、生物選択で大きく差はつかなかったのではないでしょうか。

 

今後の対策法としては、出題傾向、難易度自体に著変はないため頻出問題を中心に網羅的に穴を作らない勉強をしていけばよいでしょう。ただし今年の遺伝のようにぱっと見るとあまり見たことがないようで実は頻出問題とほぼ同じように考えれば良い問題も出題されます。ただ頻出問題を暗記するのではなく、解説書等もしっかりと読み込み、理解を深める必要があります。具体的な対策法については、別記事「岡山大学医学部の生物の傾向と対策」をご確認ください。

まとめ

2019年度岡山大学医学部入学試験について科目ごとにポイントをまとめると、

【数学】出題形式に変更なし、昨年度より易化、古い過去問にも目を通した方がよい

【物理】出題形式に変更なし、昨年度より易化、来年度の波動は光波または波の基本的性質

【化学】無機化学が見られなかった、昨年度より難化、引き続き網羅的な勉強が重要

【英語】長文読解の設問が全て英語となった、昨年度より難化、英語を読むスピードが肝要

となります。

 

 今年度の岡山大学医学部の入試は、以上を総合的に判断すると合格者平均は昨年度並みか少し高くなると予想されます。出題内容は大枠としては変わらなかったので、過去問を分析すれば傾向を把握しやすいはずです。これから医学部受験を志す現役生、今回思うような結果が出なかった浪人生で、もし岡山大学医学部を目指そうという方がいらっしゃれば、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。

 

 

本記事内で登場した過去のオススメ記事

「岡山大学医学部の数学の傾向と対策」


 

「岡山大学医学部の物理の傾向と対策」


 

「岡山大学医学部の化学の傾向と対策」


 

「岡山大学医学部の英語の傾向と対策」

 

「岡山大学医学部の生物の傾向と対策」

 

 

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