山口大学医学部の化学の傾向と対策

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先日の「山口大学医学部の物理の傾向と対策」の記事において、物理では高得点帯の勝負になることをお伝えしました。同様のことは化学についても言えます。

 本日はその山口大学医学部の化学について、出題傾向と高得点を取るための具体的な対策法について紹介します。

山口大学医学部の化学の試験形式・配点は?

はじめに山口大学医学部の入試制度について見ていきましょう。

 

 山口大学医学部の入試制度には前期一般入試(60名)、後期一般入試(10名)、推薦入試(37名)の3つが存在します(カッコ内は2018年度の募集人数)。本記事では最も受験者数の多い、前期一般入試について取り上げることとします。

 

 前期一般入試では、センター試験と大学ごとに実施される二次試験の2つが課され、その合計得点で合否が決まります。国公立医学部はほとんどが同様の選抜方法を採っていますが、配点についてはばらつきがあります。

 

 詳細に各試験の科目ごとの配点を見てみると、

【センター試験】国語:200点 社会:100点 数学:100点×2 理科:100点×2 英語:200点

【二次試験】数学:200点 理科:100点×2 英語:200点

となっており、センター試験が900点、二次試験が600点の合計1500点満点となります。募集要項によると、二次試験では面接試験も行われますが点数化されず、総合審査の資料とするとのことです。大学によってこの配点が異なるのは上述のとおりですが、山口大学医学部は医学部受験としてはセンター試験の全体に占める比率は大きいといえます。したがって、センター試験で高得点を取り、先行逃げ切りを図るのが基本的な作戦となります。

 

 ちなみにセンター試験では理科2科目を受験しますが、化学は必須となっており、残り1科目を物理・生物のうちから選ぶ形式となっています。また、二次試験では理科は1科目で200点満点だったものが、平成30年度入試からは2科目で200点満点に変更されました。こちらは化学が必須ではなく、物理・化学・生物の3科目から2つを選ぶようになります。

 

 この中で、二次試験の理科は2科目に対して制限時間150分が与えられます。つまり1科目にかけられる時間はおよそ75分です。

 

 化学に関しては大問5つで構成され、知識を問われる問題や計算問題といったように、多様な切り口から受験生の化学の力を計ります。計算問題では途中経過も記述するものもよく出されるので、普段の勉強から簡潔に答案をまとめることを意識してください。また、年度によっては化学現象の起こる理由等を答える論述問題も見られるので、二次試験の直前期には過不足なく文章が書けるように練習をしましょう。

 

 難易度は基本~標準レベルの設問がほとんどですが、大問1つあたり約15分しか掛けられないことを考慮すると、決して時間的余裕があるとは言えません。一つの問題に手間取ると解くべき問題に取り組むことができず、他の医学部受験生に差を付けられることになりかねません。山口大学医学部を志望するのであれば、化学については基礎的な典型問題を素早く処理していくことを念頭に置いたうえで、もし時間がかかりそうな問題に行き当たったら後回しにするといった工夫も必要です。

山口大学医学部の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?

続いて、山口大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、化学では何点を取ればよいか考えてみます。

 

山口大学医学部の合格最低点は、1500点満点中、

平成30年度: 1206.0点 平成29年度: 1235.4点 平成28年度: 1171.2点

となっています。すなわち、1240点(約83%)あれば合格安全圏といえます。

 

 ここでセンター試験において900点中780点(約87%)取ることができたと仮定すると、二次試験では600点中460点(約77%)が必要となります。

 

これを踏まえて、各科目の難易度も考慮したうえでそれぞれ目標点を立てると、

数学:150点 理科:160点 英語:150点

とするのが良いでしょう。

 

 理科は2科目で160点なので、選択した科目間に得意不得意の差がなければ80点(8割)ずつを目指しましょう。化学はセンター試験で必須の科目なので、二次試験でも選択する医学部受験生は多いはずです。つまりケアレスミスで失点すると、それだけ大きく順位が下がりやすいということです。スピードを上げることも肝要ですが、正確性も欠かせない要素であることは忘れないでください。

山口大学医学部の化学の出題傾向は?

それでは、山口大学医学部の化学では、どのような問題が出されるのでしょうか?

 大問ごとに特徴があるので、以下でまとめていきます。

 

【大問1、2、3】

 大問1~3では主に理論化学、無機化学あるいはその融合問題が出題されます。計算問題の比重がやや高いですが、論述問題や知識を問う問題もあり出題形式は様々です。特に大問1では選択問題を通して分野横断的な内容になっていたり、小問集合のような形で典型的な計算問題が並んだりすることもあります。

 分野ごとに見てみると、理論化学では電離や気体を扱う問題、無機化学では元素やその化合物の性質が頻出です。電離については平衡となるときの各物質の濃度計算をはじめとして、平衡定数を用いた弱酸の塩のpH計算の出題歴もあります。気体を扱う問題では、ヘンリーの法則やボイル・シャルルの法則といった諸法則を正確にかつ反射的に使えるようになっておきましょう。

 注意しなければならないのが、まれに見慣れない内容を扱う問題が出される点です。例えば、平成29年度には混合物の相平衡図が与えられ共焦点に関する考察をする問題が出されました。こうした問題は誘導が必要となりどうしても問題文が長くなります。もし解答スピードに不安がある場合は、一度別の大問に移ってから残った時間で取り組むといった工夫をすることも考えてください。

 

【大問4】

 大問4ではベンゼンやアルキンといった有機化合物の誘導体や、特定の分子式を持つ有機化合物の構造を問うものが必出です。誘導体については、付加反応や置換反応といった基本的概念を押さえたうえで、構造まで書けるように練習しておきましょう。また、ベンゼンの誘導体は医学部受験では重要項目であり、複数の合成経路を有する物質もあるので、一度フローチャート形式にしてまとめる等、流れを大切にして覚えてください。特定の分子式の異性体の構造決定では、各物質の持つ化学的性質やその検出方法に関する知識が不可欠です。裏を返せば、きちんと暗記できていれば得点源となる単元なので、手を抜かずに対策をしましょう。

 

【大問5】

 大問5では例年、高分子化合物に関する問題が出されています。合成高分子よりも天然高分子の方が出題頻度は高く、糖やアミノ酸の重要度が高いといえます。知識はもちろんのこと、セルロースをアセチル化するのに必要な無水酢酸の量の算出といった計算問題も見られるので、問題集を通して練習しておいてください。合成高分子についても、PETや66ナイロンといった有名化合物は出題歴があるので、基本的な合成法やその性質については確実に理解しておきましょう。

お勧めの山口大学医学部の化学の対策方法

最後にこれまでの内容から、山口大学医学部の化学の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。

 

 まずセンター試験までの期間は、化学の全分野の典型問題に反射的に対応できるように訓練しましょう。医学部受験では難問が解けるようにならなければいけないと思われがちですが、そうではない大学も多数存在します。お伝えしたように山口大学医学部の化学では、短時間でてきぱきと処理できることが求められていることを改めて強調したいと思います。

 

 上記の勉強法におススメの問題集は、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。単元ごとに典型問題がまとめられているので、解法パターンがすべて身につくまで繰り返し取り組みましょう。

 なお本書の特徴は、「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいので、是非参考にしてください。

他にも問題集の効率的な使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、ご一読いただければ幸いです。

 

 センター試験終了後は、二次試験対策に移ります。具体的に行っていただきたいのが、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集を用いた苦手分野の克服

の3つです。

 

 過去問の分析は残り約1カ月の勉強を決める大切な作業です。ないがしろにせず、過去5年分程度で良いので、どのような出題形式か、頻出のテーマはあるか、といった観点から過去問にざっと目を通しましょう。

 

 分析が終わったら今度は実際に過去問を解いてみましょう。このとき忘れて時間を計って取り組むことです。繰り返しになりますが、山口大学医学部の化学では時間との戦いになりやすく、時間内にできるだけすべての問題を解くスピードだけではなく、ケアレスミスをしない正確性も必要です。漫然と時間を意識せずに過去問を解いてもこうした能力は養われないので、本番に臨むつもりで取り組んでください。

 

 同時に問題集を使って、これまでの勉強で克服できなかった苦手分野の重点的対策を進めてください。できることであれば全分野の総復習をしたいところですが、化学は暗記量が膨大で入試本番で扱われるテーマも幅広くなります。そのため効率的に勉強するには、単元ごとに優先順位をつけて復習していくことを勧めます。過去問分析の結果と自身の得意不得意を照らし合わせ、費用対効果が最も高いと思われる単元から手を付けていきましょう。

まとめ

山口大学医学部の化学の傾向と対策法のポイントは、

①理科2科目に対して、制限時間150分が与えられる

②大問5つで構成され、設問には多様な出題形式が見られる

③計算問題は導出過程を求められるものもあり、年度によっては論述問題も出される

④難易度は基本~標準レベルの問題が中心であるが、時間的余裕はない

⑤目標点は100点中80点

⑥頻出テーマは、

【大問1、2、3】理論化学、無機化学(電離、気体、元素やその化合物の性質)

【大問4】有機化学(有機化合物の誘導体、異性体の構造決定)

【大問5】有機化学(高分子化合物)

⑦センター試験までは、全分野の典型問題に反射的に対応できるように訓練する

⑧センター試験終了後にすべきことは、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集を用いた苦手分野の克服

の8つです。

 

 化学は勉強したての頃は覚える事項が膨大で、計算問題も多いため辟易してしまいそうになります。しかしながら勉強が進んでくるとある単元で勉強したことが他の単元の内容とがつながり、やがて体系的に化学の世界を理解できるようになっていきます。勉強量と得点が比例しやすい科目なので、すぐに諦めずに粘り強く取り組んでみましょう!!

 

 

本記事内で登場した過去のオススメ記事

「山口大学医学部の物理の傾向と対策」


 

「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」

 

「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」


 

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本記事で登場したお勧めの問題集・参考書

『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)


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