金沢医科大学医学部の一般入試の化学の傾向と対策
先日、「金沢医科大学の物理」についての記事で、差がつきやすい問題内容であるとお伝えしましたが、同大学の化学はきちんと対策している受験生であれば物理よりも得点を伸ばしやすくなっています。
本日はその金沢医科大学医学部の化学について、傾向と具体的な対策法を紹介します。
金沢医科大学医学部の化学の試験形式・配点は?
はじめに金沢医科大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
金沢医科大学大学医学部の入試制度には、前期一般入学試験(65名)、後期一般入学試験(10名)、特別推薦入学試験(AO入試)(27名)、指定校・指定地域推薦入学試験(5名)、の4つが存在します(カッコ内は募集人数)。
本記事では最も受験者数の多い、前期一般入学試験について扱うこととします。
前期一般入学試験では一次試験と二次試験の2段階制で合格者が選抜されます。一次試験では学科試験により、定員の8倍程度にまで人数が絞られ、二次試験では一次試験合格者を対象に小論文およびグループ面接を課し、調査書等を総合的に勘案したうえで最終的な合格者が決まります。
詳細な各科目の配点は、
【一次試験】英語:100点 数学:100点 理科:100点×2
【二次試験】小論文:60点 グループ面接:点数化なし
となっており、一次試験は400点満点の中で競われます。グループ面接は点数化されませんが、「重視」すると募集要項に明記されている点には注意しましょう。
また金沢の本校だけではなく、東京、大阪、名古屋、福岡といった各地方の主要都市でも入学試験の会場が設けられています。様々な都道府県の大学に併願をするのが当たり前の私立医学部受験生にとっては、非常にありがたい配慮がなされています。
一方で、受験することへのハードルが下がるため志望者数は増え、3000人を超える状況となっています。よほどの理由がない限り、金沢医科大学専願で臨むのは避けた方が無難でしょう。
さて、金沢医科大学医学部の理科は、物理が必須で残り1科目を化学あるいは生物から選択するようになっています。医学部受験においては、物理、化学、生物の3科目から2科目を選ぶ大学が多いため、この点で他の医学部と一線を画しているといえます。制限時間は理科2科目に対して120分が与えられるため、1科目にはおよそ60分かけられることになります。
このうち化学は出題形式が特徴的で、一問一答形式の単発の設問と2、3個程度の小問に分かれた設問の合計で10~15題により構成されています。物理が一つのテーマを小問の誘導に従って深く考察していくのに対して、化学では網羅的にどのような分野であっても反射的に対応していかなければなりません。
解答はすべてマークシートで行い、設問中に設けられた空欄に当てはまる数値を一桁ずつマークするようなセンター試験の数学のようなものと、適切な選択肢を選ぶものとがあります。ただし一桁ずつ解答する場合、例えば空欄が3つあっても正答が3桁とは限らず、頭に0をマークするといったこともあるため注意が必要です。
難易度は標準的なものが中心ですが、難問も紛れています。また、一問一答形式においても計算問題が多いため、意外と時間が足りなくなることが予想されます。扱うテーマが多様で設問により状況設定が目まぐるしく変わっていくため、パターン問題の練習を通して問題を読んだら反射的に解法が頭に浮かぶようにしておかなければなりません。
金沢医科大学医学部の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、金沢医科大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、化学では何点を取ればよいか考えてみます。
金沢医科大学医学部の一次試験の合格最低点は、
平成30年度:271点 平成29年度:273点 平成28年度:268点
となっています。すなわち、400点中280点(70%)あれば合格圏といえます。
各科目の難易度からすると、
英語:65点 数学:75点 理科:140点
を目標とするのがオーソドックスな戦略となります。
理科は2科目で140点(7割)となればよいので、物理と化学の間に得手不得手の大きな差がなければ、いずれも100点中70点を目指してください。
化学は物理と比較すると知識がそのまま得点に直結する問題が多いため、医学部受験の中では解きやすい部類に当てはまります。とはいえ、そもそも暗記しなければならない量が膨大であるため、対策が不十分だと手ごわい相手となります。
金沢医科大学医学部の化学の出題傾向は?
それでは、金沢医科大学医学部の化学では、どのような問題が出されるのでしょうか?
理論化学、無機化学、有機化学のそれぞれについて、出題傾向を見ていきましょう。
【理論化学】
原子や分子の特徴についての設問が冒頭で出されますが、原子の最外殻電子やイオン化した際の電子数といったように、電子に注目するものが頻出です。原子や分子の性質は結合の種類や構造により引き起こされますが、ミクロな視点から考えると電子が影響している場合が多いです。これらの特徴をただ丸暗記するのではなく、「なぜそうなるのか?」を大事にしながら教科書や参考書で知識を付けていってください。
他にも酸化還元反応についての理解も重要です。酸化還元反応では代表的な酸化剤・還元剤の半反応式や、酸化数の求め方は必ず押さえておきましょう。そしてこの分野に関連して、電気分解を扱う設問が近年よく見られます。電気分解では使用する電極と電解槽の溶液によって、各電極で起こる化学反応が変わります。個別に覚えるのではなく、原則を押さえたうえで設問の状況に当てはめていってください。併せてファラデーの法則と化学反応式の量的関係を結び付けることができるようになれば、電気分解のパターン問題への対策は十分でしょう。
【無機化学】
知識そのものが問われることは少ないですが、沈殿を作る金属イオンと陰イオンのペアについては確実に暗記しておきましょう。これまでに沈殿滴定や化学物質の分類といった設問の出題歴があり、沈殿の知識があることを前提に問いが作られていました。併せて錯イオンを形成する物質のペアやその色や構造などの特徴も押さえておくと効率的です。
また、気体の製法と性質に関する知識も重要です。様々な気体の製法を網羅的に覚えることも大事ですが、各気体がどのような性質を持っているかについても、検定教科書に載っている内容は全て身に付けておかなければなりません。気体発生の化学反応式とそれぞれの性質をセットで覚えていってください。
【有機化学】
金沢医科大学医学部の化学は、医学部受験生専用の問題ということもあり、アミノ酸・タンパク質や糖といった天然高分子についての設問が頻出です。一方で合成高分子の出題はほとんど見られません。天然高分子をテーマとする計算問題のバリエーションはさほど多くないため、重点的に対策をしておき得点源としたいところです。ただし、過去には手薄になりがちなペプチドの構造決定の問題が出され、難易度も高めでした。問題集を通して練習をしておきましょう。
さらに元素分析を用いて分子式を決定する問題もかなりの頻度で見られます。元素分析自体は一度やり方が分かれば、分子式を特定することまではすぐにできるようになります。難しいのはその後、化学反応の結果などからその有機化合物がどのような官能基を持つかを判断することです。元素分析の流れも押さえつつ、確実に有機化合物の構造決定に必要な知識も増やしていってください。
お勧めの金沢医科大学医学部の化学の対策方法
最後にこれまでの内容から、金沢医科大学医学部の化学の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。
例年、一次試験の日程は1月末です。試験日から逆算して勉強スケジュールを立ててください。化学の基礎を固める11月中旬までと、個別試験に向けた実践力を養う直前期に分けてメリハリをつけて勉強を進めましょう。
まず11月中旬までは、化学の問題を解く上で欠かせない知識の暗記と、典型問題であればどのような問題でも対応できるようになることを目標として勉強してください。特に金沢医科大学医学部の化学では一問一答形式の問題も多く、制限時間内にすべて解ききるには典型問題をパターンとして認識し、即座に解法が頭に浮かぶかどうかがカギです。
パターンを意識した勉強におススメなのが、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。本書を分からない問題がなくなるまで繰り返し取り組むことで、各単元でどのようなパターンがあるかを知ることができます。
重要問題集の特徴は、「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいので、是非参考にしてください。
他にも問題集の効率的な使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、ご一読いただければ幸いです。
化学の基礎が固まった11月中旬以降は、金沢医科大学医学部の化学の試験形式に慣れ、実戦的な問題にも対応できるようになることを目的として勉強してください。この時期に具体的に行っていただきたいのが、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による苦手分野の強化
の3つです。
試験形式については、ここ数年大きな変化はないため、すぐに把握できるはずです。本記事も参考にしながら、どの単元からの出題が多いかを分析することに重きを置いて確認してみてください。
過去問分析が済んだら、いよいよ実際に過去問にチャレンジしてみましょう。このとき必ず時間を計って、本番通りの設定で臨むことが肝要です。金沢医科大学医学部の化学で求められるスピード感を身に付けられるのは、過去問演習以外にはありません。また、可能であればマークシートを準備して、解答形式にも慣れておくとなお良いでしょう。
同時並行で、これまでの勉強で克服できなかった苦手分野や、過去問分析で洗い出された重要分野を優先的に、これまで用いてきた問題集を解き直して復習しましょう。もちろん暗記物で不安のあるテーマを見直すことも必要です。直前期に慌てなくて済むように、暗記事項に関してはノート等にまとめておいたり、授業で配られたプリントを整理してすぐ見直せる状況にしておいたりしてください。
まとめ
金沢医科大学医学部の化学の傾向と対策法のポイントは、
①理科は物理は必須で、残り1科目を化学、生物から選択する
②制限時間は理科2科目に対して120分
③一問一答形式の設問と2、3個程度の小問に分かれた設問の合計10~15題で構成される
④解答は全てマークシートで行い、一桁ずつマークするもの、選択肢を選ぶものがある
⑤問題をパターン分けして、反射的に解法が頭に浮かぶようにならなければならない
⑥目標点は100点中70点
⑦頻出テーマは、
【理論化学】原子や分子の特徴と電子との関係、酸化還元反応、電気分解
【無機化学】沈殿、錯イオン、気体の製法と性質
【有機化学】天然高分子、元素分析、構造決定
⑧11月中旬までは、化学の基礎を固めることを目標として勉強する
⑨11月中旬以降に行うべきことは、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集による苦手分野の強化
の9つです。
金沢医科大学医学部の化学は設問が多く、一度の受験で様々なテーマの問題と向き合わなければなりません。苦手な分野があると得点が伸びづらいため、まずは網羅的にパターン問題への対応力を養成することが先決です。千里の道も一歩から。焦らず地道に合格への道を歩んでいきましょう!!
本記事内で登場した過去のオススメ記事
「金沢医科大学医学部の一般入試の物理の傾向と対策」
「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
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また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
金沢医科大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)
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