高知大学医学部の英語の傾向と対策
別記事「高知大学医学部の化学」等の記事でお伝えしているとおり、高知大学医学部の英語は平成29年度から課されるようになりました。過去問の情報が少ない中で、どのように対策をすればよいか悩んでいる医学部受験生も多いかもしれません。
本日はその高知大学医学部の英語について、これまでの問題の分析をするとともに、具体的な対策法を紹介します。
高知大学医学部の英語の試験形式・配点は?
はじめに高知大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
高知大学医学部の入試制度には前期一般入試(60名(地域枠5名))、AO入試(30名以内)、推薦入試(20名以内)の3つがあります(カッコ内は募集人数)。
本記事では最も受験者数の多い、前期一般入試について扱うこととします。
前期一般入試では他の国立医学部受験と同様に、センター試験と二次試験、及び面接試験の総合得点で合否が決まります。調査書については総合判定に加味するとされています。
各試験の科目ごとの配点は、
【センター試験】国語:200点 社会:100点 数学:100点×2 理科:100点×2 英語:200点
【二次試験】数学:300点 理科:150点×2 英語:300点 面接:100点
となっており、センター試験が900点、二次試験が1000点の合計1900点満点です。センター試験は特に得点の傾斜や圧縮はありません。センター試験と二次試験の得点はほぼ1:1であるため、どちらか一方で高得点を取るというよりは、いずれの試験でもバランスよく点数を取れる力が求められます。
ちなみに冒頭でお伝えしたように、医学部入試としては珍しく、平成28年度までは二次試験で英語が課されていませんでした。平成29年度以降新たに追加されているため、過去問の情報が少ない点に注意してください。
高知大学医学部の英語は、制限時間120分が与えられ、平成29年度には大問6つ、平成30年度には大問4つが出題されました。大問は長文読解または文法・語彙のいずれかに分かれます。
各年度の詳細な大問の構成を見ると、平成30年度は長文読解3つと日本語のやや短い文章の内容に関する質問に英語で答える大問が1つ出されたのに対して、平成29年度は長文読解3つと文法・語彙に関する大問が3つというセットでした。平成30年度に大問数は減少していますが、1つ1つにかかる時間を考えれば余裕ができたわけではありません。
長文読解では英文中の空所に当てはまる単語や句を答える設問や、選択肢の内容が文意と一致しているか判断する設問が頻出です。その他にも語句整序や同意文の選択問題等の出題も見られます。一方で下線部和訳や下線部の内容説明といった論述問題は、国立型の試験としては少なめです。また、設問の指示は基本的に日本語で与えられますが、平成30年度の日本語の文章を読んで内容について英作文をする大問では、設問が英語で書かれていました。
長文のテーマは自然科学系がやや多いですが、社会系・人文系の内容の長文も出題されています。文章の抽象度や使用されている英単語のレベルは、医学部受験としては標準的です。
文法・語彙に関する大問は今のところ、平成29年度のみの出題となっていますが、空所補充や語句整序といった幅広い出題形式が見られます。過去問を通して、どのような内容か確認しておきましょう。
全体的な難易度としては標準レベルですが、英文の読解力が重要視されている点に特徴があります。例えば、空所補充で代名詞を選択する設問では、誰が、誰に、といった文脈を適切に把握できていないと解答できない問題も見られます。文意に合っているかどうかを判断させる設問が頻出である点も、読解力が求められていることの表れといえるでしょう。高知大学医学部の受験を考えるのであれば、読解力の強化は欠かせません。
高知大学医学部の英語の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、高知大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、英語では何点を取ればよいか考えてみます。
英語が加わった後の高知大学医学部の一次試験の合格最低点は、
平成30年度:1443.7点 平成29年度:1387.4点
となっています。すなわち、1900点中1450点(約76%)あれば合格安全圏といえます。
ここでセンター試験では900点中780点(約87%)取ることができたと仮定すると、二次試験では1000点中670点が必要となります。
そこで、各科目の難易度も鑑みてそれぞれの目標点を設定すると、
英語:195点 数学:195点 理科:210点 面接:70点
とすればバランスが良いでしょう。
英語では300点中195点(65%)を取ればよいことになります。高得点が必要となるわけではありませんが、論述問題が少ない試験なので受験者間の得点差がつきやすくなります。油断せずに確実に目標点以上を取れるように準備しておきましょう。
また国立医学部受験では、センター試験と二次試験の点数配分も出願に際して欠かせない判断材料となりますが、高知大学医学部ではお伝えしたように二次試験と同じくらいセンター試験も重視されています。当たり前のことではありますが、センター試験でなるべく高い点数を取ることで、有利な状況で二次試験に臨むことができます。センター試験は比較的短期間で得点を伸ばすことが可能なので、二次試験の得点が伸び悩んでいる場合は、例えばセンター試験では9割の810点以上を取ることを目標として、先行逃げ切りを図るのも一つの選択肢です。
高知大学医学部の英語の出題傾向は?
それでは、高知大学医学部の英語では、どのような問題が出されるのでしょうか?
繰り返しになりますが、英語が試験科目として導入されてからのデータが少なく、今後どのような大問セットになるかは不透明です。ただおそらくは、英文の読解力を重視する問題構成は続くと予測されます。
以上を踏まえて、長文読解および文法・語彙に関する大問の設問を分析していきます。
【長文読解】
英語の入試問題全体に占める長文読解のウェイトは高く、読解力が身についていないと得点は伸びません。英文は長めのものがほとんどで、各年度とも3つ出題されています。英文を読むことに慣れていないと、負担に感じるかもしれません。設問で目を引くのが、選択肢の内容が文意と適合しているかを判断するものです。「本文の内容と一致している」、「本文の内容と一致していない」の二択はよく見られますが、高知大学医学部ではこれに加えて「本文からは判断できない」といった選択肢も必ず存在します。すなわち長文中に根拠となる表現があれば「一致している」、異なることが書かれていれば「一致していない」、根拠となる部分がなければ「本文からは判断できない」となるわけです。この「本文からは判断できない」という肢が厄介で、根拠が「ない」かどうか自信をもって解答するのはなかなか難しいものです。本当に根拠が「ない」か本文を何度も探さなくて済むように、内容正誤についての設問は必ず出るものと予測しながら英文を読み進めるようにしましょう。
さらに他の大学ではあまり見られない形式として、日本語の文章を読んで内容に関する英語の質問に英語で論述するという大問の出題歴もあります。日本語の文章自体は非常に簡単で、読解力というよりも英作文の能力を試す問題と考えられます。いかに文章中の表現を英語に訳して解答に活かせるかがカギとなるので、英作文で使える単語や表現も増やしておくことが大切です。
【文法・語彙】
平成29年度のみの出題ですが、3題出されており、それぞれ出題内容は異なっていました。そのうち2題は空所補充および語句整序で、入試問題としては見慣れた形式です。空所補充は主に単語力を問う内容でしたが、長文読解の空所補充では動詞の活用や前置詞の知識が求められる設問もあります。文法・語彙に関する大問でも空所補充のバリエーションが増える可能性は高いので、文法の参考書を使って練習を積んでください。
ユニークなのが与えられた英文中に足りない単語を、設問で用意された単語群の中から選択して挿入させる問題です。この大問では冠詞を挿入する設問もあり、細かい文法知識まで要求されています。冠詞は疎かになりがちな事項ですが、普段の勉強から注意して冠詞の使い方や特殊な表現等を押さえておきましょう。
お勧めの高知大学医学部の英語の対策方法
最後にこれまでの内容から、高知大学医学部の英語の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。
初めにセンター試験までは、英語の基礎力を固めることを目標に勉強してください。英語の基礎力とは、単語力、文法知識、読解力、記述力の4つです。特に高知大学医学部の英語は平成29年度に課されるようになったばかりで、この先どういった出題内容となるかはっきりとは予測できません。そのためどのような形式の問題が出されても対応できるように、この時期に基礎力を高めておくことが重要なのです。
単語力の養成には単語帳が最も効率的です。おススメの単語帳は『速読英単語 必修編』、『速読英熟語』(Z会出版)です。これらは例文を通して英単語・熟語を学べるだけではなく、派生語や類義語・対義語も併せて掲載されています。空所補充に直結する勉強なので、十分に時間を掛ける価値はあります。
長文読解の練習には、『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)を活用すると良いでしょう。高知大学医学部では読むべき英文の量が多いため、普段の勉強から長文を読むことに慣れておくことが肝要です。また、論述問題がある場合はしっかりと手を動かして解答を作ってください。高知大学医学部の英語では論述問題の重要度は低いですが、まったく出題されないわけではありません。この時期には他の分野と同じくらい、論述の練習にも取り組まなければなりません。
なお、より詳細な問題集の使い方については、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
センター試験終了後は、二次試験に向けた対策に移りましょう。具体的に行っていただきたいのが、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・単語や文法知識といった暗記事項の総復習
の3つです。
過去問は2年分しかありませんが、長文読解の英文量や設問の内容にはざっと目を通しましょう。頻出の出題形式や、高知大学医学部に独特な設問などが見えてくるはずです。
過去問分析が済んだら、実際に問題を解いてみましょう。このとき、必ず時間を計って本番と同じように取り組むことを忘れないでください。制限時間は120分あるため時間に追われる感覚はあまりありませんが、英文を読むスピードが遅いと問題を解くのに十分な時間を回せなくなります。問題の形式に慣れることに加えて、英語を読んだり解答したりするスピードは十分かも確認しましょう。
さらに高知大学医学部の過去問だけでなく、形式や難易度の似通った他大学の過去問も実戦演習に役立ちます。2年分だけではやはり演習としては不安が残るため、是非ともできる限り多くの大学入試問題に触れておくべきです。
同時並行で単語や文法知識といった暗記事項を、これまでに使ってきた単語帳や問題集を使って総復習しましょう。暗記事項は得点に直接結びつくため、最後に少しでも点数を伸ばすには知識を増やしていくしかありません。あらかじめよく間違える問題に印をつけておく等、直前期の勉強にスムーズに移れるように準備しておくことも大事です。
まとめ
高知大学医学部の英語の傾向と対策法のポイントは、
①平成29年度に新たに課されるようになった
②制限時間120分で、大問数は平成29年度が6つ、平成30年度が4つであった
③長文読解および文法・語彙に関する大問から構成される
④難易度としては標準的で、論述量は少なめだが、読解力が重視されている
⑤目標点は300点中195点(65%)
⑥出題傾向は、
【長文読解】英文が長い、内容正誤が重要、日本語の文章の内容に関する英作文をする大問の出題歴あり
【文法・語彙】空所補充、語句整序、単語挿入
⑦センター試験までは、英語の基礎力を固めることを目標に勉強する
⑧センター試験終了後にすべきことは、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・単語や文法知識といった暗記事項の総復習
の8つです。
繰り返しになりますが、高知大学医学部において英語が課されるようになって、まだ間もありません。とはいえこの2年の試験内容から、ある程度出題者の意図も読み取れる部分もあります。読解力は引き続き重視され、おそらくは論述量が一挙に増加するといったことはないでしょう。そうであれば確実な読解力と文法・語彙の知識があるかどうかが、合格できるかどうかを決めます。これらは時間を掛ければ身につく能力なので、たくさん英文に触れて他の医学部受験生に差を見せつけましょう!!
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「高知大学医学部の化学の傾向と対策」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
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また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
高知大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『速読英単語 必修編』
『速読英熟語』(Z会出版)
『やっておきたい英語長文700』(河合塾シリーズ)
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