大分大学医学部の物理の傾向と対策
先日、「大分大学医学部の数学の傾向と対策」の記事において、大分大学医学部の数学は易化傾向にあり近年は標準的な難易度に落ち着いているとお伝えしました。それと比べると同大学の物理は、解きづらい問題が多く残念ながら高得点を取ることは難しい試験です。本日はその大分大学医学部の物理について、過去問の傾向と合格点に達するために必要となる具体的な対策法を紹介します。
大分大学医学部の物理の試験形式・配点は?
はじめに大分大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
大分大学医学部の入試制度には、前期一般入試(65名)、AO入試(一般枠:22名、地域枠:13名)の2つが存在します。他学部では後期一般入試も行われていますが、医学部では平成22年度以降廃止されています。
本記事では最も受験者数の多い、前期一般入試を取り上げることとします。
前期一般入試の合格者はセンター試験と二次試験の合計点で選抜される、一般的な国公立の医学部受験で定番の制度が採用されています。各試験の詳細な配点は、
【センター】国語:100点 社会:50点 数学:50点×2 理科:50点×2 英語:100点
【二次試験】数学:100点 理科:100点×2 英語:100点 面接:200点
となっており、センター試験450点満点、二次試験600点満点と二次試験の割合が高いのが特徴です。
ちなみに大分大学医学部ではここ数年続けて二段階選抜が実施されており、平成31年度には志願者286名中90名が、平成30年度には同じく342名中147名が第一段階選抜で不合格となっています。かなりの数の不合格者が第一段階選抜で出ているため、受験年度の傾向をセンターリサーチ等でしっかりチェックしてから出願するようにしましょう。
他にも目を引くのが面接点の高さです。面接が重要視されていることは明らかで、面接の評価が著しく低い場合には総合得点に関わらず不合格とするとされているので、こちらの練習も疎かにしてはいけません。
そのうち理科に関しては物理、化学、生物の3科目から2科目を選ぶことになります。そして2科目に対して制限時間120分が与えられるため、1科目当たりに割けるのはおおよそ60分です。
物理は例年大問3つで構成され、それぞれ8つ前後の小問に分かれています。特徴的なのが、ほぼすべての問題で解答に至る説明を論述しなければならない点です。国公立の医学部受験では解答のみを論述する形式、あるいは一部の設問でのみ導出過程を論述することを求められる形式がほとんどであることを考えると、佐賀大学医学部を受験する場合は解答作成の練習も欠かせないことを覚えておいてください。
また平成30年度以降の大問の説明では、「解答欄には単位を付けて解答しなさい」と明記されるようになっている点も見逃してはなりません。それ以前の年度では単位が付いていない場合に減点はあったかどうか定かではありませんが、平成30年度以降は間違いなく単位のつけ忘れは減点対象となっているはずです。
加えて物理量の単位は普段あまり意識することが少ないため、改めて問われると困ることもあるかもしれません。こうした時に役立つのが物理量を算出する際に用いる数式から単位を導く手法です。物理量の単位も覚えて本番に臨むのが理想的ですが、少なくとも国際単位系は押さえたうえで、その場で単位を導出できるようにしておきましょう。
難易度は大問の設問の序盤は標準的ですが、後半に進むにしたがって解きづらい問題が増えていきます。医学部専用の問題ということもあり、時間内にすべて解ききるのは困難と言わざるを得ません。大問の途中であっても時間がかかりそうな問題が出てきたら無理に最後まで解こうとするのではなく、潔く次の大問に進むといったように全体として目標点を超えることを常に心がけるようにしてください。
大分大学医学部の物理の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、大分大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、物理では何点を取ればよいか考えてみます。
大分大学医学部の合格最低点は、センター試験と二次試験の計1050点満点中、
平成30年度:709.90点 平成29年度:768.10点 平成28年度:721.90点 平成27年度:708.90点
となっています。これらの平均を取ると727.2点となるため、通常の難易度の年度であれば730点(約70%)あれば合格することができます。
ここでセンター試験で450点中390点(約87%)取れたと仮定すると、二次試験で600点中340点(約57%)得点できれば合格点に達します。これを踏まえて各科目の難易度も考慮して、二次試験の各科目の目標点を設定すると、
数学:60点 理科:120点 英語:60点 面接:100点
とするのが良いでしょう。
大分大学医学部は得点開示をしても総合点が分かるだけで、各科目が何点であったかは明らかにはなりません。こういった事情の下、面接の平均点は100点前後と予測する情報もインターネット上では見受けられます(確定情報ではありません)。しかしながら面接の得点を5割の100点としても、残りの教科で6割ずつ取れれば合格点を超えることができるため上記のような目標設定にしていることをご承知おきください。
理科では2科目で200点中120点(6割)を目指すことになりますが、お伝えしているように物理の難易度は低くはありません。したがって基本的に60点ずつ取れるように準備しておくべきですが、もし解いていて難しいと感じるようであれば物理で55点、もう1つの科目で65点を取るように目標を変更するのも良いでしょう。
大分大学医学部の物理の出題傾向は?
それでは、大分大学医学部の物理では、どのような問題が出されるのでしょうか?
そもそも物理の単元は、力学、電磁気、波動、熱力学、原子の5つに分かれます。そして大分大学医学部では、大問1、2が力学、電磁気から、大問3が波動、熱力学、原子のいずれか1つから出題されます。このことを前提として、以下でまとめていく各単元の頻出テーマを参考にしてください。
【力学】
力学は毎年大問1で出題される重要単元で、物体の運動を分析するものを中心に、力のモーメントのつり合いや万有引力といったように、幅広いテーマから問題が出される可能性があります。絶対にマスターしておかなければならないのが、力学的エネルギー保存則や運動量保存則です。実験の種類によって何の保存則が成り立つかを即座に判断し、適切な式を立てられるように訓練しておきましょう。
医学部受験では力学といえば得点源というイメージをお持ちの方もいるかもしれませんが、大分大学医学部の物理では平成27年度の大問1のように見慣れない状況設定の問題も出されています。図を効果的に描けるように練習をして対応力を強化することはもちろんですが、それでも時間がかかりそうなときにはこだわり過ぎずに次の問いに進むという選択肢も頭に入れておいてください。
【電磁気】
大問2で必出の電磁気については、電磁誘導や荷電粒子の運動といったような電流と磁場の関係について、あるいはコンデンサーについて扱うものが頻出です。これらの問題ではクーロンの法則の比例定数や透磁率、誘電率といった定数がたくさん出てきますが、こういった定数そのものに関する知識を問う設問が出されている点に注意しなければなりません。平成30年度には真空の透磁率の値を答えさせたり、普段ほとんど見かけない磁気力に関するクーロンの法則を用いたりする問題の出題歴もあります。ガウスの法則からクーロンの法則を導く流れを理解し、クーロンの法則の比例定数と透磁率、誘電率の関係に結びつけられるようにしておきましょう。
【波動・熱力学・原子】
大問3の出題単元を見てみると、ここ5年間で波動、原子から2回ずつ、熱力学からは1回出されています。明確な周期性もないため、どの単元から問題が出されても対応できるようにしておかなければなりません。国公立医学部では原子関連の設問が出題されない大学も存在しますが、大分大学医学部では重要単元の一角を占めます。医学部受験生に限らず勉強が手薄になっている受験生が多い単元ですが、本大学を受験するのであれば他の単元に見劣りしない程度に演習を積んでおくべきでしょう。加えて大問3では物理の知識を用いて、臨床現場で使われる機械の仕組みを説明したり、症状がおこる機序を考察させたりする、医学部ならではの問題も見られます。平成29年度の眼球の光学についての設問ではかなりハイレベルな論述が要求されましたが、臨床を行うにあたって受験勉強が医師になった後も活かすことができることをうかがい知ることができます。
お勧めの大分大学医学部の物理の対策方法
最後にこれまでの内容から、大分大学医学部の物理の対策に必要な具体的な勉強法をお伝えします。
まずセンター試験までの時期については、物理の全単元における典型問題の解法を身に付けることを目標として勉強してください。既にお伝えしているように、大問1では力学、大問2では電磁気、大問3では波動、熱力学、原子のいずれかが出されることに鑑みれば、どの単元も疎かにすることはできません。どの単元から出題されるか予想することも難しいため、この時期に苦手をできる限りなくしておくことがファーストステップとなります。
この時期の勉強におススメの問題集は、『良問の風』(河合塾シリーズ)です。問題の出典は大学入試がベースとなっており、かつ各単元の典型問題が網羅的に掲載されています。問題を目にしたら解法がすぐに頭に浮かぶようになるまで、何度も繰り返し取り組んで内容を完璧に頭に叩き込みましょう。
またもし教科書レベルの内容が勉強し終わっているにも関わらず、典型問題に歯が立たないときには、物理の知識と問題を解くことがうまくリンクしていない可能性があります。そうした場合に役立つ問題集が『物理のエッセンス』(河合塾シリーズ)です。模範解答には図もふんだんに使われているため、最初のうちはそれを真似してみることからスタートしてみましょう。
なおこれらの問題集の特徴は別記事「「良問の風」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」、「「物理のエッセンス」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいのでご参照ください。
さらに、より詳細な問題集の使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、是非参考にしてください。
センター試験終了後は、二次試験に向けた勉強に切り替えてください。具体的に行っていただきたいのが、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集を用いた苦手分野の克服
の3つです。
過去問分析は残り約1カ月間の勉強内容を決めるうえで、大事な判断材料となります。どのような単元から出題が多いか、難易度はどの程度かといったことと、自分自身の勉強の完成度と照らし合わせてみましょう。
過去問分析が終わったら実際に問題を解いてみてください。ここで忘れないで徹底していただきたいのが、時間を計って取り組むことです。大分大学医学部の物理は前問導出過程を論述する必要があり、大問の後半の設問は難易度が高いものばかりです。やみくもに頭からすべての問題を解こうとすると、ほぼ間違いなく時間が足りなくなってしまうので、どのように時間配分をすれば目標とする点数に到達できるか考えながら解き進めましょう。
同時並行でこれまでの勉強でどうしても解決できなかった苦手分野の克服にも努めてください。新しい問題集を買いなおす必要はないので、使ってきた問題集の中で過去問分析の結果をもとに単元ごとに優先順位をつけ、再度復習していきましょう。
まとめ
大分大学医学部の物理の傾向と対策法のポイントは、
①理科2科目に対して制限時間は120分
②物理は大問3つで構成され、ほぼすべての設問で導出過程を求められる
③平成30年度以降は解答に単位を付けるように明記されているので要注意
④大問後半の設問の難易度は高く、全てを時間内に解ききるのは困難
⑤目標点は基本的に60点とするが、難しいと感じたら55点でも良い
⑥出題傾向は、
【力学】大問1で必出、力学的エネルギー保存則、運動量保存則
【電磁気】大問2で必出、電流と磁場およびコンデンサーに関連する定数
【波動・熱力学・原子】大問3でいずれか1つが出る、臨床と結び付けられる場合がある
⑦センター試験までは、物理の全単元の典型問題の解法を身に付けることを目標とする
⑧センター試験終了後は、
・過去問の分析
・過去問を用いた実戦演習
・問題集を用いた苦手分野の克服
を行う
の8つです。
大分大学医学部の物理は、解答に至る過程の論述が求められたり、臨床現場と物理の知識を結び付けさせたりと、国公立医学部中でも異色の存在です。難易度に関しても難しい問題も見られるため、相応の対策をしておかなければ目標点にはなかなか届かないはずです。といっても一足跳びに実戦的な力は付かないものです。千里の道も一歩からの精神で、基本の理解を確実に積み重ねていきましょう!!
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「「良問の風」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」
「「物理のエッセンス」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」
「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」
大分大学の過去問題やその他の教科の傾向と対策
こちらのページで過去問を無料で閲覧できます
また、その他の教科の傾向と対策についても見ることができますので、
ご参考にしてください。
大分大学の過去問ページ
本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『良問の風』(河合塾シリーズ)
『物理のエッセンス』(河合塾シリーズ)
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