2020年度岡山大学医学部入学試験の講評と今後の対策法
2020年度の国公立医学部受験の日程が終了し、全体的なトレンドも見えてきました。その中で昨年度の「2019年度岡山大学医学部入学試験の講評と今後の対策」に引き続いて、今年度の各科目の講評とそれを踏まえた今後の対策法を紹介します。
数学の出題内容および難易度
まず2020年度の数学は、大問4つで構成され、それぞれ2、3個の小問に分かれていました。解答もすべて論述式で、分量・形式ともに例年通りでした。
出題内容は、大問1が確率と不定方程式、大問2が複素数の平面図形への応用、大問3が断面積を用いた立体の体積計算、大問4が双曲線と2点間の距離をテーマとするものでした。岡山大学医学部のこれまでの傾向からすると、大問3が珍しい内容といえます。
さらに詳しく各大問を分析していきましょう。大問1は今年度のセットの中では解きやすく、完答を目指したい問題です。ただし不定方程式を含む整数問題は頻出度が高いわけではないため、不定方程式の解き方の理解が不十分な場合は処理に手間取った可能性もあります。大問2は状況を図に描いて整理できれば、十分に高得点を狙えるものです。そして最も受験生を苦しませたと予想されるのが大問3です。断面積を用いた立体図形の体積計算は医学部受験では典型問題の一つですが、本問は断面そのものを把握するのが困難でした。大問4は2点間の距離の最小値を求めるもので、丁寧な場合分けができれば比較的解きやすかったはずです。全体としては作業量が多い問題が出題され、大問3もやや難しかったため、昨年度より難化しています。
今年度の数学で教訓的だったのが、いかに標準的な問題で点数を落とさないかが大事であるということです。大問3の難度からすると、大問1、2、4でどれだけ得点できたが勝負を分けたと考えられるからです。基本的に岡山大学医学部の数学は医学部受験としては標準的な難易度の問題が中心となるため、頻出単元を意識しながら典型問題の解法を身に付ける勉強が重要です。出題傾向等の情報は「岡山大学医学部の数学の傾向と対策」に詳しいので、そちらも併せてご覧ください。
物理の出題内容及び難易度
次に2020年度の物理は、大問4つが出題され、導出過程を求められる設問も見られました。真新しい形式は特になく、グラフの描図問題が久しぶりに復活しました。
各大問は大問1が斜方投射及び小球と壁との衝突、大問2がコンデンサー回路、大問3が単原子分子理想気体の熱サイクル、大問4がヤングの実験というセットでした。昨年度の予想通り波動は光波からの出題であり、原子を除く各単元から1題ずつというなじみのある形式であったため、対策をきちんとしていれば安心して取り組める内容といえます。
難易度は2019年度に易化しましたが、今年度も昨年度並みでした。そのため医学部受験生の多くが、高得点を取ることが予想されます。ただし大問3のグラフの描図問題と、大問4の導出過程を要する暗線の移動距離の計算は、他の設問に比べるとやや解きづらい問題でした。岡山大学医学部ではこの手の設問は頻出なので、事前によく練習できていたかどうかにより差がついたかもしれません。
勉強法としては、力学・電磁気・波動・熱力学のそれぞれについて、標準的な問題への対応力を強化することが最優先です。また波動に関しては音波と光波が交互に出題されているため、来年度は音波が出題される可能性が非常に高いです。したがって定常波や合成波の作成といった波の基本的性質を問う問題を補完的に勉強するのが効率的です。他にもグラフの描図、導出過程の記述力、そして今年度は出されませんでしたが論述問題も過去に出題歴があるため、これらの対策も問題集や過去問演習を通して行ってください。さらに細かな対策法については、「岡山大学医学部の物理の傾向と対策」をぜひ参考にしてください。
化学の出題内容及び難易度
続いて2020年度の化学です。化学は例年通り大問5つで構成され、大問1以外は中問によりテーマが複数にまたがることはありませんでした。ただし引き続き計算問題が占める割合は大きく、論述問題も出題されているため、時間的余裕はなかったはずです。
大問ごとの出題内容は、大問1が混合気体の蒸気圧、沸点、結晶格子の密度・充填率、大問2がアラニンの電離平衡、アミノ酸の性質、大問3がモール法、温泉の化学、大問4が芳香族化合物の構造決定、大問5が多糖類、タンパク質、天然ゴム、NBRとなっています。理論化学から2題、無機化学から1題、有機化学から2題と、バランスの取れたセットでした。結晶格子の密度・充填率の問題については頻出度が低く、練習が手薄だった医学部受験生も多かったかもしれません。大問4の構造決定や大問5で天然高分子化合物・合成高分子化合物のいずれの知識も問われる問題は、岡山大学医学部ではもはや定番となっています。昨年度と比較するとその場で思考を要する設問が減った分、やや易化しましたが、大問3でベンガラの化学式のような細かい知識が問われている点には注意しましょう。
化学の対策では特定の分野に偏ることなく、網羅的に標準問題を手早く解けるようになることが必須です。今年度の密度・充填率の問題のように計算力が重要視されているため、知識問題にはあまり時間はかけられないからです。併せて時間のかかる設問は飛ばして先に進むといった、時間配分のような実戦力も不可欠です。基礎が固まったら大学入試の過去問等を活用して、本番を意識したトレーニングを積みましょう。化学が得意で高得点を目指したいという方は、直前期に検定教科書で細かい知識を復習するのも効果があります。別記事「岡山大学医学部の化学の傾向と対策」でも勉強法をまとめているので、ご一読いただければ幸いです。
英語の出題内容及び難易度
最後に2020年度の英語についてです。英語は大問4つのうち、大問1、2が長文読解、大問3が和文英訳、大問4が自由英作文でした。長文読解の設問は2019年度には全て英語で指示があったのに対して、2020年度は半分程度が英語、残りが日本語で与えられました。
各大問を細かく見ていくと、大問1では目標達成の方法についての自然科学系の文章、大問2では20世紀以降の政治体制についての人文系の文章が出されています。大問3は現象の背景にある理論の大切さを述べた文章の和文英訳、大問4は起こっている環境問題と学生が日々できることについての自由英作文となっています。長文読解では記号問題と日本語による論述問題が出題されており、自由英作文は2年連続社会問題系のテーマでした。これまでの傾向を踏襲しており、取り組みやすい内容であったといえるでしょう。
難易度としては、長文は分量・内容の抽象度に著変はなく、設問の難易度も昨年度と同程度でした。和文英訳は設問が1つ増えていたものの、直訳的に英訳できる設問が多く、自由英作文もテーマが身近なもので、作文の行数の指示も昨年と同じでした。以上のことから、昨年度並み~やや易化といえます。
岡山大学医学部の英語は他学部と一律の問題であるため、長文や自由英作文のテーマに偏りは見られません。そのため多様な内容の長文を読んで、日本語で論述する力を養成することが肝要です。加えて近年、長文のワード数が増加しており、英文を読むスピードも大事になってきています。長文読解の問題では意識的に、英文をスピーディーに読むことを意識してみましょう。その他の分野の勉強法についても、「岡山大学医学部の英語の傾向と対策」の記事でお読みいただくことができます。
まとめ
2020年度岡山大学医学部入学試験について科目ごとにポイントをまとめると、
【数学】出題形式に変更なし、昨年度より難化、標準的な問題への対応力が大切
【物理】出題形式に変更なし、昨年度並み、光波・記述問題・論述問題の練習をしておく
【化学】出題形式に変更なし、昨年度よりやや易化、計算力・実践力を身に付けておく
【英語】出題形式に変更なし、昨年度並み~やや易化、英語を読むスピードを意識する
となります。
岡山大学医学部は傾向が非常にはっきりしており、過去問分析により対策内容を明確にすることができます。問題自体も難問は少ないため、努力した結果が得点に結びつきやすい試験ともいえます。来年度以降、本大学の受験を考えている方は、ぜひこの記事を読んでご自身の勉強のヒントにしてみてください!!
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