広島大学医学部の数学の傾向と対策
先日、広島大学医学部の物理の記事でお伝えしたように、広島大学医学部の理科は基本的な問題が多く9割を目指すべき試験です。
対して数学は極端な難問や奇問の類の出題はありませんが、標準的かつ考えさせる問題が多く差が付きやすい試験内容です。
本日は、広島大学医学部の数学で他の受験生より一歩リードするために、傾向と具体的な対策法を紹介します。
広島大学医学部の数学の試験形式・配点は?
まず初めに、広島大学医学部の入試の概要を押さえておきましょう。広島大学医学部の入試は、他の医学部と違う大きな特徴があります。
広島大学医学部の配点は、センター試験900点満点、個別学力試験1800点満点の計2700点満点です。
ただし、個別学力試験に関しては、A配点・B配点の2種類があり、A配点により合格者の1/2を決定後、残りの1/2の合格者をB配点により決定します。
実はこの非常に独特な選抜方法に、広島大学医学部が求める受験生像が見て取ることができます。
それぞれの科目と具体的な配点を見てみると、センター試験は、
国語:100 社会:100 数学:200 理科:200 外国語:200
であり、A配点・B配点に共通です。
一方で、個別学力試験については、
【A配点】数学:300 理科:1200 英語:300
【B配点】数学:600 理科:600 英語:600
であり、大きく異なっています。
A配点を見るとお分かりいただけるように、全体における個別学力試験の理科の比重が圧倒的に大きくなっています。通常、他の国公立大学では、二次試験の理科の配点割合は33.3%ですが、広島大学は、倍の66.6%となっています。
すなわち、広島大学医学部としては、理科に秀でた人材を入学させたいというメッセージを、受験生に送っていると言えるのです。
もちろん、B配点での合格を狙ってバランスよく得点すれば合格することは可能ですが、理科重視の試験制度であることは間違いありません。
また、筆記試験に加えて面接試験も課されます。
こちらは段階評価であり、A(入学させてもよい)・B(入学させたくない)で評価が下されます。
そして、面接官全員がB判定を下すと、筆記試験の得点の出来不出来に関わらず不合格とされます。
それでは、広島大学医学部の数学の試験形式を見ていきましょう。
広島大学医学部の数学は大問5つに対して、制限時間は150分です。さらに各大問は2~5つの小問に分かれています。小問は大問を解き進めるうえで丁寧に誘導を与えるような構成になっており、その流れに乗れるかどうかが試験の出来を左右します。
解答はすべて記述式で、証明問題の出題も少なくはないため、全体としてしっかりと記述することを求められます。
特に特徴的なのが、数学Ⅲの積分の問題等の計算量の多い問題の比重が大きい点です。大問1つに対して掛けられる時間は30分で一見すると余裕がありそうですが、実際は試験時間ぎりぎりまで計算をしなければならないような問題内容です。
広島大学医学部の数学の合格に必要な得点率は?
次に過去の合格最低点や難易度をもとに、広島大学医学部に合格するには数学で何点を目指すべきか考えてみます。
合格最低点は、A配点・B配点それぞれ公表されており、年度別では、
【A配点】2017年度:2208 2016年度:2238 2015年度:2243 2014年度:2272
【B配点】2017年度:2060 2016年度:2130 2015年度:2190 2014年度:2233
となっています。
ここで、センター試験で765点(85%)取ったと仮定しましょう。(通常、医学部では、780点以上を取ることが望ましいですが、広島大学は二次試験の配点が高いので、逆転できるラインも考慮して85%で設定しています)
すると、この点数を取れたと仮定したとき、個別学力試験ではA配点では1500点以上、B配点では1450点以上取れれば、合格圏内となります。
A配点・B配点から考えて、2200点をとることを目標に考えたとき、個別学力試験(二次試験)において1435点、つまり79.7%の得点率が求められます。つまり、全科目で合わせて二次試験の得点が8割となるように目標を設定して対策を立てていきましょう。記述試験で8割というとハードルが高い印象を受けるかもしれませんが、どの科目についても十分到達可能です。
ただし、広島大学の試験制度が、理科重視であることを鑑みれば、数学:80%、英語:70%、理科:90%を目標とするのが、広島大学医学部合格には適しています。
上記点数を取れれば、A配点では1530点、B配点では1440点となり、いずれの配点でも合格最低点を超えることができるからです。
広島大学医学部の数学の問題の難易度や特徴は?
続いて、広島大学医学部の数学の問題の特徴についてみていきましょう。広島大学医学部の数学の難易度は、標準~やや難程度の難易度のものがほとんどです。
しかしながら問題の設定が複雑で、問われている数学的内容の本質の把握が困難なものも一部で見られます。すなわち標準的な典型問題の解法はマスターしたうえで、大学入試特有の融合問題や普段見かけないような切り口から数学の能力を問われた場合の対応力が求められているのです。
試験本番で80%を取るためには、典型問題をパターンに当てはめて解けるようになることはもとより、問題設定を読み取り「何が問われているか?」を理解することが不可欠です。問題の本質が分かれば、誘導に従って問題を解き進めることで目標を達成できるでしょう。
広島大学医学部の数学の頻出分野は?
続いて広島大学医学部の数学の頻出分野を、【超頻出単元】、【頻出単元】、【要対策単元】に分けてまとめます。
【超頻出単元】
①微分法・積分法(数学Ⅲ)
数学Ⅲの微分法・積分法に関する問題が必出です。関数を扱うものが頻繁に出されており、関数の交点の個数から曲線等で囲まれた部分の面積の求積や回転体の体積まで、テーマは多彩です。いずれの問題においても計算量が多くなるため、スピード・正確性ともに重要になります。特に不等式の証明ではある程度流れが決まっているため、数学Ⅲの微分法を活用する方法も併せて押さえておきましょう。
②確率
数学Ⅲの積分法と同様に毎年出題されています。その中でも確率漸化式が頻出です。確率漸化式は、確率の知識だけではなく数列の解法も身に付けておく必要があります。数列の一般項を求めた後に極限の計算をさせる問題が定番なので、事前によく練習しておきましょう。また、独立試行・反復試行の確立の求め方も頻出です。
【頻出単元】
①空間ベクトル
空間ベクトルを図形へ応用する問題がよく見られます。ベクトルを用いた平行条件や同一平面上に点が存在する条件といった、空間ベクトルの基礎的知識はすべて修得して本番に臨んでください。基本が押さえられていれば、さほど難易度の高い問題はありません。
②複素数平面
複素数平面は新課程の導入に伴って、旧課程の行列に変わって平成27年度以降出題されるようになりました。平成27年度以降の4年間で見ると、平成28年度と平成30年度の2回出題されています。これらは複素数の図形への応用と漸化式に絡めた問題でしたが、いずれもド・モアブルの定理に関するものです。出題されるようになってからまだ日が浅いため、ド・モアブルの定理のみならず幅広いパターンに対応できるように準備しておきましょう。
【要対策単元】
①整数
整数の問題は、あまり見慣れない切り口で数学の論証の力を問うものが多くなっています。ただし、その場のひらめきや特殊な発想を試されているというより、小問の誘導に従ってそれらを上手に生かせるかといった力を見られていると考えてください。とはいえ、一筋縄ではいかない問題が多いため、試験中に手が止まった場合は潔く他の問題に移るといった戦略も大事になります。
②漸化式
確率漸化式のように融合問題の中に含まれる場合も多いですが、漸化式単体で大問となることもあります。その場合、一般項を予測したうえで数学的帰納法により証明させる設問が頻出です。数学的帰納法の流れは論述のボリュームはありますが、流れ自体は一度押さえてしまえばバリエーションはあまりないので、出題されたときには必ず得点できるようにしましょう。なお確率漸化式と同様に、極限の求め方も練習も欠かせません。
お勧めの広島大学医学部の数学の対策方法
最後に以上の内容を踏まえた具体的な対策法を紹介します。
センター試験までは何よりもまず、穴を作らないように全範囲の標準的な問題を網羅的に勉強してください。単元によって頻出度に偏りはありますが、頻出単元以外は様々な範囲から出題されているからです。
具体的には標準レベルの問題集を使って、何度も典型問題の解法を頭に叩き込みましょう。広島大学医学部の数学部では一部でやや難しい大問もありますが、たいていは丁寧な小問による誘導がついており数学の基礎的理解を応用していけば対応できるものがほとんどです。
上記の目的の中で数学Ⅲの勉強に最適な問題集は、『医学部攻略の数Ⅲ』(河合出版)です。この問題集の極限・微分・積分は、広島大学医学部の二次試験対策に効果的です。ただし、中には広島大学では出題されないような難問も含まれているため、自身の数学の学習の進捗度合いに合わせて取り組んでください。
より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
注意すべきなのは問題集に取り組むと言っても、問題を目で見て解法が浮かんだらそれでよしとするのではなく、きちんと紙面に解答を書くということです。すでにお伝えしたとおり、広島大学の数学は150分間計算や記述をし続けるような試験内容です。長時間のテストに耐えうる「体力」や計算スピードは一朝一夕で身につくものではないので、証明問題や計算量が膨大になる数学Ⅲの問題を中心に、早い時期から訓練を重ねておきましょう。
センター試験終了後は、さらに二次試験を意識した勉強に移ります。
この時期に行うべき対策法は、
・広島大学医学部の数学の過去問分析
・頻出分野を中心に問題集で練習
・広島大学の赤本で力試し
の3つです。
本記事でも頻出単元はまとめていますが、それ以外の単元からはどのような問題が出されているか、自身の目でも確かめてください。そして、問題の傾向を掴んだうえで残り1カ月をどのように過ごすかの作戦を練らなければなりません。
赤本の分析をしてみると、頻出分野や出題可能性が高い中でも自身の苦手な単元といった、要対策分野が洗い出せるはずです。要対策分野を優先的にある程度範囲を絞って、問題集で最後の総復習をしましょう。
加えて広島大学医学部の数学は、本質的には標準的内容を問うているだけであっても、設定を複雑にしてうまくカモフラージュしているような問題もよく見られます。このような実戦的な問題への対応力も一緒に磨くと効率的です。
『入試問題集』(数研出版)は実際の大学入試の問題が収載されており、単元ごとにまとめられているため、二次試験直前期の練習には使いやすい問題集です。
同時に広島大学の赤本を用いて、過去問にチャレンジしましょう。このとき、制限時間をきちんと図って問題に取り組み、時間配分や自分の計算スピードを確かめてください。
まとめ
広島大学医学部の数学の傾向と対策法のポイントは、
①大問5つに対して制限時間は150分
②小問が2~4つ程度与えられ解答はすべて記述式
③難易度は標準的であるが、計算量の多い問題・証明問題・設定が複雑な問題も見られる
④目標点は8割
⑤【超頻出単元】微分法・積分法(数学Ⅲ)、確率
【頻出単元】空間ベクトル、複素数平面
【要対策単元】整数、漸化式
⑥センター試験までは、手を動かして標準的な問題集に繰り返し取り組む
⑦センター試験後は、
・広島大学医学部の数学の過去問分析
・頻出分野を中心に問題集で練習
・広島大学の赤本で力試し
をする
の7点が重要なポイントです。
広島大学の数学は理科に比べると、パターンに当てはめて解ける問題は少ないですが、設問を読み解くことができれば本質は基本的なものがほとんどです。
まずは数学の基礎力をしっかりと身に付け、直前期には大学入試への実践的な対応力を付けていくイメージで勉強を進めましょう。
作業的に解き進めるのではなく、しっかりと考えさせるような良問ぞろいのため、受験者間で差が付きやすい試験問題とも言えます。もしここで高得点が取れれば非常に有利になるため、1点でも高い点数が取れるように最後まで粘り続けてください!!
本記事内で登場した過去のオススメ記事
「広島大学医学部の物理の傾向と対策」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
広島大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策
こちらのページで過去問を無料で閲覧できます
また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
広島大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『医学部攻略の数Ⅲ』(河合出版)
『入試問題集』(数研出版)
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