名古屋市立大学医学部の生物の傾向と対策
先日、「名古屋市立大学医学部の物理」の記事において、名古屋市立大学医学部の物理は難易度としては基本~標準問題がほとんどを占めるが、時間との戦いになるとお伝えしました。では生物も同じかというとそうではありません。正解を求めるのには論述力、考察力、医学的な知識が必要であり、医学部受験生であっても一筋縄ではいかない難問が並んでいます。
本日はその名古屋市立大学医学部の生物について、傾向と具体的な対策法を紹介します。
名古屋市立大学医学部の生物の試験形式・配点は?
はじめに名古屋市立大学医学部の入試制度について見ていきましょう。
名古屋市立大学医学部の入学試験には、一般入試(70名)、推薦入試(20名)、地域推薦(7名)の3つの精度が存在します(カッコ内は2019年度の募集人数)。本記事では最も受験者数の多い、一般入試について取り上げることにします。
一般入試は国立の医学部受験と同様、センター試験と二次試験の得点の合計で合否が判定されます。詳細に各試験の科目ごとの配点を見てみると、
【センター試験】国語:100点 数学:62.5点×2 英語:100点 社会:50点 理科:62.5点×2
【二次試験】数学:150点 英語:150 理科:100点×2 面接:200点
となっており、センター試験が500点、二次試験が700点の合計1200点満点です。センター試験では数学・理科といった理系科目の得点比率が相対的に高く社会の得点比率が大きく圧縮されており、二次試験でも理科の配点の科目全体に占める割合が高くなっていること、そして面接も得点化されていることは注目ポイントです。
またここ数年、名古屋市立大学医学部では入試制度の変更が続いており、平成30年度からは2段階選抜が実施されるようになりました。この制度下では、第2段階選抜の二次試験の受験資格が得られるのは、第1段階選抜のセンター試験で500点中375点以上を取った受験生のみです。他にも名古屋市立大学ではこれまで初日に数学と英語、2日目に理科と面接試験を行っていましたが、平成31年度からは初日に学科試験すべてを済ませ、2日目に面接試験のみとする国公立の医学部受験ではなじみのある日程となります。
この中で理科は物理・化学・生物のうち2科目を選択して受験します。制限時間は理科2科目に対して150分与えられるので、1科目当たりおよそ75分使えることになります。
生物に関しては大問4つで構成され、4~8個の小問に分かれます。解答は記号、語句、論述の形式ですが、名古屋市立大学の特徴は論述問題の問題数、文字数が多いことです。例えば2018年度では50文字の論述が4問、60文字の論述が1問、70文字の論述が1問、75文字の論述が1問、100文字の論述が5問出題されています。これだけの論述問題に加えて考察問題があることを考えると75分で仕上げるのは難しいでしょう。
名古屋市立大学医学部の生物の問題の難易度と合格に必要な得点率は?
続いて、名古屋市立大学医学部の過去の合格最低点のデータや他の科目の難易度をもとに、生物では何点を取ればよいか考えてみます。
名古屋市立大学医学部の合格最低点は、1200点満点中、
平成30年度: 946.30点 平成29年度: 953.28点 平成28年度: 983.33点
平成27年度: 979.83点 平成26年度: 966.10点 平成25年度: 933.28点
となっています。すなわち、990点(82.5%)あれば合格圏といえます。
ここでセンター試験において500点中430点(86%)取ることができたと仮定すると、二次試験では700点中560点(80%)が必要となります。
以上のことから、各科目の難易度も考慮したうえでそれぞれ目標点を立てると、
数学:115点 英語:115点 理科:170点 面接:160点
とするのが良いでしょう。
理科は2科目で200点満点中170点(85%)を超えなければなりませんが、選択した2科目間に得意不得意の大きな差がなければ、いずれも85点ずつ取ることを目指しましょう。ただ生物に関しては下で述べるように高得点を取るのは難しく85点を取るのはよほど生物が得意な人でないと現実的ではないでしょう。一方で物理は基本~標準問題が多く生物より得点を取りやすいため、名古屋市立大学医学部は生物選択者にとって不利な大学と言えそうです。
難易度としては標準~やや難の問題で構成されています。語句問題や論述問題の半分で問われていることは基本的な内容が多いですが、残りの半分は初見考察問題についての論述問題です。名古屋市立大学の考察問題のテーマは医学的なものが多く、例えば2018年度では大問4で癌に対する分子標的薬について、2017年度では免疫チェックポイント阻害薬についての考察問題でした。大学受験の問題としてはあまり見ないテーマなので、問題を解くための情報はすべて問題文中に書いてあるとはいえ、解答をまとめるのに時間がかかることが想定されます。
名古屋市立大学医学部の生物の頻出分野は?
それでは、名古屋市立大学医学部の生物では、どのような問題が出されるのでしょうか?
以下では生物の出題傾向を【頻出単元】、【あまり出題されていない単元】に分けてまとめていきます。
【頻出単元】
名古屋市立大学医学部の生物では、おそらく医学部教授が主に問題作問にあたっていると思われ、医学に関することが多く出題されます。そのため生物の体内環境からの出題が多い傾向です。また刺激と反応、分子生物など人体に関係する単元から多く出題されています。まずは植物よりも動物に関する単元から勉強を固めるのが良いと思われます。
【あまり出題されない単元】
代謝、発生の分野からの出題はここ3年で見ると出題されていません。しかしどちらも医学を学ぶ上で大変重要な単元ですので今後は出題されることが大いに考えられます。植物に関しての出題は多くありません。医学部の先生たちは植物に関しては専門ではないのでもし出題されるとしては典型問題で出題されるのではと思われます。進化と系統、生態に関しても出題はあまりされておりませんが、ハーディワインベルグの法則のみに限れば出題されているため抑えておく必要があります。
お勧めの名古屋市立大学医学部の生物の対策方法
最後に上記内容を踏まえた具体的な対策法を紹介します。上で述べたように名古屋市立大学医学部の問題は大学受験で典型的な問題も多く出題される一方で大学受験では典型的でない医学に関する問題も出題されます。そのため対策が難しいといえます。ただ医学に関する問題といっても高校までの知識で解けるように作られています。まずは高校生物の知識をしっかりとそしてさらに考察力をつければ初見の問題といっても十分に解くことが可能です。
お勧めの参考書は『大森徹の最強講義117講 生物』(文英堂)です。こちらは多くの医学部受験生も使っている参考書であり、基本的なことから難しい内容までわかりやすく解説してくれています。名古屋市立大学対策を考えると、この本に書かれていることのうち動物に関する内容は一通り理解しておいたほうが良いと思われます。『大森徹の最強講義117講』の特徴は、「「大森徹の最強講義」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいので、是非参考にしてください。
お勧めの問題集は、標準的な典型問題が多く掲載されている『生物の良問問題集』(旺文社)と難問が掲載されている『生物標準問題精講』(旺文社)です。典型問題に対しては生物の良問問題集などの標準レベルの問題集をやり対策を進めていきましょう。また初見の考察問題の対策として標準問題精講に取り組みましょう。名古屋市立大学の問題は難しく知識を暗記しただけでは考察問題の対応はできません。考察力をつけるためには標準問題精講に取り組みましょう。『良問問題集』、『標準問題精講』の特徴は、「「生物の良問問題集」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」、「「生物標準問題精講」の医シュラン!医学部受験で勝つ問題集の使い方」に詳しいので、是非参考にしてください。
より詳細な問題集の使い方は、過去記事「実力をつけるための問題集のトリセツ!効果的な11個の使い方」を参考にしてください。
夏ごろまでには参考書と標準レベルの問題集を少なくとも1週し、基本的な知識と典型問題を解く力をつけましょう。その後は医学に関するテーマにも対応できるように難問問題集に手をつけ動物に関することについては大森徹の最強講義に記載されている内容を完璧に理解できるように繰り返し繰り返し読み込み、わからないところがあれば予備校の講師、学校の生物の先生などまわりにいる詳しい人に聞くなど理解に努めましょう。センター対策を本格化する11月中旬までに1通りは終わらせ考察力も伸ばしていきましょう。この間も参考書や標準問題も見直し、基本的な知識が抜けないようにしてください。
そしてセンター試験以降は個別試験を意識した対策に移り、過去問を使った問題の分析、演習を行います。そこで見つかった自分の弱点は随時補強し、本番を迎えましょう。おそらくセンター対策で考察力が落ちていると思いますので、すでに解いた考察問題を見直し考察力を取り戻しましょう。
まとめ
名古屋市立大学医学部の生物の傾向と対策法のポイントは、
- 大問4つで選択問題なし。
制限時間は選択2科目で150分であり、生物はおおよそ75分。 - 問題の解答形式は、記号問題、語句問題、論述問題である。論述問題がとても多く、考察問題も多い。
- 目標点は100点中85点。
- 人体、動物に関する分野からの出題が多い。
- 夏までに典型問題対策を一通り終わらせ、その後難問を掲載している問題集、人体、動物に関するより詳しい知識の理解と定着をセンター対策が本格化する11月中旬ころまでに進める。
- センター試験以降は過去問を使って問題の分析、演習を行い、自分の弱点を認識し、補強していく。
の6点です。しっかり対策を行い医学部合格を勝ち取りましょう。
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本記事で登場したお勧めの問題集・参考書
『大森徹の最強講義117講 生物』(文英堂)
『生物良問問題集』(旺文社)
『生物標準問題精講』(旺文社)
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