帝京大学医学部の一般入試の化学の傾向と対策

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先日、「帝京大学医学部の物理」の記事において、帝京大学医学部の物理ではある程度出題単元に偏りがあるとお伝えしました。一方で、化学では毎年かなり幅広い範囲からの出題が見られます。

 本日はその帝京大学医学部の化学について、傾向とそれを踏まえた具体的な対策法を紹介します。

特殊な帝京大学医学部の試験制度

はじめに帝京大学医学部の入試制度について見ていきましょう。

 

 帝京大学医学部の入試制度には、一般入試(100名)、推薦入試(10名)、センター試験利用入試(10名)の3つが存在します(カッコ内は募集人数)。

 本記事では最も受験者数の多い、一般入試について扱うこととします。

 

 一般入試では一次選考と二次選考により合格者が選抜され、一次選考では学科試験と書類審査をもとに、学科試験を重視して総合的に合否を判定します。その後、一次選考合格者に限り、課題作文の試験と面接を行い、最終的な合格者が決まります。点数化されるのは一次選考の学科試験のみです。

 

 学科試験では英語は必須で、残りは数学、物理、化学、生物、国語の5科目から2科目を選択し、計3科目を受験することになります。各科目とも配点は100点ずつで、300点満点の中で得点を競います。国語が選択科目に含まれるのは、他の医学部ではあまり見られない特徴の一つです。

 

 さらに帝京大学医学部で目を引くのは、多様な入試制度の見られる私立医学部受験の中でも、特に変わった受験方法ができる点です。どういうことかというと、試験日が3日間設けられており、そのうちいずれかの日程あるいは複数の日程で受験ができるのです。2日または3日受験した場合、「試験日ごとの学科試験3科目の合計点が最も高い日」が自身の得点として採用されます。

帝京大学医学部の志望度が高い場合は、是非とも3日間とも受験をするのが良いでしょう。試験会場の雰囲気や問題形式慣れることができることに加え、どうしても各試験日の問題間で難易度の差ができることも避けられません。実際に日程により、合格者数にばらつきがあるという情報も散見されます。

 

ただし覚悟しなければならないのが、上記のような理由から帝京大学医学部は医学部受験生に非常に人気のある大学で、受験者数も莫大であることです。定員100名に対して志望者数は8000人を超え、倍率も50倍近くなるだけでなく、合格最低点も高騰します。

 様々なリスクが予想されるので、帝京大学医学部にどうしても入学しなければならない場合を除いて、いくつかの医学部も併願して受験する方が無難でしょう。

帝京大学医学部の化学の試験形式・配点は?

その中で化学は選択科目の一つであり、他の選択科目との2科目で120分の制限時間が与えられます。つまり、化学にかけられる時間はおよそ60分です。

 

 平成28年度までは大問が5つ出され、4題選択して解答する形式でしたが、平成29年度以降は大問4つで構成されすべて必答になりました。一つの大問で一つの単元を扱うことが多いものの、物理とは異なり小問集合として様々な知識を要する問題が並んでいる場合もあります。

 

 出題形式は正答肢を選択する択一式か、記述式のいずれかです。計算問題の比重も低くなく、その際は導出過程が問われることがないため、計算ミスをすると点数が全くもらえないことになります。有効数字の考え方も含めて、計算力を高めること常に意識しながら勉強しましょう。なお、論述問題や描図問題の出題歴はありません。

 

 難易度としては標準レベルが中心ですが、年度によっては検定教科書に掲載されていないようなテーマが出題されることもあり、問題文に従って化学的知識を応用しながら解き進めていかなければなりません。問題数も決して少なくはないため、制限時間との兼ね合いからすると、高得点を目指すにはそれなりの力がなければなりません。

 

 加えて帝京大学医学部の化学の特徴として、冒頭でもお伝えしましたが、非常に幅広い知識が必要となることが挙げられます。これは小問集合があることや、選択肢の内容が分野横断的であることが原因です。とはいえ、この手の問題は化学的知識がそのまま得点に結びつくことが多いのも事実です。検定教科書等も活用しながら、着実に化学的知識を身に付けられているかどうかが勝負を分けます。

帝京大学医学部の化学の問題の難易度と合格に必要な得点率は?

続いて、帝京大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、化学では何点を取ればよいか考えてみます。

 

帝京大学医学部の合格最低点は、

平成30年度:217点 平成29年度:213点 平成28年度:223点 平成27年度:233点

となっています。すなわち、300点中240点(80%)あれば合格安全圏といえます。

 

 ここで、医学部受験生としては典型的なパターンである、数学と理科1科目を選択したと仮定すると、各科目の目標点は、

英語:75点 数学:80~85点 理科80~85点

とするのがオーソドックスな戦略となるでしょう。

 

 目標点に範囲があるのは、英語以外の選択科目の合計で165点に到達できればよいという意味です。選択科目はどの受験生も自分にとって得意な科目を使い、また3日間受験という試験制度も相まって、おのずと要求される得点は高くなります。

 もちろん上記以外の科目で受験するのも構いませんが、いずれにせよ自身の武器となる科目を少なくとも1つは作っておくことが肝要です。

 

 本記事では化学で80~85点を取ることを前提に、対策を練ることとします。

帝京大学医学部の化学の出題傾向は?

それでは、帝京大学医学部の化学では、どのような問題が出されるのでしょうか?

 以下では、理論化学、無機化学、有機化学に分けて、それぞれの単元で頻出のテーマをまとめていきます。

 

【理論化学】

 最も出題頻度が高いのが、酸化還元に関する問題です。計算問題としては酸化還元滴定が定番ですが、それだけでなく反応式を書かせたり物質中の元素の酸化数が問われたりすることもあります。重要な酸化剤・還元剤については、自身で半反応式を書けるように準備しておき、そこから酸化還元の反応式を導出できるように練習しておきましょう。

 他にも他大学と比較して帝京大学医学部に特異的な点が、緩衝溶液およびpHを扱う問題が多いことです。緩衝溶液の問題においてもpH計算は避けては通れませんが、通常の中和反応等のpH計算と併せてパターンを分けて押さえてください。過去にはアミノ酸の緩衝作用について問われたこともあるので、過去問で確認しておきましょう。

 

【無機化学】

 絶対に欠かすことのできない知識が、沈殿と錯イオンを生成する化学物質のペアです。溶液中に含まれる元素の推定やモール法のような滴定実験においてベースとなるうえ、知識そのものを選択肢で問われることもあります。錯イオンについては、ペアや色だけでなく化学式まで暗記が必要です。

 そして周期表をテーマとして、元素や化合物の性質について答える問題もよく見られます。場合によっては理論化学との融合問題として、周期表と電子親和力・イオン化エネルギーとの関係といった、化学的性質を考察するものも見られます。ヴィジュアル的に周期表の特徴を押さえ、そこから各元素や化合物の知識を覚えていくと効率が良いでしょう。

 

【有機化学】

 毎年のようにベンゼンの誘導体に関する問題が出されています。年度により、大問を通してベンゼンの誘導体を扱う場合と、選択肢の一部として知識が問われる場合とがありますが、いずれにしても対策が欠かせないテーマです。ベンゼンから様々な芳香族化合物が合成されますが、その流れをフローチャートでまとめ、ひとつひとつの化学反応式を結びつけて覚えていきましょう。

 また医学部受験生専用の問題ということもあり、タンパク質やアミノ酸、糖といった天然高分子も頻出テーマです。天然高分子の問題は、各物質の検出法などの化学的知識は量がありますが、計算問題のパターンはさほど多くはありません。アミノ酸の等電点やセルロースのアセチル化に要する酢酸量といった計算は繰り返し練習し、天然高分子が出されたら得点源とできるようにしてください。

お勧めの帝京大学医学部の化学の対策方法

最後に以上を踏まえた、帝京大学医学部の化学の具体的な対策法をお伝えします。

 

 例年、個別試験の日程は1月末です。試験日から逆算して勉強スケジュールを立ててください。化学の基礎を網羅的に勉強する11月中旬までと、それ以降に実践力を養う直前期に分けると、対策の進め方にメリハリがつくでしょう。

 

 はじめに強調しておきたいのが、頻出テーマをまとめたものの、帝京大学医学部の化学の択一問題では、かなり幅広い知識が要求されるということです。そもそも知識単発で正答が選べる設問も多々あるため、暗記事項を確実に覚えることが肝要です。計算問題でも様々な単元から出題されているので、どの単元も穴を作らないように勉強しなければならないのはいうまでもありません。そこで11月中旬までの基礎固め、標準レベルの問題集を用いて、化学の全範囲の基礎やパターン問題の解法を身に付けましょう。

 

この時期の勉強におススメの問題集が、『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)です。本書を分からない問題がなくなるまで、繰り返し取り組んでください。

 重要問題集の特徴は、「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいので、是非参考にしてください。

他にも問題集の効率的な使い方についても、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」で紹介しているので、ご一読いただければ幸いです。

 

 基礎固めが終わった11月中旬以降は、個別試験に向けた対策をスタートします。

 具体的に行っていただきたいのが、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集による苦手分野の強化

の3つです。

 

 帝京大学医学部の化学は出題範囲が多岐にわたり、分野横断的な大問もたくさんあります。過去問を分析しようにも重要な単元の抽出には手間がかかりますが、本記事や赤本等と照らし合わせながら特徴を掴んでいってください。あとは化学的知識の重要性を感じ取っていただければ十分です。

 

 過去問分析が済んだら、今度は実際に挑戦してみましょう。問題演習は化学的知識に抜けている部分はないかチェックする良い機会です。暗記事項が抜けているテーマについては、検定教科書等も上手に活用して一つずつ解決していきましょう。

また、問題に取り組む際は、必ず時間を計ることも欠かさないでください。本番の時間配分の練習やスピード感を養うチャンスは、過去問演習しかありません。できる限り多くの過去問に触れ、実戦的なトレーニングを重ねましょう。

 

 これらと並行して、問題集を用いた苦手分野の強化にも努めてください。過去問分析によって、重要単元が洗い出されるので、優先順位を明確にして問組みましょう。

このとき、暗記事項に不安があって確認しようにも、どこを見返せばよいか分からない状況に陥ると時間がもったいないので、勉強を進めながら気体の製法と性質や酸化還元反応の半反応式といった具合に、早い時期にテーマごとにノートなどにまとめておくことをお勧めします。

まとめ

帝京大学医学部の化学の傾向と対策法のポイントは、

①化学は選択科目の一つで、制限時間は2科目に対して120分

②大問4つで構成され、すべて必答

③出題形式は、択一式か記述式で、いずれも結果のみを解答に記入する

④標準レベルの問題が中心であるが、制限時間と問題数を考えると易しくはない

⑤幅広い化学的知識が要求される

⑥目標は100点中80~85点

⑦頻出テーマは、

【理論化学】酸化還元、緩衝溶液、pH

【無機化学】沈殿、錯イオン、周期表と元素の性質

【有機化学】ベンゼンの誘導体、天然高分子

⑧11月中旬までに、化学の全範囲の基礎やパターン問題の解法を身に付ける

⑨11月中旬以降に行うべきことは、

・過去問の分析

・過去問を用いた実戦演習

・問題集による苦手分野の強化

の9つです。

 

 帝京大学医学部の化学では分野横断的な知識が組み合わさった問題が多く、最初は気が引けるかもしれません。しかし裏を返せば、暗記さえできていれば点数を取れる問題が多いともいえます。地道な作業が続きますが、それが合格へとつながることを心に留めてゴールへと突き進んでください!!

 

 

本記事内で登場した過去のオススメ記事

「帝京大学医学部の物理の傾向と対策」


 

「「化学重要問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」


 

「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」


 

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本記事で登場したお勧めの問題集・参考書

『化学重要問題集―化学基礎・化学』(数研出版)


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